017 ブサメンは、身包みを剥ぐ
さて奴隷を手に入れた訳だが…それよりも財産の方が気になるじゃんね。
「では貴女達の活動拠点に案内してもらえますか?」
俺に見せてちょうだい!君たちの財産はこの超絶不細工の中年野郎の血と肉となり骨となるのだ。
「了~解…」
「はい、ではついてきてください」
二人はバツが悪そうに視線を泳がせる、そうだよな、身ぐるみ剥ごうと思ったら全財産を失って奴隷とか割とシャレにならない精神的ダメージだよな、まあ少しくらいなら都合してやっても良いよ、とその前に。
「立ち止まって下さい、これから魔術を掛けますから」
二人の顔が険しくなる、ナニ、また魔術掛けんの?みたいな。
「翻訳と防疫、角に幻影魔術、肌に色を変える魔術を掛けさせて下さい、このままだと人間のテリトリーに入れないので」
二人の顔が綻ぶ。良いんだよ、これ以上どうこうしようとは考えていないから。
ちゃちゃっと魔術を掛けた、これで彼女達は角が他者からは見えなくなり肌は墨汁の様な黒からやや薄い褐色程度の濃さの色になった…様に調整したんだが、蒼髪の子は真っ白けになってしまった。
「これでおしまいです、さあ行きましょうか。ところで赤髪の方がルカさん、青髪の方がルサさんで間違いありませんか?」
歩きながら問う。
「そうだよ…」
「ええ」
意気消沈と言った声で呟く。彼女達に引き連れられて二時間と少し歩いた。
塒だ、周りの木々に囲まれた窪地に木だけで出来た窓のない小さい家がポツンと建っている。
「ここで合っていますか?嘘は…ああ、つけないんでしたね」
女の子のお部屋にインだぜ!生まれてから初めての体験だ。
びっくりしたのは人間の燻製があるところ、まあ野生動物よりは肉が柔らかそうだもんな、見なかったふりをして待ち受けるであろう財産に胸を躍らせる。
金貨に銀貨、銅貨が纏めて袋毎に入って放置されている、金貨は一体何千枚有るんだ?そう思わせるだけの量がある。
銀貨も銅貨もまるっと頂いてしまおうじゃないか。
「それ見たことか、人間を燻製にして食べるなど…おおよそ獣畜生の行いではないか!」
サリアが言葉を荒げる、まあそれが真っ当な感覚なのだろう、俺もちょっとは驚いたぜ。
「罪を償うチャンスを与えましょう、光を求めて前進する限り人の魂が真に敗北する事は無い、ですよ」
珍しくサリアが怒っていらっしゃる、おそらく今まで彼女に対峙した人間は例外なく命を落としていないのだろう、それが今の怒りの源泉なのだろう。
「…まあお前が何もしないと言うなら何もしない、私自身、褒められたような生涯を送ってきたつもりは微塵も無いからな」
折れてくれたか、まあ人を殺しているのは半ば覚悟していたけど、よもやヒューマンをモグモグしているとはなかなか考えられないからな、彼女達に本当のお肉と言う物を食べて更生して頂きたいところ。
「ではお金と必要な物を運び出しましょうか、俺は外に出て門を開いておきます。何度かに分けて運び込みましょう」
塒から数歩ばかり出て魔法を行使、日本の賃貸へと通ずるゲートを開く、すべてを飲み込む漆黒の門が眼前に展開される。
それから運び込む物をチェックして全員で金銀銅貨をえっさほいさ。
本日最大の目玉は金貨約七千枚、これを向こうで上手く金に換えられたら…言いようの無い感覚が腹の中をグルグルと駆け回る、まだ金になってすらいないと言うのにどうだ。所で山賊って儲かるんだな。
賃貸に荷物を運び込んだりしていると夕方になった、彼女達の犠牲者は塒から少し離れた場所に骨が纏めて埋葬してあるのだという。新しく穴を掘って燻製にされた性別不明の燻製を横たえ土を被せる、今度生まれて来る時はもうちょっとマシな死に方が出来ると良いですね、目を閉じ合掌。
塒に戻って来た我々は日本の賃貸に帰るべく用意を進めた、毛布を持ち込みたいと言われたが衛生上の観点からこれを却下、君たちにはブサメンの腋臭が染みついた毛布をプレゼントいたします。
用意も終わったので再びゲートを開いて全員でそれを潜る、途端に賃貸が狭く感じるのは実際に賃貸が狭いからだろう。
サリアが入浴の方法をルサルカ達に教える、俺は美女たちの残り湯を頂こうと言う算段だ。
でも彼女達風呂には入った様子がまるで無いから残り湯は臭いかも、まあ一番臭いのは加齢臭と腋臭を兼ね備えた俺なんだけどね。
彼女達が上がったので俺も風呂に入る、ああ、狭いながらも落ち着くな、人も獣も虫も自らの巣を持っている、それは類人猿が生活したのだという洞穴だったり、野兎が掘る巣穴だったり、クモが張り巡らす巣だったり。
美女と美少女の残り湯にまだ玩具を与えてすらいない息子がビルドアップ、しかし鋼の自制心でもってそれを抑え込む、残り湯に欲情して射精とか完全に変質者じゃんね。
風呂から上がって髪を乾かしてゴムで止めて鏡を見つめる、ほんとブサいよな、コイツ。
でも異世界じゃイケメンなんだよな、彼女達から熱い視線を顔と股間で受け止めている、俺みたいなブサイクはなかなか存在しない。異世界にも居ない、あ、まてよ?エルフが確かそうなんだっけ?サリアと初めて会ったときにちょろっと聞いた。
チート以外に取り柄のないブサメンだが何とか日々を生きている。希望は出来た、これから一歩一歩歩んでいこう。