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インムの女リリカ

神と妖精は思い思いの事を言いながら消えて行った。同時に時間が動き出した。


 店主は額に現れた666の印をみつけてパニックになって、しきりに「破産だ!!」と叫んでいる。

 ニーアを買いにきた貴族は俺たちの前に立ち、俺たちを睨みつけた後、


「……必ず手に入れてやるからな……」


 と捨て台詞を吐いて出て行った。直視するのは初めてだったが、ぞっとするほど暗い目をしていた。

 外に馬車と護衛を待たせていたらしく、馬のいななき声がした。やはりとんでもないお金持ちらしい。

 もう一刻も早く、こんなところから去りたかった。


「ニーア、はやく一緒に帰ろう。俺たちの家に」


「はい……着替えてきますから、待っててくださいね」


 ニーアはそう言って、足早で着替えに向かった。パニックになった店主は、女奴隷2人に奥に連れられてしまったので、その場には俺とインムのお姉さんだけが残された。


「私の本気のチャームを受けて、正気を保てたのは貴方が初めてよ。ショックだわ、自信を失っちゃいそう」


 口とは裏腹に、インムの態度は自信に満ちている。このインムは油断できない、またチャームを仕掛けてくるかもしれない。


「ふふ、そんなに警戒しないで……一度失敗した女の色仕掛けはそうそう成功しないわ。それに何度も同じ殿方を口説くのは私の主義に反するの」


「あの商人は破産するらしいが、あんた達はこれからどうするんだ?」


「元店主は親会社のアジェンダ商会から多額の融資を受けているでしょうから、他の娘達はそこに引き取られるでしょうね。私は、そうね、あそこに戻るのも何だから適当なお金持ちにチャームをかけて落札させようかしら」


 インムのお姉さんには余裕がみられる。とても奴隷には思えない。確かにチャームをうまく使えば、とっくにここから出る事ができたはずだ。例えば金持ちの老人に自分を落札させて、死ぬのを待って自由になる、なんて事は簡単にできたはず……


「インムという種族はね、貴方が思っているよりずっとしたたかで強い存在なのよ。そういえば自己紹介がまだだったわね。私はインムのリリカ・ラル・アリエル。貴方は?」


「カナタだ」


「そう、カナタ様。今度会うときは私を買って下さいね。なんなら、そこの猫娘と一緒に可愛がってくださっても結構ですよ。彼女はまだ処女ですから、色々と物足りないこともあるでしょうし」


「はにゃ!何て事言うんですか!!」


 ニーアが顔を真っ赤にして会話に割り込んでくる、どうやら俺とリリカの会話を盗み聞きしていたらしい。俺とリリカの視線を遮る様に間に立つ。服はいつものだ。首輪はしていない。


「カナタさんも、インムに対して鼻の下を伸ばして、いやらしいです!」


「あらあら、ご主人様に対して何て口の聞き方なんでしょう、この猫娘は……やっぱり私にしませんか?カナタ様。たっぷりご奉仕いたしますよ?」


「余計なお世話です、カナタさん、早く行きましょう」


 ニーアに引っ張られる様に店からでる。同じ亜人の奴隷でも、リリカは他とはずいぶん違う。何と言うか、悲壮感が全くなく、圧倒的な余裕が感じられる。このリリカがそうなのか、それともインムという種族全体に言える事なのか、俺にはよくわからない。

 だがインムの事を考えるのはもうよそう。スクルド神が言う通り、今日はニーアと喜びを分かち合うべき日なんだから。


「家に帰る前に、おじいさまの所にお見舞いに行きましょう」


 おじいさま?そっか、ロジー爺さんのことか。忘れてた……


「……まさか、忘れていたわけじゃないですよね?」


「……忘れるわけがないよ。じゃあ病院に行こう」


 一瞬、ニーアの視線が気になったが、ごまかした。いろいろあったから、一時的に爺さんのことは忘れてしまっていても罰は当たるまい。


ニーアが「はにゃ」と言ったので満足です。


次のヒロインの種族であるインムの説明が少しだけありました。


次回の更新は午前2時を予定しております。

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