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『獣人の災悪』と『獣人狩り』

「おじいさま、またやる気を失っていたカナタさんが、急にやる気をだしたんですよ。これもスクルド神様のお導きだと思います。では行ってきます」


 ニーアが爺さんの墓に手を合わせて挨拶してる。

 確かにスクルド神のおかげだが……あの女神に祈っていると思うと複雑な気になる。そんなに良い神じゃないぞ、あいつ。

 ニーアの中ではスクルド神はずいぶんと美化されているらしい。


(カナタさんがやる気を出したのは、エッチな思いからですけどね~)


 妖精は小声で余計な事をいう、というかまだいたのかよ。昨日からずっと姿を消したままだ。


(お目付ですから、『獣人の災悪』の可能性が消えるまでは一緒にいさせていただきます)


 とっとと帰って欲しい。せっかくニーアと二人っきりのお出かけなのに……


「そういえばミルク、昨日も言ってたその『獣人の災悪』って一体なんなの?」


(スクルド様がおっしゃられるには、多くの獣人と人間が死ぬ運命が、少し後にあるみたいです。便宜上それを『獣人の災悪』と呼んでいます。おそらく戦争だと思われます) 


 『獣人の災悪』か……大層なネーミングだが、俺には関係がない。そんな大規模な災悪を俺1人の力で防げる訳がないのだから。

 俺の目標はただ1つ、2万ルーグ稼いで、ニーアを手に入れることだ。


ニーアの装備とステータスの方は


武器 曲剣シャムシール

鎧  皮のドレス

盾  

兜  カチューシャ

他  エプロン


職業 獣戦士 LV10

HP 110 

MP 25

魔法 アイス・ボウ アイスストーム



 レベルは10、魔人マクスウェルとの戦闘で俺のレベルが大幅に上がったから追い抜いてしまった。

 もっとも俺の自宅警備士のペナルティスキルのせいで、昼間の自宅外の戦闘だったら、ニーアが圧倒するだろうけど。

 今更ながらだが、ニーアの曲剣はシャムシールというのか。簡素だが、異国の装飾が施された剣は、ニーアに良く似合っている。

 剣の柄の部分に、ストラップの様な飾りがつけられていて、不思議な紋章が掘られている。


「この剣はお母様の形見で、お父様からもらった護身用の剣だそうです。この飾りはお母様がつけたそうですよ」


 そんな大切な剣を普段使いにするのはどうかと思ったが、本人は気にしていないみたいだ。武器だって消耗品だろうに、形見の武器なら、折れたり刃こぼれでもしたら大変だ。

 セコンの町で武器を新調してあげよう。シャムシールは予備の武器にすれば良い。

 やれやれ……ニーアの残りの権利を買うためとはいえ、一度いろいろ考えだすと、とにかく物入りだ。


 

 そういやさっきからミルクの声を聞いていない。

 小声でミルクを呼んでみる。


(むにゃ……おはようございます)


 二度寝していた様だ。

 お目付のくせに眠ってていいのかよ。

 ロリ年増女神にちくってやる。


 ところで何で昨日からニーアには姿を隠したままなんだ?別にニーアに姿を見せてもいいだろうに。


(実態化にはMPを多く使うんですよ。あと基本的に妖精は契約時を除いて人々の前に姿を現さないものですから…その方がありがたみがあるでしょ?)


 俺は毎日の様にミルクの姿を見ている気がするので、ありがたみもあったものじゃない。スクルドでさえ、ありがたみは微塵もない。


 そうこう言っている間にセコンの町についた。

 ずっと上り坂だったからか、ファーの町よりずっと涼しい。。


 セコンの町はファーの町より大きく、町を取り囲んでいる城壁も石造りで堅固そうだ。何より警備が物々しい。まるで戦時下の様だ。城門は兵士達が厳重に管理している。


「おいお前、名前はなんという?」


 兵士が声をかけて来た。全身を鎖帷子と鎧で武装し、手には槍を握っている。ずいぶん重装備だ。


「カナタ・ロータスワンドといいます」


「ロータスワンド……聞いた事あるな。職業は何だ?」


 自宅警備士です。と言いたかったが、怪しまれるだけだ。爺さんの息子なんだから、俺も研究者でいいだろう。

 情報強者スキルを持っているから、怪しまれてもごまかせる自信もある。


「研究者?ああ、ファーの町のロータスワンド博士の息子か」


 ロータスワンド博士、博士ときたか……爺さんはやはり結構有名人みたいだ。


「あんたは通っていい。だが隣の獣人の女、お前はダメだ」


「何でですか?彼女は俺の連れです」


「この町じゃ、獣人は主人に連れられた奴隷以外は進入禁止だ。なにせ獣人狩りのために出兵しようってんだからな……」


 獣人狩り?!聞き捨てならない。詳しく聞いてみる。


「北の森の獣人の小国連合を潰すために、動員がかかっているって話だ、詳しくは知らんがな。と言う訳で、主人が管理している獣人以外は入る事ができない。獣人側の間者の恐れがあるからな」


 獣人の国を潰すために戦争?ますます聞き捨てならないが、これ以上の情報を彼から聞き出すのは難しそうだ。

 詳しい情報を聞くために、街の中で情報収集をしたいが、このままではニーアが町に入れない。さてどうしたものか……


「カナタさん、こんなこともあろうかと、首輪も持って来てます。これを私に付けてくれれば通れるはずです」


 見ると、ニーアは荷物袋の中から、奴隷商にいた時に付けていた赤い首輪を取り出した。


「しかし……これは……」


 ニーアは俺の所有物ということになっているが、基本的に以前と同じ様に接していた。いまさら首輪を付けるなんて事はできない。それにこの首輪を付けていた時の、奴隷店での思い出はニーアにとって辛いものだったはずだ。


「私は気にしません。それに、獣人狩りと聞いてだまって引き返すわけには行きません」


 ニーアの決意は固いみたいだ。確かに同胞が狩られると聞いてはいても立ってもいられないのだろう。


「カナタさん、私は本当に気にしませんから」


 ニーアは優しく微笑んでいる、だがその瞳には固い決意が見える。

 俺は仕方なしに、首輪を受け取り、ニーアの細い首につける。

 ついでに髪と耳を優しくなでる。


「にゃん……カナタさん、くすぐったいです」


 可愛く鳴く。赤い首輪はいつ見ても背徳的な気分にさせる。

 いかんいかん、そんな事を考えてはダメだ。

 あくまで主人と忠実な獣人の奴隷、それを演出するための手段に過ぎないのだから。


「……おし、通って良いぞ。くれぐれも町中でも首輪は外すなよ、獣人側の間者だと思われるからな」


 兵士が道をあけてる。やっと町に入れる。

 誰がそんな約束守るか。門から離れたらすぐに首輪を外す。


「いいんですか?首輪を外してしまって」


「良いよ。ちょっと待ってろ」


 俺はすぐにお店でフードとマフラーを買う。

 両方とも絹を使ったものだったらしく、合計で150ルーグもした。

 鎧を買うための資金だったんだが、仕方が無い。


 フードを被せて猫耳を隠し、マフラーで首を隠す。これで猫耳を隠せるし、首輪の有無はわからない。


「ありがとうございます。あったかいです」


 ニーアも気に入っているみたいだ。猫人だから人間より寒さには弱いのかな。それほど寒い訳ではないが、気を使ってくれてるのかもしれない。


ニーアの方が、さっぱりした性格の様です。


次回は、午前0時に投稿予定です。

主人公が、新しい職業に就ける様になります。

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