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ニート再び

 女神スクルドが夢に現れてから数日がたった。

 今の俺の現状を一言で言うと、ニートだった。


 爺さんの養子であり、弟子になったので、表向きの俺の仕事は研究者と言う事になる。

 もっとも俺は情報強者というスキルを持っていただけで、研究者としての爺さんの仕事を特に手伝っていたわけでもない。したがって特に家でできる事もない。


 以前、女神スクルドにこの世界の余命が残り1年である事は聞いた。その時は確かに焦った。何とかしなければと強く思った。

 だがその気持ちは数日で消えた。世界の余命が1年、だから何だと言うのだろう。そもそも爺さんの命ひとつ救えなかった俺が、1年で滅亡する世界を救うなんてことができる訳が無い。だいたい「世界を救う」なんていま いちピンと来ない。「奴隷にされそうなニーアを助ける」という方が、具体的で現実味がある。

 世界のピンチなんて、俺以外の誰かがきっと、なんとかしてくれるんじゃないだろうか?


「世界を救うなんて、光の勇者とかに任せておけば良いさ……何で闇属性でニートの俺にそんな役割を押し付けるんだよ」


 そんな事を思いながら、爺さんが残してくれた書籍を眺めて暮らすだけの日々だった。

 そんな俺に対し、メイドであるニーアは以前と同じ様に家の仕事をして、昼間はバルーンを倒して、その皮を町で売ったりして生活費を稼いでいた。一緒に戦いたいが、バルーンの破魔魔法で即死するリスクがあるため、結局俺は自宅を警備することになった。

 同居している女の子の稼ぎでニート生活……これはいわゆる『ヒモ』ってやつかもしれん。


「はぁ……あのときのカナタさんは、あんなにカッコ良かったのに……」


 ニーアが緩み切った俺の顔をみて、何かつぶやいた様な気がしたが、きっと気のせいだろう。何も聞こえない。

 俺という男は、特に必要がない限りは余計な労働はしないのだ。スキル労働敗北のせいで働けないし、仕方ないもん。働いたら負けというか、死ぬもん。外に出ても闇属性だから、バルーンの破魔魔法で即死だもん。


 今日もニーアが昼のバルーン狩りに出かけた。その隙を見計らう様に、女神スクルドが現れた。ミルクも一緒だ。


「ちょっとあんた、なにさぼってるんだよ。世界の寿命はあと1年って言ったでしょ?」


「えー、だって、世界が滅ぶって言われても、実感ないし、俺以外の誰かがなんとかしてくれるでしょ。大体なんで世界は滅ぶんだよ、そんな兆候、無いじゃないか」


「異世界人のあんたしか運命を変えられないんだよ。前にそう言ったじゃないか。それに世界が滅ぶ兆候が出たときには、ほとんど手遅れになっているもんだよ」


 そんな事言われてもな~。


「む~、運命の女神様であるスクルド様の予言が信じられないんですか?カナタさんの罰当たり!」


 ミルクが近づいて来て、軽くホッペをつねりながら言う。はっきり言って全然痛くない。

 何をされても、やる気が起きない事に、変わりはない。大体、どうやって世界なんてものを救えというんだ。


「スクルド様、カナタさんがやる気を出すには、もっと具体的で下心まるだしの条件が必要だと思います。こういうのはどうでしょう?……ヒソヒソ……」


「ん?なになに……ヒソヒソ」


 ロリ年増女神と妖精が二人でヒソヒソ話をしている。結構、レアな光景かもしれないな。


「えー、コホン……カナタ君、そう言えばニーアを完全に奴隷として所有したわけじゃなかったんだよね?」


 ん?突然何を言い出すんだ?このロリ年増女神は。


「聞くところによると、あと2万ルーグ足りなかったせいで、ニーアの貞操を買い損なったらしいね。どうだろ、あと2万ルーグ稼ぐ事ができたら、ニーアの残りの権利を買い取って、なんでも好きな事ができるんじゃないかね?」


 ん?それは??ひょっとしてあんな事やこんな事……旦那様とメイド、ご主人様と奴隷……想像で胸が膨らむ。


「そりゃ『ご主人様』だから、『メイド』にイヤーンな事をしてもオッケーだよ。それはこのルール神が保証するよ、このスケベ」


 ロリ年増女神が胸と腰に手を当て、悩ましげなポーズをとりながら言う。

 はっきりいってこいつには全く色気はない。だが、言っている内容はとても魅力的だ。


「はは……やっとやる気になってくれた様だね。じゃあカナタ君、私は神界に帰るけど、お目付にこのミルクを置いて行くからさぼらない様にね」


「へ?何でですか!!何で私がこんなスケベでニートでニーアさんのヒモのお目付をしなきゃいけないんですか?」


「そりゃあんたが言い出したんだからね。責任取りなさい。『獣人の災悪』を防ぐまで、帰って来たらダメだよ」


「えー!!そりゃ酷いですよ!!スクルド様!!」


 ミルクの抗議も聞かずに、スクルド神は消えた。

 ミルクはしばらく無言でスクルド神がいた場所を眺めていたが、こちらを振り返り、


「えーと、カナタさん……という訳でしばらくよろしくお願いしますね……はは」


 笑顔を取り繕って言う。何だとこの妖精は、心の中で『スケベでニートでニーアのヒモ』だと思っていやがったんだな。まあその通りだが。


 だがそんな妖精の思いなどどうでも良い。まずお金を稼いで、ニーアの『正しいご主人様』になるのだ。

 その夢のためなら、妖精が何を考えていようがどうでも良い。

第2章に突入します。


次回は午後3時に更新予定です。

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