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8.西の海へ

キキには不思議なことがあった。

胸のペンダントが何かにつけて西側へ行こう行こうとしているのだった。

東へ行こうとするとペンダントが光り始めて身体全体が少し引っ張られるのだ。

夢の中でも紫色のクラゲみたいな生き物が出て来て優しそうな目で見つめている。

ヒトが死ぬ前に話してることはわからなかったが、

もしかしてこの事を言ってるのかもと直感した。

みんなに『西の海へ行こう』と誘っても、

『危ない海だから殺されてしまう。もう少し大人になってからにしようよ』と言われて、なかなか決断がつかなかった。

キキは夢の中に出てきたお母さんみたいな眼差しの生き物が悪い生き物と思えなかった。

リリはフジに帰りたがってるし、シロやカクやシャーも大人達から行くなと言われているため、キキの言葉に耳を傾けなかった。


そんな時、昔お父さんから言われた言葉を思い出した。

『自分が正しいと思う事をしなさい。

 たとえそれが一人でもしなければいけない時はそうするべきだ』

キキは早起きして、みんなには告げずにそっと西の海へ向かった。

しばらくするとみんなの声が聞こえてくる。

『キキ―、どこにいるの?』

『キキ、危ないから戻っておいで』

とみんなが心配している声が伝わってくる。

キキはみんなに『ごめんね。私はペンダントの声に従うわ』と声には出さずに謝った。


一路西の海へ向かう。

煙の吐く高い山の島が見えてきた。

近づいていくと水の中を鳥の様に泳ぐペンギン達に会った。

お母さんペンギンは子供達のご飯のために必死で魚を採っている。

「こんにちわ。キキです」

「あらっ?イルカの子ね。ここらでは珍しいわね。こんにちは」

「皆さんのお家はこの島ですか?」

「そうよ。ペンギン王国と呼ばれているわ。

 サメやシャチとかの敵はみんなでやっつけちゃうから近寄らないわ」

「皆さん、お強いんですね。紫色のカニとか怖いじゃないですか?」

「ああ、あいつらね、あいつらは水中では動きが鈍いし、

 すぐに陸に上がってくるけど陸では私達がもっと強いから」

「他に怖い敵とはいるのですか?」

「なんでそんな事を聞くの?

 あなた、もしかして・・・」

「はい、西の海に行こうと思ってるんです」

「・・・うーん、危ないから止めた方がいいけど、何か理由があるのね?」

「はい、このペンダントが私を西の海へと導いているのです。

 北側にあるトキオに住んでたヒトに貰ったんです」

「ああ、あの赤と白の岩が立ってる海の島ね。

 山が噴火してヒトとかみんな亡くなったって聞いたけどねえ」

「ええ、そうなんです。

 最後まで生きていた優しいヒトから貰ったんです」

「その紫色のペンダントがねえ。でもその光は優しい光に見えるね。

 そうだ、私達の指導者に会わない?

 もしかしたらあなたのこれからがわかるかも」

「よろしいですか?ありがとうございます」

「じゃあ、もう少し待ってね。もうじきご飯時間も終わるから」

「はい、私もご飯にします」


ペンギン族の王様は皇帝ペンギン族で身体が大きかった。

王様は陸地でキキと面会した。

「キキさん、まだ子供なのに危ない所にいくんだな」

「はい、このペンダントが西の海へ行けと言ってるんです」

「ふーむ、それはヒトから貰ったと聞いたが、

 本当にヒトの物なのかどうかはわからないぞ。

 実はサメやカニの捕虜から聞いたところによると

 紫色の宝石のペンダントを探せと命令されているらしいぞ。

 わしのこの首元の綺麗な宝石と間違えて襲ってきたから

 動きに優る我が精鋭の兵士が奴らを撃退したがな」

「もしかしてこの宝石を探してるんですか?」

「そうかもしれんが、違うかもしれん」

「私の夢の中には

 紫色した優しい目元のクラゲみたいな生き物が出てくるんです」

「クラゲ?・・・奴らのボスも他の星から来たクラゲと聞いたぞ」

「えっ?そうなんですか?」

「おお、確かカニ将軍という逃げた弱い奴がほざいておったが」

「・・・そう言えば、カニ将軍が

 南の海の戦いの時にそんな事を言ってたような気がします」

「おお、それでカニ野郎は?」

「イッカクの角に串刺しにされて、

 太陽に晒されてカラカラになって亡くなりました」

「あんなにうまく逃げられる奴でもそんな最後だったか。

 でもあいつは我々一族だけでなく多くの生き物を殺しているから仕方ない」

「でも何か可哀想でした。私は誰でも傷つくのを見るのは嫌です」

「まあ確かにな、あやつの上にはサメ将軍やイカ将軍がいるから

 あやつも家来になるしか無かったのかもしれんな」

「でも悪いことはしたらいけないですよね」

「おう、我々も子供達を守るためにあいつらが攻めて来れば戦う。

 そうだ、我が兵士と一緒に西の海へ行きなさい。

 我が兵士は強いから安心しなさい。

 君の様な子供イルカだけでは心配だからな」

「ありがとうございます。不安な気持ちが無くなりました」

「では、今晩はゆっくりとこの入り江で休みなさい。

 今晩は盛大なパーティーをするから出席して欲しい。

 明日太陽が出る頃に出発しなさい」

「何から何までありがとうございます」

キキはペンギン族のパーティーで美味しいお魚や初めての物を食べた。


目が覚めるとキキの隣にペンギン族のペン隊長が立っている。

「さあ、キキ、西の海に出かけよう。

 結構小さな島があるから隠れながら近づこう」

ペンギン族は30匹と言う大きな部隊で全員鋭い目をしていた。

しばらく泳いで行くと

急に目の前の海面が盛り上がり小さな島が出現した。

「おや?ペンじゃないか、どこに行くんだね」

「ああ、カメキングさんじゃないですか。久しぶりですね」

「うん、この星を1周してきたところだ、大変な事になってるな。

 この星の生き物がすごく減ってきている。このままではいけない。

 わしにはあの毒は効かないから心配はしていないが・・・。

 あれ?このイルカの子は?」

「はい、この子が西の海に行くというので我々が同行してるんです」

「こんにちは、私、キキっていいます。カメキングさんですか?」

「ああ、こんにちは、西の海は子供には危ないよ」

「そう聞きましたが、このヒトから貰ったペンダントが呼ぶのです」

「ああ、その紫色の綺麗なペンダントがねえ。不思議な話だね」

「どうも奴らが捜しているペンダントかもしれないのです」

「それならそんな危ない物は身体から外すべきだね」

「そうですけど、このペンダントはなぜか離れないのです」

「うーん、もしそれが奴らの探してるペンダントなら『星の雫』とか言ったかな?」

「『星の雫』ですか・・・綺麗な名前ですね」

「カニ野郎に聞くと、あいつらのボスの一族を導く宝石と言っていたな。

 その宝石には心があると訳のわからない事を言っていたが・・・」

「良く夢には出てくるんです。紫色の優しい目をしたクラゲの様な姿が・・・。

 でも、このまま行けば捕まって私は・・・」

「どうなるかはわからない。どうしても行くというなら私が一緒に行こう。

 私の背中に乗って居れば、ペンギン達も疲れなくていいだろう。

 それに私が居ればサメやタコやイカの兵隊は近づかないから安心しなさい」

「ありがとうございます。ペンギンさん達も一緒に来て頂いてとても嬉しいです。

 実は一人で心細かったんです」

「そうだろうね。でも私達が居ればあなたは大丈夫だから安心しなさい。

 では、みんなわしの背中に乗って休んでいなさい。さあ行こう」

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