表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

2/36

B1.軍事目的で少女を略取されました

B面『偽魔術師あるいは現代の賢者:軍事目的で少女を略取されました』

〝The Quasi Sorcerer; or, The Wise Modern Man〟


B1.軍事目的で少女を略取りゃくしゅされました


 代表である降鷲譲ふるわしじょうの「略取」という言葉に、降鷲重工業保安部の榛名はるなが、公爵に声を上げた。

「お前が……お前が、リョウを殺したのか!」

 山城やましろの胸にすがって泣いていた若い女性だ。

「フッ! なんじのような式典にそぐわぬ者など――グッ!」

 榛名の細腕が、公爵〈土の上級魔術師アース・アークウィザード〉カクマリクマの太い首を締め上げた。

 榛名の素早い動きに、衛兵も身動きできない。不用意に近づけば、公爵の首を容赦なくし折るだろう。

ったのか、ってないのかって話。聞いている? この国も沈黙は同意なのかしら?」

「えっ? えっ?」

 カクマリクマが必死に視線を送るが、新人のヴェイミンにはその意味は教えられていない。

「ひっ、控えよ! こちらにおわす御方は、宮廷魔術士にして元老の――グッ!」

 榛名の左手が、ヴェイミンの喉を掴んだ。

「このバカがったのは知っている。わたしが見返したとき『あちゃー』って顔してたんだからね。それを、お前は、止めるのか? え?」

「あいや、待たれよ」

 場外から、口髭くちひげロマンスグレイの王国宮廷魔術士が仲裁に入った。

 榛名は「あっ、イケメン」と思ったが、手を緩めることはなかった。

「わたくしは元老院議長、〈闇の上級魔術師ダーク・アークウィザード〉カクナロクナ。異世界より来たる皆さまに、最大の敬意を」

 たぶん、この国では王族に並ぶほどの敬意を表す謝罪をしたのだろう。深く頭を下げている。

 だが、恋人を失った榛名がそれで止まることはない。

 両手に宮廷魔術師の首を従えつつ、なおも頭ひとつぶん高いカクナロクナを見上げた。

「わたしは、リョウを殺された」

 榛名は事実だけを告げた。

 年下の女性の冷たい視線に、元老院議長が震え上がった。

 ヴェイミンが「〈魔眼(マジックアイ)〉――異世界人だ」と呟いた。

「二人で話そうか? 元老院議長殿?」

 降鷲が、小娘に怯えるカクナロクナに笑いかけた。




評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ