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ノルンの3姉妹神

 スクルド神達の神殿は町の中心の丘にある、ずいぶんと立派なものだった。よほど人々の信仰を集めているのだろう、多くの参拝客が集まっていた。


 スクルド神を含むノルンの三姉妹を祭る神殿らしく、3つの像が並んでいる。

 右からウルド神、ベルダンティ神、スクルド神の3柱の順らしい。俺の知っている北欧の三姉妹と同じ名前だ。


 ウルド神は黒い肌に長身でグラマーな美人の像、レオタードに甲冑を合わせた様な衣装を着ていて、右手に槍を、左手に盾を持っている。背中には弓を背負っている。女神のくせにずいぶん重装備だなと思ったが、どうも戦いの神らしい。参拝しているのはほとんど戦士と思われる男達だった。


「戦争が近いので、ウルド神の加護を受けようとしているのでしょう」


 ニーアが説明してくれる。「戦争」か……困ったものだ。


 真ん中のベルダンティ神は、豪華なローブを着ているこれまた長身の美人。右手に剣を、左手に魔道書を持っている。

 ニーアによると、ベルダンティ神は種の純血と魔法の神らしい。あとエルフの神らしいが、参拝しているエルフと思わしき人影はなかった。代わりに、何人かが熱心に祈りを捧げている。


「ベルダンディ神は、種の純血の神なので、ハーフの私は糾弾の対象となりますね」


 ニーアは淡々と説明してくれる。糾弾か……ハーフのニーアが差別されるのはこの女神のせいではないだろうか?そう思ったが、触れない方が良さそうだ。

 あの熱心に祈りを捧げている人たちは、何を祈っているのだろう?聞き耳を立ててみる。


「旦那があのインムの女と別れますように……ベルダンディ神様、どうかどうか……」


「娘が無職のあの男と別れますように……縁切縁切……」


「あいつがあの娘と別れますように、できればこっぴどくふられますように……」


 ……なんか願いが変だ。


「えーと、純血の神のベルダンティ様は、別名『縁切りの神』でもあります。カップルを別れさせたい人たちが参拝に来ているみたいです」


『縁切りの神』って、縁結びの神なら知ってるけど、その反対、つまり別れさせ神かよ~


「ベルダンティ神様はとっても嫉妬深い神様なので、カップルで参拝するとかならず別れさせられるらしいです。ベルダンティ神の信者は、結婚前はもちろん、結婚後も純血を保つ事が望ましいと言われています」


 結婚後もかよ!どんだけ嫉妬深いんだ?


「というわけでカナタさん、早くスクルド神様の像のところへ行きましょう」


 ニーアが手を引っ張って行く。何でそんなに焦っているんだろう?


「こちらがスクルド神様の像です」


 そこには小柄な少女の像があった。ローブを着ているのはベルダンディ神の像と同じだが、何故か猫耳と犬みたいなしっぽが生えている。像の手には他の2神と違って武器はなく、赤ん坊の人形を抱いている。赤ん坊の人形には小さく犬耳が見える。


「スクルド神様は子供と獣人とインムの神です。そしてハーフの神でもあります。種の共存の神様です」


 なるほど、じゃああの赤ん坊の人形はハーフの子供ってことね。スクルド神の猫耳と尻尾は、直接会ったときには無かったが、確かにあいつが好んで付けそうだ。茶化そうと思ったが、ハーフの子供を抱いているスクルド神像の笑顔は、とても暖かく母性的だった。


 参拝者はウルド神やベルダンティ神よりずっと多い。まず子供が多く、貧しそうな身なりの者も多い。獣人とおぼしき者も何人かいる。この町でニーア以外の獣人を見たのは初めてかもしれない。

 供物も、貧しい者や子供達が、思い思いの品物を供えている。おそらく厳しい家計から、供物費を捻出しているのだろう。豪華さはともかくその数は他の2神の比ではない。供物の山ができている。子供が多いからか、汚れも多いが、すぐ別の参拝者がその汚れを拭き取っている。少なくともスクルド神がこの世界で大きな信仰を集めている神である事は間違いなさそうだ。

 ニーアもいつ買ったのかオレンジみたいな果物を供え、熱心に祈っている。


「どうか、種族が平和に暮らせますように。カナタさんと私が健康でいられますように」


 本物のあいつはとても祈る様な対象じゃないけどな……と思ったが、あまりに熱心に祈っているので、そのままそっとしておく事にした。

 獣人でハーフのニーアにとっては、二重の意味で大切な神様なんだろう。本当の事を言って、夢を壊すのは良くないね。スクルドと直接会って話をしたら幻滅するだろうな。


ノルンの3姉妹の紹介でした。

もう少しでスクルドのお姉さんが登場します。


次回は新キャラ登場です。

よろしくお願いします。

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