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016 ブサメン、再びの異世界

 異世界の樹に突き刺したペグの魔力の波動を頼りに異世界へと通ずるゲートを開く、準備は万端、彼女にアイコンタクトなどしながら先に行ってもらう、ブサメンは彼女のスレンダーなお尻を眺めながら異世界へとエントリーする。

 さして音の無かった古臭い貧乏賃貸から森の中に少しばかり開けた場所となる、何某とも知れぬ生き物の鳴き声や小動物が獣道を歩く音などが聞こえて来る、ああ、また来た。そんな感情が胸の中を去来する。

 

「…便利な魔法だ、これ一つでどんなものでも運べるのだとしたら途方もない価値が有るだろうよ…」


 サリアがヨイショしてくれる、貰い物の力でも嬉しい、いや、貰い物だから嬉しいのかな?

 

「では人里までの案内を頼みます、道中気を付ける点などありますか?」


 ブサメンはいつも通りのいつも通りなわりかし低めな態度で彼女に接する。

 

「…ん、先ずは山賊だな、私ほどではないが手練れの山賊がここいら近辺で活動していると人間の冒険者が言っていた、開けた場所では注意した方がいいだろう。後はお腹一杯になるまで飲んだり食べたりしないこと、それと足が痛くなる前に必ず休息を取る事、まぁこんな所だ」


「山賊、ですか」


 髭ぼうぼうの体臭のキツイ熊のように厳ついおっさんが頭の中に現れる、これでブサイクだったらまんま俺じゃん。

 そろそろ髪を切ったり髭を剃ったりした方が良いのかもしれないでもなぁ、髭剃りだって散髪だって生活保護時代では贅沢品に相当するであろうからやっていない、俺ってば剛毛だから髭剃りの替え刃は一週間で四百円とかマジで懐にダメージ大だし、散髪も一か月で二千円、馬鹿には出来ない金額だ。

 だから前髪と後ろ髪は後頭部でゴムで止めてポニーテールにしてある、B専のおっさん好きの人には受けるかもしれない、でもB専って言っても限りがある、俺のブサイクさ加減は母方のおじいちゃん譲りだ、彼もまた俺に負けず劣らずのブサイクだった、美醜が逆転している異世界なら稀代のイケメンとして名を馳せていただろう。

 

 現実逃避は止めて歩き出そう、はぐれたら割とマジで洒落にならんよね、途中休憩など挟んで三時間ほど歩いた、サリアがふと囁く。

 

「どうにも追われているな、数は二か…」


 山賊さんのエントリーだ、美少女とは行かないまでもイケメンやショタが望ましい、ところで盗賊って倒したらどうしたら良いの?首とか取って治安機関に渡せばいいのか?サリアに訪ねてみる。

 

「…そうだな、生け捕りにして渡せば多少の金にはなるだろう、だが死んでいても手配されていれば金は入る、最悪は首だけでも良いぞ」


 シビアな世界観だな、伊達にファンタジーしてないって事だな。

 

「次に開けたところまで歩いたら休憩にして、そこで山賊たちを相手にしよう」


 そうだな、彼女は剣士。木々が生い茂った所では体術しか振るえまい。


「はい、わかりました。そのようにしましょう」


 山賊の襲撃に備えつつえっちらおっちらと歩みを進める。



 開けた場所に着いた、荷物など降ろして軽くストレッチを行い飲み物を飲む。

 

「それにしても革の味がしない飲み物というのは良いな、木樽だとそれもまた独特の匂いがあるしな」


 貴重な異世界トーク、そうだよなぁ…現代の水筒みたいにパッキン外して塩素で消毒って訳にも行かないよなぁ。


「ああ、やっぱりそういうのあるんですね」


 こういう話マジで好き、俺も異世界かぁ…童貞捨てる前に異世界かぁ…


「まああまり飲みすぎても戦闘に差し障りがあるからこの位にしておこう」


 サリアはそう言って俺と出会う前から愛用している袋にペットボトルをしまい口を閉めて縛る。

 

「…弓兵が一、地上が一、この人数、余程自信がると見える。シュウイチ、私にも魔術をかけてくれ」


 筋力増強、各種属性耐性上昇、防御壁の順で良いかな?


「了解しました、保護系の魔法と各種能力増強で良いですか?」


 素早く脳内スキャンで該当するものを検索。


「しかしその年でどうやってそれだけの魔術を学んだんだ?まだ40にもなっていないだろう?」


 異世界テンプレ通り普通に生活してたらもろうたで。


「向こうで美女を介抱したんです、何でも神様だったらしくて…」


 最高神らしい、創世神らしい、美女だった。


「神様?…話を遮って悪いが襲撃だ、魔術を早めに頼むぞ」


 そう言うとサリアは鋭く飛来してきた矢を居合で打ち払い続いてナイフを抜いて二つの鞘を見失わないように下草の薄い地面に放り投げる。素晴らしい反射神経だ。

 魔術を無詠唱化して自分とサリアに魔術を掛ける、これでドラゴンのブレスも扇風機の風に等しいって物よ。

 

「樹上の弓使いをやれ、私は地上の奴をやる!」


 そう言うが早いか駆けだして行った、もう一本矢が来る時にどこから来るか確認するとしよう。木の多い場所だから火は駄目だな、氷柱を百本ばかり生み出して射出を待機、詠唱魔術だとこうは行かない。

 

 弦の弾ける音を聞きそちらに体を向け氷柱を全てリリース、当たっていないまでも牽制になれば良い。

 飛んできた矢が自らに当たる寸前、カランと音を立てて停止、その後慣性に従い足元へと落ちる、矢が飛んできたのはサリアが行ったのとちょうど反対方向だな。体を飛行魔術で浮かせて矢の飛んできた方向へと飛行していく。

 

 山賊は樹上でギリースーツみたいな被り物を脱ぎ捨てるが早いか弓を置き飛び降りながらマチェットを抜き放つ。黒色肌蒼髪の…あら美人さん、だが俺はもっとロリロリしてる方が好みなんだ。

 

「全財産と身ぐるみを置くか、死んで燻製にされるか?どっちにします?」


 ドンピシャ。この美人さんは盗賊ぅ、ですかね。

 

「死にたい方はどうぞ、先着順となりますので」


 会話しながらバフをもう何種か掛ける。


「魔術師、ですか。厄介だがどうにかできない相手じゃありませんね」


 それはどうかな?試してみるか?


 氷柱を三十一本ばかり生み出して体の周りに待機させる、狙いを見定めて順番に打ち出す。

 勝利を確信した次の瞬間彼女の体がブレる。サリアと言いこの人と言い、こっちの世界の亜人なのか魔物なのかは知らんけど出鱈目に身体能力が高いな。

 

 アッというまに三十一本の氷柱は木立の中に消えて行ったか砕かれてしまった、やりおるな。

 次は細めの氷柱を三百五十本生み出す、こいつは並みの方法じゃ打ち取れない。同時に数本射出しないとな、順番に一本ずつでは防がれてしまうのがオチだ。無限に近い魔力と言っても無限ではない、消耗戦になれば負けるやもしれん。

 五十本ばかり同時射出して彼女のバランスを崩す、これはいけるな、五本×十セットを意識して射出する。じきに限界が来たのか左もも、右肩、みぞおちに深々と氷柱が刺さり。そこからじわじわと凍傷が広がって行く。

 やったね、こいつは生け捕りに出来そうだ。

 

 サリアの方を見るともう既に終わっていた、黒色の肌の赤髪の女性を運んでこっちまで歩いて来てる。

 

「…生け捕りにしておいたぞ、治療すれば助かるはずだ」


 彼女は、猫が狩ってきたネズミを放る用に適当に地面に叩きつけた。


「有難うございます、では治療を始めますか」


 赤髪の美女に歩み寄り癒す、これで命は助かるだろう、降って湧いたおこぼれのオマ〇コ、頂いてもよろしゅうございますか?

 

「やりやがったな…ぜってーやり返す」


 息も絶え絶えに赤髪の彼女が吼える、治癒魔術スタンバイOK…回復開始だ。

 

「これは…!」


 赤髪の彼女が驚いた様子で体を確認する、裂傷、打撲、骨折が治り傷が塞がり、何も無かったかのように肌に色が戻る。

 次は蒼髪の彼女にヒーリング、内臓が粗方凍っているみたいだから時間がかかるかな?

 思ったよりも時間は掛からなかった、治癒魔術を使っていると習熟度的な何かが上がるのかもしれない。

 

「…これはかなりの業物だ、修復してくれるか?」


 彼女がズイと差し出してきたのは二本の山刀、これと言った装飾は無いが刃が厚く切れ味も鋭そうだ、早速魔術で修復、僅かに入った刃毀れや撓んでしまった刀身があるべき姿を取り戻していく、でも異世界産の物だ、現代の特殊鋼で作られたナイフとは比べ物にならないだろう。まあタダで手に入ったし良しとしましょうか。

 

「…これは私が使う、お前にはこれを返してやろう」


 そう言って突き出された手には刃無しの日本刀とナイフが。いや、要らないからね。

 

「それでは事情聴取と行きましょうか、サリアさん、彼女達が逃げない様に見張りをお願いしますね」


「分かった、任せてくれ」


 さあ、では盗賊退治後のご褒美タイムと行きますか。


 サリアが見せつけるように刃物を両肩に乗せる、少しでも動いたら首をすっ飛ばすと言う意思表示だろうか?

 

「どうもこんにちは、ご機嫌いかかですか?」


 いつも通りのいつも通りな態度で挨拶をする、イケメンに見えてるらしいからいつもの喋り方で構わないだろう。

 

「アタシ達は負けた、施しは要らねぇ。一思いに首を掻き切れ」


赤髪の彼女が噛みつかんばかりに一気呵成に言葉を紡ぐ。


「死にたくないけど…仕方ない、来世は美女に産まれたいねぇ」


 蒼髪の彼女はほのぼの、しみじみと呟く。


「…こう言っているがどうする?」


 サリアが怒り心頭と言った表情で詰め寄る。

 

 そもそも何故山賊などしていたんだ?疑問に思うからサリアに尋ねてみる。

 

「…それは我々魔物や亜人はこの大陸の人の生活圏に入れないからだ、塩が無いと死ぬ」


 ほうほう、それで山賊などしていたのね。でも塩かぁ…一キロ千円で買えるものが重要なライフラインとは…この世界は思ったよりも文明が進んでいないのかもしれない。

 

「うーん、どうしよっかなぁ…命乞いしようか、どうしようか…」


 赤髪の彼女はそれほど死を恐れていないようだ。


「私たち顔は悪いですけど…その…多分、その、殿方を悦ばせられると思うんですけど…ですけど…」


 命乞いふ〇っく、良いな。

 凌辱異世界モノだと姫騎士に竿役が群がってって感じ、ああ。

 俺の見た目まんま竿役じゃん。


 うーん困ったな、命を取ろうとか首を刎ねようとかは全く考えていないんだけれども。

 山賊してたってことは幾らか金持ってるよな?

 どれだけため込んでるか知らんがまるっと頂いてしまおうじゃないか。

 

「では財産は全て没収の上奴隷になるので構いませんか?」


 我ながら言ってることが物騒だ、これでは悪役だよ。

 

「あークソ、シクった。死にてぇ」


 新幹線を停める前のローン持ちリーマンが浮かべる能面みたいな顔で赤髪の彼女が言った。


「あれ?これ…ひょっとして助かる感じ?」


 蒼髪の彼女はちょっとだけ嬉しそうだ。


 ではちゃちゃっと魔術を掛けよう。

 最適な魔術を脳の中から引っ張り出す、隷属魔術、これで良いや。

 

「我が意に従え、一切の反抗を禁ずる!」


 魔力が拘束具となり二人に絡みつく、これが解けるのは彼女達が魔術を受け入れた時だけだ。

 数秒と経たぬうちに彼女達に絡んでいた魔力は霧散した、隷属魔術の面目躍如といったところか。

 

「命令を与える、自分で思考し行動しろ、何かある時は許可を求めろ」


 奴隷ゲット。奴隷のものは主人ものと言うし、一発ずつちょっとなんかチョメチョメ行為がしたい。


「はいはい、適当にやりますよっと」


 悪びれることなく投げやりな態度で赤髪の彼女が言った。


「ご主人様…夜のご奉仕…しちゃいます?」


 蒼髪の彼女は嬉しそうに淫靡な笑みを浮かべた。

 

「俺を呼ぶときはお前、とかアレ、とかは勘弁して下さいね、俺はシュウイチ、如月宗一です」


 新米奴隷とご主人様かぁ、字に起こすと割と悪くない気がする。

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