2896→2018 仕事開始
蕎麦を食べ終えたナナシはポケットから酒瓶を取り出し、中身を飲み始めぼーっとつかの間の休息を謳歌している。
だがそんなのは病魔には関係無い、気づけばザルの代わりに一通の手紙。
「薄給で休みなしとかブラックだなぁ〜」
一人ふざけて手紙を開くと彼の体は折り紙の様に変わり、手紙の中へと吸い込まれていった。
そして彼の居なくなった後、手紙はゆっくりと独りでに広がりザルへと変わっていくのだった。
所変わり謎の空間。
神社の様な建物の舞台に三人の女性。
皆が皆狐の面を被り、宮司の様な出で立ちで正座していた。
「よく来ました我等が子よ」
「今宵、貴方には使命を授けます」
「病魔覆滅の日まで」
「ケッブラック雇用主が何を言ってることやら
なら狐金貨の一枚でも寄越せや」
三人は老婆とも幼女とも、そして妙齢の女性とも取れる謎の声。
それに出で立ちや気配もその通りで頭が混乱してくる。
だがナナシは慣れているのか全くもって気にする様子が無く、悪態をつく。
「今宵の患者は2018年4月の日本」
「枝分かれした世界です」
「は?まぁ、日本なら前回もだし言語は問題無いなぁ」
「しかし枝分かれした日本は日本であって日本にあらず
貴方には三つの使命を与えます」
「あ?」
「一つは自身で生計を建てること」
「いつも通りじゃねえか」
「一つは活動は夜のみ」
「それもだな……まさかボケたか?ならさっさと引退して消滅しろや」
「一つは西の支部の者と共に行くこと」
最後の言葉を聞くと唖然とし、右の人指し指でこめかみの方でクルクルと回しパーへと変える。
どうやらこれは異常らしく、ナナシは3人に向かい頭がイカれたかと本気で思ったそうだ。
「入りなさい」
「失格します」
「こ、このおっさんがか?」
三人が同時に声を出すと小学生くらいの女の子を連れた熊の様な男が入ってきた。
背中には身の丈(2メートルオーバー)を超える大剣を背負い、女の子と手を繋いでいる。
「L・L、彼が今回の共です」
「そうですか……坊主、俺は位ノ捌L・Lだ
こいつは俺の娘のリップスだ……」
「はじめましてかっこいいおにいさん、リップス・エルドルムです」
「お、おう?俺はナナシだ、よろしくなお嬢さん」
まともな挨拶に困惑しつつ、何とか返答するナナシ。
リップスの言うとおりナナシは外見だけは悪くない、だが性格があれなのであまり人には好かれない。
それにこの世界でマトモな挨拶をするほど真っ直ぐに育つ存在が居るとはと、予想外が続きつい困惑してしまったのだ。
「坊主、位は?」
「参だけど」
「ならオメェさんは索敵だけだ」
「あ?」
L・Lはナナシの位を知ると索敵しかさせないと言った。
位と言うのは一つの実力の物差しで、ナナシの様な参は普通であれば戦闘はさせない。
主に戦闘を行うのは伍以上の人物だからだ。
L・Lの言葉から分かる通り今回は戦闘があるのでナナシには深く関わらせない、その優しさだろう。
「はん……ご自由にどうぞってな」
「そうさせてもらう」
「話は決まりましたか」
「では行きなさい我等が子よ」
「時の病みを祓いなさい」
三人の言葉を最後に施設から締め出された三人は目の前に突然現れた襖に木札を刺した。
『20180421』と書かれたそれは少し時間が経つと光りそして消滅、三人は襖を開きこの世界を発つのだった。
ナナシ
過去の記憶を失っているので名無しの権兵衛からとってナナシと名乗っている
一応イケメン呼ばわりされる側の人間だが性格が悪いので好かれては居ない
L・L
熊の様に大きく毛深い男
外見とは裏腹に若い者に散ってほしく無いので常に前線へ出ようとしている
あの世界
彼等の本拠地でありあらゆる世界、時代へ向かえる場所
彼処は極東支部と言うらしく住人達は『ヤマナム』と呼んでいる
感じでは病無無と書く
彼等
倒治師と呼ばれる存在
だがこれは東洋翻訳された言葉であり他の支部や時代では違う呼び方がされている
言葉
違う世界、違う時代出身の者のみで固められたこの組織はとある薬剤を用いて己の母国語へと変化させている
そのため全ての名称はあくまでもナナシ視点での呼び方なのでもし視点が変われば名称も変わる
金銭
狐硬貨と呼ばれる物であり仕事の報酬として渡される
金銀銅の三種に分別されるがヤマナム以外では価値が全く無い存在