メルルと剣士ロッキー
猶予は3日しかない。
俺はギルドに向かった。
「おや、カナタ君じゃないか、最近よく来るね」
メルルさんが懸賞金のポスターの張り替えをしている。
「メルルさん、魔人マクスウェル討伐の懸賞金って、いまいくらですか?」
「おやおや、ずいぶんあわててどうしたんだい?いま20万ルーグに上がったところだよ。これだけ上がれば遠くの町から有名な冒険者が来るはずだから、じきに討伐されるはずだよ」
20万?ニーアの購入金額と同じだ!
スクルド神の言った通りだ、運命はきっと変えられる。
この金額の一致はその証拠だ!
「いま魔人マクスウェルはどこにいるかわかりますか?」
「まさか魔人を倒しに行くつもりかい?あんたにはちょっと無理だよ」
「どんなことをしても、魔人を倒さないといけないんです!お願いします、場所を教えてください!」
俺の気迫に、やれやれという感じでメルルさんは答えてくれた。
「いま町の西の山にいるらしいよ、結構近くだから、住民が恐慌状態になるのを防ぐために、一般人には伏せているけどね」
西の山?確かに近い。
ニーア達から、西の山の魔物は手強いと聞いていたので近づかない様にしていたが、あんな所にいたのか
「いったいどうしたんだい?そんな深刻な顔をして?」
「それは……大切な人を、助けたいんです」
俺が言うと、メルルさんは優しく微笑んだ。
「そうかい、しばらくの間にいい男になったね、じゃあちょっと一緒に来な。いいこと教えてあげるから」
メルルさんは俺を病院に連れてきた。
この病院の一室にロジー爺さんがいるはずだが、今は顔を合わせられない。
メルルさんは病院の一室に、俺を案内した。
幸い、ロジー爺さんのいる部屋とは別らしい。
包帯を腕に巻いた、屈強そうな男性がベッドで寝ている。
「ねえ、ロッキー、こっちの男の人に魔人マクスウェルについて、教えてあげてくれない?」
男はロッキーというらしい、ロッキーさんは俺の方を睨んで言った。
「わるいが、商売敵に情報は教えられない、たとえお前さんみたいなひよっこでもな」
ロッキーさんは魔人マクスウェルとの戦闘で負傷したらしい。ならば魔人マクスウェルの事について知っているはずだが、そう簡単に教えてくれそうも無い。
「お願いそんなこと言わないで。ロッキーが魔人を倒すのは、その怪我じゃ今回は難しいし、今度ギルドに来た時、ビールを一杯サービスするからさ?」
メルルさんが、ロッキーさんに身を屈めて頼み込む。
どうでもいいが、あの角度ではメルルさんの巨乳の割れ目が、ロッキーさんから見えるはずだ。
「わかった、わかった……教えてやるよ」
このスケベ。
メルルさんは俺の方を振り返り、舌を出して密かにウィンクしている。
男って情けないな……メルルさんがしたたかなのか、まあこのくらいじゃなきゃギルドで働くなんて無理なんだろう。
とにかく今回はメルルさんの好意に甘えるとしよう。
読んでいただき、ありがとうございます。
お話の中でビールがありますが、ビールは古代エジプトの頃からあったのでこの世界でもあってもいいだろうと思い、登場させました。英雄公クロスが伝えたとされる食材の一つです。
次回の更新は、午前0時頃です。