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変身しました

 短いですが、更新します。

 

 拝啓、メリアランお嬢様。

 日々の御仕度、そしてお出かけ時の御仕度について、ここまで精神を消耗するとは思ってもおりませんでした。

 決してわが身にはふりかからぬと思っておりましたが、人間生きているといろいろと予想外なことが起きるようで、思わず膝を折り懺悔したくなりました。

 こちらの世界で童顔とは言われた事はなく、むしろ年上に見られることが多かった私です。

 まさかあの色は着せられないだろうと思っておりました。

 沸き合いあいと皆さんのなされるがままの私が、やや意識が遠くにいっている間に決定したようで、反射的に「ありがとうございます」と口にしたのがいけませんでした。

 はっと我に返ってみれば、目の前の鏡にはにっこにこのアン夫人とお針子さん達、そしてあの色のドレスを着せられた私の姿がありました。

 

 絶叫しそうになりました。

 精神年齢約60才。

 

 とうとう禁断の色。

 パステルカラーなピンクを着せられていました。

 これから羞恥と戦います。

 私の無事をどうぞ祈って下さいませ、お嬢様。

 このドレスを着たお嬢様を想像しながら、ヒルダは今日一日頑張ります。

                 敬具

              



 あぁ、なんでこうなって、これ着てここに立ってるんでしょう。

 鏡の中の私は完璧に引きつっていました。それも顔色悪かったはずなのに、化粧のせいか全く青くは見えません。むしろ頬のチークがあるせいか、いつもより年下に見える。

 髪はハーフアップされ、毛先はくるっくるに巻かれ、髪飾りはハートをモチーフにした銀細工で、いくつかピンクの石がついている。

 問題のドレスは上半身はやや体の線に沿ってタイトに仕上げてあるが、首は鎖骨ラインをしっかり出している。スカートはふんわりとふくらみ、3層の色の濃淡が施されたチュールスカート。しかも今流行りらしく膝丈。こんなの十代かそれ以下の女の子しか許されませんって!!

 「さぁ、こちらで仕上がりです」

 さっと首に付けられたのは、細い銀のチェーンのペンダント。ダイヤ型の黄色い石がチャームとして揺れていた。そして耳にも同じものをされる。

 

 「「きゃぁあああああ!!完成ですわぁ!」」


 まさに歓声。お針子さん達も手を取り合って喜んでいるし、アン夫人も満足げにうなずいている。

 その後硬直する私を尻目に、アン夫人はさっさとお針子さん達に片づけを促し、気がつけばお針子さん達は全員退出していた。

 「さ、お披露目ですわ」

 「へ、こ、この格好でですか!?」

 「お似合いですわ。渾身の出来です」

 ぐいっと力強くアン夫人に腕をつかまれ、ずるずる引きずられるようにしてカーテンの前に立つ。

 「ジェイナス様、整いましたわ」

 言うが早いか、さっとカーテンを引かれた。

 (なんて言われるだろう)

 緊張からぎゅっと目を瞑っていたのだが、いつまでたってもジェイの一言がない。

 「ジェイナス様?」

 不思議に思ったアン夫人の声に、私もそっと目を開けると、そこには今まで見たこともないくらいぽかーんとした顔をしたジェイが座っていた。

 「お気に召しませんでしたでしょうか?」

 おそるおそるといった様子でアン夫人が声をかけると、ジェイははっと我に返って首を振った。

 「いや、化けるもんだと」

 「そうでございましょう!こちらのドレスの型は最近流行のものでして、とくにこのピンク系統から黄色系統は大変な人気でございます。お化粧にも当店は『目指せ-5才』をモットーにしておりますが、お嬢様はお若いですので、素材をそのまま生かしたナチュラルメイクで仕上げました」

 にこにことして一気に話すと、アン夫人は硬直する私の背をそっと押してジェイの横まで連れて行った。

 「それでは、少々お席を外させていただきます」

 一礼してさっと部屋を出て行った。

 残された私達には、しばらく沈黙があった。

 やがて沈黙を破ったのは、ずっと私を見ていたジェイだった。

 「化けたな」

 大切な事なのか?二度目を言われた。

 私はやや引きつりながら笑顔で首を傾げた。

 「どういう意味かしら?」

 ジェイは再び上から下まで見た後、顎に摘むように手をおいた。

 「いや、もっと大人びた格好でもさせるだろうと思っていたのだが、まさか姿年齢を下げる格好をさせるとは思いも寄らなかった」

 「私もこの年でピンクを着るとは思いもしませんでしたよ」

 心のうちを吐き出せば、ジェイはふと首を傾げた。

 「20前後の女性は着るだろう?」

 「あ、いえ、私はピンクとか黄色とかの明るい色が苦手でして」

 まさか精神年齢還暦近いとは言えず。あわてて取り繕う。

 「あぁ、だからあえて夫人は着せたのか。意識改革が大事だと口癖のように言うひとらしいからな」

 どうやら納得したようで、ジェイは1人うんうんとうなずいていた。

 そしてすっと立ち上がったジェイに腕をとられ、なれないヒールの靴でわたわたと付いて行くと、そこには姿見の鏡があった。

 2人してその姿を見た時、私は思わず口走った。

 「あ、似てないけど兄妹(きょうだい)みたい」

 「……」

 ややジェイの眉間に皺が寄った。

 アン夫人はナチュラルメイクだと言ったが、メイクさんは手を抜いていないようだ。-5才メイク、おそるべし。

 読んでいただいてありがとうございます。

 また明日か明後日更新したいと思います。

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