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A12.隗より始めよ

A12.かいより始めよ


 僕は、順番に黒板に書いていく。

 勇者の名は、ツッギー。

 隊長は、虜囚ヴェガ。

(なんて、貧弱な響きなんだろう)

 旧帝室由来の王国上級言語ではない異世界の言語は、僕には正確に発音できない。

 隊長付の男性従者シーマが、年齢不詳のケイにお伺いを立てている。

(「ファンクション」とはなんだ?)

 ケイは、その思慮深さから考えると、かなりの高齢に違いない。

 だが、外見は僕の母――三十前後――ほどにしか見えなかった。

 その様子を黙って見守っているのがグースという男性で、その隣には知的で麗しい女性、ナーガがいる。

 残りは、ヴェガといっしょに収監されたハンナだ。

 女性勇者に男性隊長、女性副隊長。――男女混合隊だ。

 勇者・隊長・副隊長以外は、僕の母と同年代らしい……。

 それだけ経験豊富だと考えられるのに、僕にはどうしてもそう感じられなかった。

(不敬を犯すような愚か者でしかない……)

 さて、僕はまず言葉の問題を解決したかった。

「この〈加護〉の魔術具を使うと、王国語――こちらの言葉――を理解できます」

 その言葉を発した途端、緊張が走った。

 凍りついた空気のなか、僕は何をミスしたのか、理解できなかった。

 王国式の挨拶では上級レベル、諸外国でも問題にならないはずだ。

(――敵意。これは、敵意だ)

 異世界人たちは、僕の言葉に明確な敵意を抱いた。

「これって、たぶん……」

 麗しいナーガが眉をひそめる。

「奴隷の首輪でしょうね」

 老いてなおその美貌を保つケイが即答した。

「そっ、そんなことはないですよ!」

 僕は慌てて首を振った。

「僕――いっ、いや、私とは召喚術式でつながっているので話せますが、他の人とは会話できませんから……」

 必至に弁明する僕を、冷たい視線が貫いた。喉が渇く。

(奴隷? そんなことが? 帝国じゃああるまいし、王国に奴隷制度なんて存在しない!)

かいより始めよ」

 ケイが穏やかな声で言い、美しい手を僕に差し伸べた。



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