そしてニートへ
「カナタさん、おはようございます。おきてください」
翌朝はニーアに起こしてもらった。どうも油断すると朝起きるのがおっくうになる。
自宅警備士は夜勤がメインの夜型なのだ。
だが猫耳美少女メイドに起こされるのも悪くない、苦しゅうないぞ。
朝ご飯は昨日のナンみたいなパンと、スクランブルエッグとコブリンの肉少々だった。
このスクランブルエッグの卵は、何の卵だろう?
まあ旨けりゃなんでもいい。
その日も、前日と同じで午前中は情報強者のスキルをつかって爺さんのアイテム鑑定の手伝いをしていた。
ただ午後のアイテム収集に俺は参加せず、家で留守番となった。俺の新しいスキル超弱対破魔のせいで、バルーンの破魔魔法にて確実に死亡することが明らかになったためだ。
幸い、スキル自宅警備もある、ボブコブリンに攻められても大丈夫だ。
もっとも、バルーンに攻められたら逃げるしか無い。
ロジー爺さんの家はあっけなく落城してしまうことになる。
うーん、バルーンに勝てないってのも情けないな……
幸い、その日の午後は自宅にモンスターの襲撃はなかった。
昨日みたいな人家に対する襲撃はめったにないらしい。
三日目にもなると慣れた物だ。
朝はニーアに起こされるまで寝てて、午前は爺さんの手伝い、午後は自宅警備だ。
……元の世界でも、朝は母さんに起こされるまで寝てて、たまにパソコンでわからない所を父さんに教えたりして、午後は自宅警備をしていたな。
前の世界と一緒じゃん。
異世界に来てまで自宅警備をするなんて、さすが俺。
自宅警備士の国家資格保有者だけある。
4日目、5日目が過ぎて、俺は完全にニートになった。
朝起きて、ご飯食べて、爺さんの手伝いをして、ご飯食べて、自宅警備して、昼寝して、ご飯を食べる。
それだけの生活に戻ってしまった。
まあ本当のニートは朝ご飯は食べずに、代わりに夜食を食べるようになるんだが……
ニートな俺に対するニーアの視線が以前に増して冷たい、この冷たさは最初にインムに全財産を取られた時以上だ。
だが爺さんの俺に対する対応は以前と同じように思える。
この家の主はロジー爺さんなので、爺さんの機嫌さえ損なわなければ大丈夫だ、まだ、いける!追い出されずにすむ。
と思った人は自宅警備士の素質があると思うので、来年の受験をお勧めする。
……って誰に言ってるんだ、俺。
俺が、ニート生活しても何も言われないのは、おそらくロジー爺さんのアイテム鑑定業に俺が必要だからだろう。
つまりロジー爺さんのアイテム鑑定が終わるまではニート的な暮らしをしていても大丈夫だ。
でも、俺はふと考えた。
アイテム鑑定が終わったら、どうなるんだろ?
異世界でニート生活できるのは、爺さんの手伝いが終了するまでじゃないの?
だがそれでも働かないのがニートである俺だ。
だって働いたら負けだもん、死ぬもん。
スキルのせいで労働=即死だもん。
そんなことを考えなら、日課のお昼寝をした。
読んでいただいてありがとうございます。
次話から、いっきに話が進みます。
本作は、いわゆる「異世界ほのぼの系」ではありません。
よろしくお願いします。