猫人の女の子と「情報強者」
くだらない辞世の俳句をつぶやいたその時、俺にまたがっていたバルーンが「バン!!」とはじけた。
女の子!?
女の子がバルーンに剣を突き刺して、バルーンを割ったようだ。
返す刀でもう1匹のバルーンを倒す。
ひらりとはためくスカートが可愛らしい……残念、見えなかった。
逃げ出そうとした最後の1匹のバルーンに向かって、左手を突き出し叫ぶ。
「ーー氷矢魔法アイス・ボウーー」
左手を中心に魔方陣が現れ、氷の塊がバルーンに向かって矢のように飛び出していった。
氷の塊がバルーンを貫き、バルーンは動かなくなった。
すげー、魔法だ魔法。
「どうやら生きとるようじゃの」
メガネをかけた爺さんが話しかけてきた。
ハゲで、いかにもスケベそうだが、かけているメガネのせいで知的に見えなくもない。
「まさかバルーンにやられる人間がいるなんて……」
先ほどの女の子が戻ってきてつぶやく。
腰に両手を当てて、さも呆れたように俺をみている。
そんな蔑む様な目でみないで……
女の子は10代後半に見える。
体つきはスレンダー、黒髪ロングのストレート。
かなり可愛い。ミニのフレアスカートと、膝上くらいまでのニーソックスが似合っている。やったぜ、この世界にもニーソがあるみたいだ。
長い黒髪のせいか、大人しくしていれば、学級委員長が似合う優等生タイプに見えなくもない。
しかし先ほどの様子から、性格は外見に反し、かなり活発そうだが……
ん?
おや、耳が……ネコ耳だ。ファンタジー世界にいる猫人というやつか?
素晴らしい、付け物じゃない本物の猫耳だ。
思わず猫耳を触ってナデナデしてしまう。
「ハニャ!じっ、女性の耳をいきなり触るなんて!!何するんですか!!」
猫人の女の子が剣を抜いて俺の首に当てる、おっかない。
だが猫耳だけはピクピクと動いている。
顔も真っ赤にして、恥じらってるように見える。
なかなか可愛い娘だ。
「まあまあ猫人がめずらしかったのじゃろう」
じいさんがフォローしてくれる。
ナイスだ、スケベそうなじいさん。
「お前さん、この辺の者じゃなさそうじゃが、旅のものかね?」
「えーと、はい。遠くの世界から来ました。カナタといいます。先ほどは助けていただいてありがとうございます」
「そうかそうか、とにかく一人じゃ危険じゃろうて……町まで送ってやろう。ワシは研究者をしているロジーという。こっちはメイドで助手のニーアじゃ。見てのとおり猫人族じゃが、剣も魔法の腕前もかなりのものじゃ」
猫耳だけじゃなくてメイドだったのか……ますますポイント高いぜニーア。
爺さんとニーアに近く町まで案内してもらった。
【ファーの町】(スキル、「情報強者」を発動)
セコン地方にある小さな町
特産 コブリンの肉の塩漬け
ファーの町という小さな町についた。周りは簡単な土塁と柵で囲まれていている。
「ここが異世界の町か」
中世風の田舎町だ。小さな町だが、それなりにお店はそろっていて、活気がある。
ニーアは道具屋で先ほどのバルーンを売りに行った。
「バルーンの皮は1つあたり5ルーグ、8つで40ルーグで買い取らせてもらおう」
先ほどのバルーンの皮はゴムみたいな素材なので、買い取ってもらえるらしい。
この町の特産品だとか
1ルーグがいくらか不明だが、小さな果物が2~3個で1ルーグくらいなので、それほど高価とは思えない。
おそらく1ルーグ=100円くらいのようだ
スキル「情報強者」を発動する
【バルーンの皮】
ゴムの様な材質で、生活用品を作る材料として使われる。
現在、ファーの町では材料が不足しているため、買取の相場は1つ7ルーグ。
うん?1つ7ルーグだったら、8つで56ルーグでは?
40ルーグは、現在の買取の相場より安い。
さしでがましいかと思ったが、店主に7ルーグが今の買取相場では?と聞いてみた。
「いや~失礼いたしました。では1つ7ルーグ、お詫びに8つで60ルーグで買い取らせてもらいます」
店主は屈託のない笑顔であっさり認めて、60ルーグをニーアに渡した。
おまけまでしてくれたのは、悪評がたつのを恐れたからだろう。
「ほう……お前さん、このあたりのことは詳しくないと思っていたんじゃが、この町のバルーンの時価を知っているとは何故じゃ?」
「えーと、なんと言うんですかね、鑑定スキル?みたいなのを持っているんです」
「ふむ、変わったスキルじゃのう」
ロジー爺さんとニーアは驚いた顔をしていたが、お礼とばかりに差額の20ルーグのうち、10ルーグをくれた。気前の良い人たちだ。
「命を助けてくださった上に、町まで送ってくださりありがとうございます」
「気をつけてな」
「バルーンなんかに負けちゃダメですよ。子供でも勝てるんですから」
読んでいただいてありがとうございます。
自分は情弱もいいところですけど、皆さんはどうでしょうか?
ルーグの貨幣単位は便宜上100円くらいに設定しています。