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第二章 リョウとベア

 若い夫婦によって外に出たわたしは、車という乗物に乗せられて、一軒の家に着きました。

 家の中に入るなり、夫婦はある部屋へ一目散に入りました。その部屋には優しそうなおばあさんと、小さな男の子がいました。

 奥さんがその男の子を抱き上げて、優しくキスをしました。そして、旦那さんがわたしをその男の子の前に出して、わたしの手を動かしながら高い声を出しました。「こんにちは、リョウ君。僕と仲良くしてね」

 男の子は、わたしのことをしばらくじっと見つめて、お母さんの方を見ました。

「テディベアっていうのよ」

「べ、あ? ベア! ベア!」

 このリョウ君という子は、それからずっとわたしのことをベアと呼ぶようになりました。

 リョウ君は、眠る時も、ご飯を食べる時も、お出かけをするときもわたしを離しませんでした。それに、とっても大切にしてくれました。よだれがわたしに付かないように気をつけたり、食べこぼしでわたしを汚さないように、わたしにもよだれかけをかけてくれました。


 わたしがリョウ君と暮らし始めて数週間が経ったときのことです。

 わたしはリョウ君に助けられました。

 奥さんが換気のために、家中の窓を開けていました。すると、奥さんの目を盗んで野良犬が入り込んできたのです。犬は、床にいたわたしをくわえると、そのまま逃げようとしました。そのときです。いつもは大人しいリョウ君が大声を上げて、手をグーにして犬に向かって走ってきたのです。犬は驚いてわたしを落とすと、慌てて外へ逃げていきました。

 その騒ぎに気付いて、奥さんが駆けつけてきました。奥さんは犬の足跡を見てびっくりしていました。リョウ君はわたしがケガをしていないか、心配してあちこちをやさしく撫でてくれました。

 リョウ君はとてもやさしい男の子です。ですが、あまり外では遊ばず、ほとんど家の中にいます。そういえば、リョウ君や奥さんや旦那さんの言葉は、ヴェルナさんや他の人は違っているようです。髪や眼などの感じも少し異なっているようです。


 リョウ君が4歳のときでした。

 急にリョウ君の家族は荷物をまとめ始めました。わたしも箱に入れられそうになりましたが、リョウ君が嫌がったので、わたしは箱には入れられませんでした。

 家の中の物がどんどん運び出され、がらんとしていました。わたしはリョウ君にしっかりと抱かれて、旦那さんや奥さんと一緒に、飛行機と呼ばれる空飛ぶ船に乗りました。リョウ君が窓の景色を見せてくれました。見えるのは白い雲と青い空ばかりでした。これからどこへ行くのでしょうか?


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