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ニーアからの手紙

 俺はすぐにでも魔人マクスウェルを倒しに行きたがったが、俺とニーアのレベルと装備では勝てるとはとても思えなかったので、

 ともかく何か使えそうな物をと思い、家の倉庫に来た。


 ここには爺さんのアイテムが収納されている、何か使えそうなものは無いか?

 爺さんは研究者だ、何か戦闘に使えるものがあるかもしれない。


 だが残念ながら戦闘に使えそうな物は無かった。

 あるのは俺とニーアが最近大量に収穫したバルーンの皮と、コブリンの骨くらいだった。


 そうだ、ここにあるアイテムを鑑定して、高く売れそうなアイテムは無いだろうか?

 俺は片っ端からアイテムを鑑定したが、大して高く売れるアイテムは無かった。

 そりゃそうだ。金目の物があれば、ニーアがとっくに売ってお金に換えているだろう。



 情報強者のスキルを使いすぎて倒れたらしく、目覚めると既に夜が明けていた。

 スキルも使えば体力を消耗する……昨晩はいくらなんでもスキルを使いすぎた。

 どのくらい眠ってしまったのだろう?

 ニーアは、ロジーじいさんは大丈夫だろうか。


 リビングに戻るとニーアはいなかった。

 静かすぎる、おかしい、爺さんが部屋にいるはずだけど……?


 胸騒ぎがしたので、爺さんの部屋に行くと、ベッドで寝ているはずの爺さんの姿が無かった。


「ニーア!!、ロジー爺さん!!!」


 俺は必死になって部屋を探したが、家にはだれも居なかった。


 リビングの机の上に、大剣と手紙が置いてある事に気づいた。

 どうしていままで気づかなかったのだろうか。

 俺は恐る恐る手紙を手に取った。


カナタさんへ

突然のお別れになり、申し訳ありません。

おじいさまの治療費ですが、お金は用意できそうなので、心配しないでください。

私は遠くに行くことになりますが、おじいさまはファーの町の病院に預けますので、たまにはお見舞いに行ってくださいね。

以前にボブコブリンがドロップした大剣を研いでおきました。

『ノートゥング』っていう、かなり強力な武器みたいです。

私からのプレゼントといっては何ですが、ちゃんとした武器さえあれば最近のカナタさんなら、もう1人で冒険者としてやっていけると思います。

お金も100ルーグあります、おじいさまのお仕事の手伝いの報酬なので、気にしないで受け取ってください。

お金があるからって、もうインムのチャームに引っかかってはダメですよ。

さようなら

                   ニーア・ノーブルゴート


 ……お金が手に入った……だと?

 嘘だ、そんな大金を簡単に手に入れる方法があるわけが……


 そう思って俺ははっと気づいた。

 簡単にお金を手に入れて、なおかつニーアが奴隷になる運命につながる方法が……


 ニーアは、自分を奴隷商人に売ったんだ、それで治療費を確保したんだ。

 そしてニーアは悪い買主に買われて、そこでつらい思いをして、最後には死んでしまう。


 おそらく爺さんも治療のかい無く死んでしまうのだろう。

 始めから、そういう運命だったんだ、これで合点がいく。

 爺さんは病死し、ニーアは奴隷として売られたあげく、死ぬ。


 爺さんを助けるために自分を売る事を決意し、今後1人で生きていかなければならなくなる未熟な俺に、少しでも強力な武器をと思い、この錆びた大剣を研いでくれたのだろう。

 まるで鏡の様に磨き上げられた大剣を見ながら思う。

 自分を奴隷商人に売ると決めて、ニーアはいったいどんな気持ちでこの剣を研いだのだろう、と……


 涙があふれてくる。


 俺は、スクルド神に会ってから少しばかり変わったつもりでいたが、せっかくの大剣をロクに研ぎもせずほったらかしだったのだ。


 後悔があふれてくる。

 結局、この世界でも俺は何もしないただのニートなのか?


 爺さんとニーアが死ぬのはこの世界の運命なのか?


 運命?ふざけるな!!

 こんな運命があるか?

 結局爺さんは助からず、ニーアは陵辱されたあげく死んでしまう、そんな運命、俺は認めない。

 どうせ死んでも元の世界に帰るだけ、なら命がけで運命を変えてみせる!


 俺はニーアが研いでくれた大剣を背負うと、ファーの町に向かった。

 行き先は、奴隷店。


【片手両剣ノートゥング】

ボブコブリンがドロップした錆びた大剣をニーアが研いだもの。

東遷戦争以前の古代の剣。両手剣としても、片手剣としても使用可能なバスタードソード(片手両剣、混血剣、複合剣等)。

バスタードソードは使用に非常に熟練を要するため、現在のフィフスガルドではほとんど使われていない。金銭的価値は低い。

長年使われず錆び付いていたが、ニーアが丁寧に研いだことにより、破壊力だけでなく切れ味も優れる豪剣となった。


読んでいただき、ありがとうございます。


物語は予言通りに進みます

これを変えれるのは、運命の外の存在である主人公だけです。


※バスタードソード

誤解されがちですが、バスタドーソードのバスターは、破壊の意味ではなく、私生児や混血児の意味です。大きさが片手剣と両手剣の中間のどっちつかずの剣と言う意味です(それでもかなり大きい)。漫画ベルセルクのガッツが持っているのは両手剣のグレートソードの一種でしょう。本当は名前も無いただのバスタドーソードにする予定でしたが、ニーアが研いだ剣というお話になったので、名前を付けてみました。


次回は、午後3時頃に掲載予定です。

主人公は、とんでもないものを質にいれます。

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