魔人マクスウェル(懸賞金15万ルーグ=約1500万円)
翌日、朝の鑑定の手伝いの時間にロジー爺さんに【闇の指輪】の鑑定をお願いした。
まあ、情報強者のスキルを持つ俺がスキャンできないんだから、爺さんがわかるか疑問だったが、一応専門家だ。聞いてみよう。
爺さんに渡そうとしたが、どうやっても指から抜けない。まるで呪いのアイテムだ。
仕方が無いので、手に付けたまま観てもらう。
「この指輪は、むむむ…」
何が「むむむ」だ!と思ったが、ここは爺さんの専門家としての知識に期待するしか無い。
「ただの指輪、では無いようじゃが…カナタ君、この指輪はどこで手に入れたんじゃ?」
それは……昔、知り合いにもらったとごまかす。
「ふむう……ワシにも何の指輪かわからんの。相当の業物じゃと思う。あと闇属性なので、普通の人間に持つことならともかく、装備する事はできんの」
役にたたない爺さんだ、もう1回情報強者でスキャンしてみる。
【闇の指輪】
闇属性の者のみ装備可能
効果 敵の攻撃魔法を受けると、ランダムで覚える事がある
闇魔法を吸収する(HP及びMP吸収) ????
効果が追加されている、どうも昨日のレベルアップで、情報強者スキルの効力もアップしたみたいだ。
闇魔法の吸収か……吸収してMPを得る事ができれば、魔法を使えるかもしれない。
ニーアとロジー爺さんに闇魔法を使う魔物について聞いてみる。
「闇魔法?ダース族が使えると言われる強力な魔法です。東方でも魔物の中でも魔人とか、上位種は使うと言われています。この辺りには、闇魔法を使える魔物はいないと思いますよ」
闇魔法を使える魔物はいないか…しばらくこの指輪は役に立ちそうにないな。
魔法の話題が出たので、ついでに魔法について聞いてみる事にする、ニーアもロジー爺さんも魔法は使えるみたいだし。
「魔法は、意思力と想念力が具現化したものだと言われておる。MPはその人物の意思力や想念力を表しているそうじゃ」
「意思惰弱な人は魔法が使えないと聞きます」
……むう……ニートな俺は意思力が低いため、魔法が使えないのだろうか?女神スクルドも夢の中でそんな事言ってたな。
だいたい、異世界のファンタジー物語の魅力って、半分くらいは魔法に関する物じゃないのか?それが全く使えないなんて……
みんなが魔法を使えないのなら我慢できるが、みんなが使える魔法が自分だけ使えないって、悲しすぎる。
「まあ……魔法が苦手でも、優秀な戦士もいるみたいですから、気にしなくて良いですよ」
ニーアが慰めてくれる。
魔法が使えなくてもしばらくは何とかなるだろう。
翌日の昼は情報収集のためにファーの町に出かけることにした。
ニーアは俺が活発になった事に驚いていたが、笑顔で見送ってくれた。
まるでダメな息子が活動的になって、喜ぶ母親みたいだ。
ファーの町は、以前に来た時より、よそよそしい感じがした。
ファンタジー世界で情報収集といえば冒険者ギルド。
俺はギルドにいくことにした。
少し近寄りがたい雰囲気があったが、勇気を出して行くしか無い。
ギルドはなぜか閑散としていて、ほとんど人がいない。
「いらっしゃい、お客さん初めてだね」
ギルドの受付の女性の歳は20代後半だろうか、親しみやすい雰囲気のお姉さんだ。
スキャンしたが名前はメルルさんで、人族の26歳、着やせするが実は巨乳、独身らしい。
……俺のスキャンは妙な情報ばかり収集してしまうみたいだ。
戦闘データをスキャンしなかったということは、メルルさんは戦闘要員ではないのだろう。
「こんにちは、何か町がよそよそしいけど、何かあったんですか?」
「それがさー、強力な魔物が発生したらしいんだよ。それでかなりの賞金がかけられててね、みんな出払っちゃったんだ」
「賞金、っていくらですか?」
「そっちの張り紙に書いてるけど、15万ルーグ、この様子だともっとあがるかもしれないね」
ターゲットモンスター
魔人 マクスウェル
物理耐性 火炎耐性 氷結耐性
【賞金】15万ルーグ
15万ルーグか、まさに一攫千金だな。……俺が奴隷商にぼったくられる前の全財産が20ルーグだったっけ。
「相当強いみたいでね、ウチの一番強い戦士の攻撃が効かないほどの防御力を持っているみたいなんだ。このあたり、あんまり強力な魔法使いもいないんだよね。だから数で勝負、というわけでみんな出払っちゃったんだよ」
何やら大変そうだ。
魔人か、とても今の俺には勝てそうにない。
そもそもロジー爺さんの死亡の原因にはなるかもしれないが、ニーアが奴隷に売られる直接の原因とは思えない。
どうもこの件は関係なさそうだ。
魔人の事は気になったが、ギルドを後にした。
その後、武器防具に寄ったが、こんぼうの次に安い銅の剣ですら50ルーグからで、買えるものは無かった。
結局、大した収穫は無く家に帰った。
読んでいただきありがとうございます。
次話は、本日午後9時頃に掲載できると思います。