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また、3人称なのか1人称なのか時折分からなくなるかもしれませんので、御了承下さい。
「あーぁ・・・つまんないなぁ・・・。」
そう言って彼、神埼康也は両腕を空に向けて背伸びをする。現在彼は私立大学の講義を終え、帰宅中だ。
彼は常に人並み。どんなに努力しても、結局は中途半端だった。
容姿も、運動能力も、学力も。喧嘩だってほとんどした事無いが、おそらく弱い部類に入る。
「はぁ・・・。」
康也は溜息を吐く。結局自分は大勢の中の一人、社会の中では歯車の一部にすぎない。しかも、無くなってもなんら問題の無い歯車だ。
なんら問題の無い歯車の方が責任の押し付け合いや嫉妬があまり無いし、ある程度の幸福な人生は送れるだろう。けれど、康也だって一応男だ。少しくらい夢を見てみたい。表舞台の大きな舞台に立ってみたいという欲望くらいある。
「けど、結局無理なんだろうなぁ・・・。」
この世に産まれて19年、何処まで行っても半端だった自分だ。そんな事天地が引っくり返っても起こりうるはず無い。それに、もし起こったとしても自分には無理だろう。そんな度胸は無いし、今までそういった事をしてこなかった為、圧倒的に経験が足りない。そんな人間が上に立っても、邪魔になるだけだろう。
「・・・ん?」
ふと、彼は周りを見渡す。いつもの帰り道、いつも通る商店街なのに何かおかしい。少しずつ客足が減り衰退しているとはいえ、まだ夕方のこの時間帯は騒がしいくらい賑やかなのにやけに静かだ。
「おかしいな・・・、みーちゃんもいないし・・・。」
康也によく懐いている猫であるみーちゃんは、商店街にある本屋で飼われている猫だ。いつもここを通ると俺の近くにすり寄ってくるのに・・・。
「んー・・・?」
先程まで人がいたような生活感はあるのに、今は康也以外誰もいない。
やはり何かおかしい。人の気配とかそんなものは感じ取ることなんて達人の真似事など康也には全く出来ないが、康也の直感がそう告げている。
その時、康也は視界の端にあるものをとらえた。魚屋の前にある袋だ。
「これ・・・買い物袋?」
中身を確認すると、食材が入っている。今晩の夕食なのか新鮮な食材が入っている。商店街の八百屋や魚屋のレシートも一緒に入っていた為、康也はそれを見る。
「4時18分・・・。」
俺は自分の腕時計を見る。現時刻は4時38分、俺がこの商店街に来たのがおおよそ4時半頃。俺がここに来る5分~10分程度にはここに人がいたということになる。
なのに今は誰一人としていない。
「んー・・・警察、呼んだ方がいいか・・・。」
よく分からないが、只事じゃない。自分の好奇心を満たすような真似をしてこの状況を放置するわけにもいかない。というか、さっきから嫌な予感がする。
そう思い、俺が携帯を取り出そうとするとガチャンと何かが割れるような物音がした。その方向に目を向ける。康也以外に人がいないので、音がよく分かる。骨董品屋がある方向だ。
「何だ・・・?」
背筋がぞわぞわする、まるで悪い事が起きる前兆のように。
そしてそれは現実になる。




