担保は俺の「×××」
奴隷店、ここに来るのは2度目だ。
最初の時は、インムのチャームに引っかかって、有り金を全部奪われたんだったな。
あれ以後、ここには絶対に来ないでおこうと思っていたけど、まさかこんな形で来る事になるとは。
「いらっしゃい、おやお兄さん、以前はどうも、へっへっへ……新しい商品の入荷がありましたよ」
「商品」……それだけでこのおっさんにキレそうになったが、我慢して案内してもらった。
女の子は以前より1人増えて4人、正面にいるのが以前のインム、そして右端にいるのが……
「ニー……ア……なんてバカな事を」
ニーアがいた。他の女の子と同じく露出の大きい白いドレスを着ている。
ニーアのドレスは上は胸元に小さなフリルがあるだけのシンプルなドレスだが、下はかなり短めのフレアスカートになっている、ドレスと言うよりアイドルのステージ衣装に近い感じだ。
ニーアのスレンダーな体に、控えめな胸と、激ミニのフレアスカートから見える綺麗な足。
インムのお姉さんが着ているのは胸元が大きく開き、腰まであるスリットのが過激なロングドレスだから、同じ白いドレスでもずいぶんと違う。
くそう、悔しいがニーアの魅力を引き出している。魅力的だが、肌は見たくない、というか他の人に見せたくない。
そしてニーアは家では見た事のない様な深紅の口紅をつけていた。
その口紅が、ニーアがずっと遠くの世界に行ってしまった事を俺に痛感させた。
そしてそのか細い首には奴隷らしく、赤い首輪をしている。
首輪をしたニーアを見ると、悲しさと、悔しさと、怒りがこみ上げてくる。
「カナタ……さん、こんな所にくるなんて……」
ニーアは視線をそらし、うつむいている。
こんな姿を見られて恥ずかしいのだろう。
両手で短いスカートの裾を掴んでうつむき、視線を合わせてくれない。
「おっさん、ニーアを幾らで買ったんだ?どんなことをしてでも金は払うから、契約をキャンセルしてくれ!!」
「おっと、それはできませんね。この契約はルール神によって保護されています。キャンセルはできませんね」
「じ、じゃあ、ニーアを買いとる!!いくらだ!?」
「20万ルーグになります」
高い!!
くそう、爺さんの治療費の4倍か……だが背に腹は変えられない。
「前金で100ルーグ支払う、だから俺以外の誰にも売らないでくれ」
ニーアにもらった100ルーグを、こんな風に使うとは思わなかった。
「手付金ですか……だが手付金は、代金の5%となっていますので、1000ルーグ必要になります。100ルーグではまるでたりませんね」
なんだと、じゃあ……
俺は以前、お金が無くて男媚にされそうになったことを思い出した。
「残金を支払えなければ、残り900ルーグ分を、俺を男媚にでもして働かせれば良い」
担保は俺のお尻だ、こんちくしょう!
うつむいていたニーアがハッとしてこちらを見る。
「カナタさん、そんな!!」
「なるほど、あなたは男性にしては珍しい色白だ。しまりも良さそうですし、あなたなら男性客にうけそうですね」
店主は、俺の尻を軽く撫で回しながら言う
……ちくしょう……ちくしょう……ちくしょう……
今まで感じた事の無い屈辱だ。だが、ニーアも同じ様な屈辱に耐えているのだ。
「了解しました。しかし期限は3日、それ以上は待てません。ではルール神に契約の締結を報告しましょう」
おっさんが手を叩くと、妖精が現れた。
なんと、チュートリアルで会った、ミルクだった。
「ルール神さまの使いとして、この契約締結を保護しに来ました。この契約はルール神によって保護されます」
ミルクが宣言する。ルールの契約って、こんなのだったのか。
「ルール神によって保護されたこの契約を破った場合、額に666の印が書き込まれます。その印がある間は、あらゆる商業活動ができなくなります」
奴隷商人と俺は同意し、それを確認したミルクは姿を消した。
「ニーア、かならずお金を持って戻ってくるから、待っていてくれ」
そう言うと、俺は奴隷店を出た。ニーアがわずかにうなずいた様な気がした。
読んでいただき、ありがとうございます。
さて、悲劇のヒロインを救うという男性の願望と、祖父のために身を犠牲にするヒロイン、という古典的なネタを組み合わせてみました。
奴隷を買ってヒロインを増やしていくという形は、なろうでは既出だったのでこういう形になりました。
尻についてはノーコメントで……
次回の更新は、午後9時頃になります。