表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

6/36

B4.暗殺者−1

B4.暗殺者−1


 降鷲が指折り案分あんぶんする。

「……時間だ」

 祈るようにこうべを垂れた。

「……ああ」

 カクナロクナが同意する。

 魔術で殺害した「降鷲の死体」の検分の時間だ。

「……小細工できないか?」

 降鷲の「死体を偽装する」提案に、カクナロクナが失笑した。

「フッ、冗談だろう。――見誤みあやまうはずがない。私のめいを奪う、最初にして最高の手札だ」

 カクナロクナが降鷲を指さした。

「だからこそ、小細工がく」

 一秒。カクナロクナは「天使が通りすぎる」まで待った。

「……名もない〈濡れ仕事屋(ウェットワーカー)〉、ではない?」

「暗殺部隊のなかには、あなたの手の者もいるだろう。私淑ししゅく――隠れて学んでいる者もいるかもしれない。その可能性がある者を使うことはない。であれば?」

 カクナロクナが脳裏に浮かんだ人物を、降鷲が告げた。

「国をうれうあなたは、国のために死を選ばない。では、あなたは誰のためなら死を選ぶだろう」

「〈四文字語フォーレターワーズ〉!」

「同意見だ」

   *

 ――カツン、カツン。

 石造りの通路に、軍靴が響く。

 ゆっくりとした歩調あしどりで、剣を抜く。

 王国騎士団の略装の女性が、剣を手に通路を歩んでいた。

 ――暗殺者は急がない。

 必要な時に、目標の人物を殺めるだけだ。

 騎士団副団長キクナラクナの表情は険しかった。

(ふう……気が重い)

 キクナラクナの敬称「〈闇の魔術師(ダーク・ウィザード)〉クナラ女男爵」――それはクナロ伯爵令嬢を意味する。

 王国摂政の第四子にして、史上最強の〈闇の上級魔術師ダーク・アークウィザード〉の娘だが……。

 キクナラクナは欠陥品ポンコツだった。どうあがいても〈上級魔術師(アークウィザード)〉にはなれなかった。

 ゆえに、母亡きあと騎士団に入り、剣に〈ダーク〉魔術を付与して王国に貢献してきた。

 それも父――クナロ伯爵の一助となればよいとの考えからだった。

(父が、王命にたがえるなど……)

 信じられなかったが、大伯母の公爵閣下から命じられれば、応じるほかない。

 ――カチリ。

 起動音のあと、石片の衝撃が床や壁に伝わってくる。

 議長は無事、異世界人を殺害したようだ。

 用心のためキクナラクナは、剣を左に持ち替えて近づく。黒い霧が刃にまとう。

 隠し扉の前に立っていたのは――。

 ――果たして、異世界人の降鷲だった。

 奥の部屋に、父の指輪が光った。

「おのれ!」

 キクナラクナが、左から逆袈裟に斬り上げた。



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ