ロジーのお見舞いと、ニーアの猫耳
ロジー爺さんは相変わらず土色の顔をしていた、だが治療のかいあってか顔色は幾分かマシな気もする。
俺はニーアと話し合い、ニーアが自分を売った事は爺さんには黙っておくことにした。無駄な心配はかけないほうがいい、もう終わった事だ。
「それでおじいさま、カナタさんは一人ですっごく強い魔人を倒しちゃったんですよ!」
ニーアは珍しくはしゃいでいる。ニーアは自分を売るときに、爺さんともう会えない事を覚悟していたのだろうから、嬉しいはずだ。
「そうかそうか、カナタ君はただの怠け者だと思っていたが、大したものじゃな」
爺さんは嬉しそうに談笑している。治療の効果がでて、早く治ると良いのだが。
あまり病人を疲れさせてはいけない、俺は明日また来る事を約束すると、病室から出る事にした。
「おや、カナタ君かい?それに、ロジー爺さんとこのニーアちゃん」
病院の廊下でメルルさんが声をかけてきた、仕事柄、メルルさんは病院にもしょちゅう通っているらしい。メルルさんはニコニコ微笑んでいる、どうやら俺がニーアを買い戻すために魔人を倒した事を知っているみたいだ。
「お久しぶりです、メルルさん。先日は、おじいさまの入院の件……その……いろいろとお世話になりました」
「いいって事よ、入院費はきちんといただいたしね。ただ、もうカナタ君に心配かけるようなことしちゃダメだよ。カナタ君は必死だったんだから」
メルルさんは魔人を倒すために俺が何度もギルドに通った事をニーアに話した。俺は自分の話を聞いて、自分の無謀に気恥ずかしくなったが、ニーアは真剣に聞いていて、何度も頷いたり驚いたりしていた。
「もう……そんな危険な事をしちゃダメですよ、カナタさん」
「むう……ニーアに言われたくないな~、まさかあんなことしちゃうなんて、想像もしてなかったよ」
「それは……ごめんなさい……」
ニーアが申し訳なさそうな顔をしている、前から思っていたが、そういうときは猫耳が垂れ下がる。そして嬉しいときは耳がピクピク動く。
「まあ良いさ、もう済んだ事だし、今日はお祝いしような」
「はい、カナタさん」
ニーアが微笑む、耳は嬉しそうにピクピク動いてる。
俺はたまらなくなって、ニーアの猫耳をなでる。
「はにゃ!」
「おっと、ごめん。勝手に耳をさわっちゃだめだったんだな」
「えーと、今のカナタさんは私のご主人様ですから……耳くらいは触ってもいいですよ。でもくすぐったいです」
ニーアが恥ずかしそうにそう言う。
可愛い事を言うので、耳と頭をなでなでしてみる。ニーアは目をつむって気持ち良さそうにしている。
やっぱり猫人でも、猫なんだな。
「あーコホン!いいね若人は、でも病院でいちゃいちゃしないでくれる?こっちは独り身なんだしさ」
メルルさんが大げさに咳払いをして、むくれてる。病院の廊下であることも忘れ、三人で大笑いした。
ニーアの猫耳を撫でる権利を手に入れました。
苦労したから価値があると思うのですが、どうでしょう。
次回は午前9時に掲載予定です。