抹茶ティーと
抹茶ティーと一緒にドーナツを食べる。
至福の時だ。
昨日一日の思考を絞り出すような苦労と、厄介女の付きまといから解放されているので余計幸福感がある。
とあるドーナツチェーンで俺はそんな昼食をとっていた。
色とりどりのドーナツが並ぶ棚。白に統一された店内。俺は店の端でゆったりと座る。
今日は休日。
いつもは家で適当に冷蔵庫の物を食べるのだが、今日は気分がいいのでドーナツを食べに来たのだ。
飲み物は紅茶にしようと思ったのだが、期間限定の抹茶ティーがあったのでそれにしてみた。
普段はコーヒーで集中するタイプなのだが、たまにはこういうのもいい。
緑色が映える。多分抹茶と紅茶とミルクが入っていて甘いシロップも入ってて超甘い。
ドーナツと一緒だと甘々だ。
だけどそれがよかった。
甘々なのも大好きだからだ。
だから俺はそれをモソモソ食べていた。
「ふう」
スマホを見ながら食べていると、向かいの椅子に人が座った気配がした。
「え?」
思わず顔を上げるとそこには女性がいた。
「よ。こんなとこで奇遇だね。抹茶ティー? 全然君のイメージと違うかな」
手をフリフリしながら彼女が言う。石田湊だ。細身の身体で目つきが鋭い。整った顔つきだがそれが冷たさと近寄りがたさを強めている。
また来たのか。こいつ苦手なんだよなぁ。
「湊? お前何でここに」
「別に? 偶々だよ。まあ? 昨日チェスの大会で負けたから? そのリベンジをしたいなーとは思ってたけどね?」
「……わざとらしいな。大会は終わったし、リベンジは無しって昨日何度も言っただろ。暫くお前とチェスする気ないぞ。俺は勝利を噛みしめたい」
今日も家のパソコンで少し触ったが、今はリフレッシュタイムだ。
「ったくいるよねー、一回勝ったくらいで調子に乗るやつ。そんなこと言わないでさっさと大学行くよ。リベンジしないと!」
そういうと俺の抹茶ティーを持ち上げ、一気に飲み干した。
「あ! おい!」
「うん、おいしい。ほら行くよ! 抹茶ティーなんて軟派な物飲んでないで勝負だ勝負」
そう言って手を引っ張られ、俺は店を後にした。
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