100話 第4次ジア大陸戦争勃発
「ふ~、最近は忙しいですわね」
リアは今日もマリジアにいた。
リアムの最近やっていた仕事は、どこかを専門として行ういわゆるスペシャリストではなく、すべての分野に精通するジェネラリストというポジションである。
リアは金融部門をほぼ部下に任せることができていたので、ラムザに行っていたのである。
マリジアに戻ってこれば、リアが金融にいる必要はないので、広い範囲で物事を見ていることができる。
ラムザでシニジアを見ている彼女は、マリジア全土を見渡すことは難しくなかった。
「リアム様がいなくなって大変でしたけど、リア様はさすがです」
今日はフィージアの復興の手伝いをしていた。
マリジア、シニジアの2つを立て直した実績はリアムにも劣らない。
計算が強いので、予算の限られる国の管理は彼女はとてつもなくうまいのである。
ここ最近は、フィージアに在沖し続けていた。
「リ、リアちゃん! 大変だよ!」
そんなとある日、リアの元にミアが走ってきた。
「ど、どうされましたの? わざわざミアがここに来るなんて?」
リアは驚いていた。
情報の伝達をミア自身がやる必要などまったくない。
リアが離れていたので、ミアはマリジアに絶対にいなければならないからである。
「今ラムザから報告があったの! ラムザにシニジアが攻め込んでいって、それで、クレアちゃんとハーパーちゃんが捕まったって……」
「ま、間違いありませんの?」
普段冷静なリアが困惑を隠せない表情をしていた。
「まだ、詳しい情報はわからないけど、ラムザは間違いなくシニジアに取られちゃったらしいの。リアムがいないから、私かリアちゃんが判断を決めなくちゃいけないから、相談のために来たんだ。今兵士のほとんどをイーサンに任せて完全に防衛してるから、早く決めないと」
リアの困惑はとても計り知れない。
リアは1度シニジアに裏切られて、奴隷の身分に落ちるところまでひどい目にあっている。
それでも、シニジアのためにもう1度力を貸そうと、今回の復興に手を貸していた。
だが、今回の再びの裏切り。
リアの残された大事な妹2人の拘束という、彼女自身が捕まること以上につらいことをされてしまった。
それを慰めるリアムは今はいない。彼女はこの問題を自分だけで考えなければならない。
「1回、会議をトラジア、フィージア交えて行いましょう」
リアはとりあえず急がなかった。
情報がない以上は、彼女は周りとの相談を優先することにした。
「なんと! リア殿の恩をお忘れになったのか!」
「しかも、幼い妹を拘束するなど! 卑劣にもほどがある!」
「シニジアはもう存在意義などない! 攻め落としてしまえ!」
トラジア、フィージア、マリジアの幹部格が全員話を聞いて怒っていた。
いずれもリアムやリアに非常に恩恵を受けていて、とても彼らに感謝していた。
それだけに、彼らに迷惑をかけるどころか、裏切りを行ったことを許せるはずもなかった。
「シニジアに攻め入りましょう!」
「フィージアのように、マリジアの管理下においてしまえばいいのです」
「待ってくださいまし! 今攻め入ったら、クレアやハーパーはどうなりますの?」
リアの発言に皆が黙った。
今回まだ2人の死亡の情報は流れていない。
おそらくは人質にして、何らかの条件を押し付けてくると考えられた。
「リア様、もし厳しい条件を求められたらどうされます? 2人を助けますか? それとも、国のために犠牲になってもらいますか?」
1人がリアに厳しい意見を問いかける。
「……、条件次第ですわ。たとえば、私が2人の代わりにシニジアに行けというのであれば、逆らいませんわ」
「なるほど、でしたら、基本的には攻め込む形でいいですね。シニジアがどう出るかはわかりませんが、できることならリア様を悲しませるようなことはしません」
「私も、ほかの国も、マリジアを支援して全力で戦います。がんばりましょう」
シニジアの対応はわからなかったが、もう戦争が起こることがないと思われたジア大陸において、シニジアと他国の間に第4次ジア大陸戦争が起こることとなった。