2.ヒトとの出会い
キキは長老のジジへお父さんやお母さんは、
いつも長い間どこに行ってるのかを聞いた事があった。
キキ達が生まれてすぐくらいに、
夜がお昼になった日に大変な事件が起こったらしい。
キキには少し不安になった記憶があったので覚えていた。
空から大きな石が遠くの海に落ちて、
その海は毒で一杯になり生き物がたくさん死んだらしい。
どうやらお父さんやお母さんは遠くの海に出かけて、毒の水が来ない様に頑張っているらしい。
キキ達も大人になったらお父さんやお母さんの様に頑張るんだと思っていた。
子供だったキキ達も安全なこの島で色々な事を学び身体も大きくなり
外海から隔絶されたこの島の壁をジャンプで超える事が出来るようになった。
大人に一歩近づいた証拠でいよいよ冒険の始まりだった。
ある満月の夜、満潮で海面が高くなった時にお友達のリリと一緒に出発した。
途中までお父さんやお母さんと一緒だったが、
お父さんとお母さん達は、この海を救うためのお仕事があるのでそこで別れた。
キキとリリはまず北へ向かって泳ぎ始めた。
碧く広く深い海が無限に広がっている世界だった。
そんな時、少し離れたところの海面から水が吹き上がっているのが見えた。
二人は急いで近寄って行くとそこには身体の大きな生き物がいた。
「やあ、君たち、初めまして僕はクジラ族のシロだよ。
これからどこに行くの?」
「私たちは初めてこの世界へ出たの」
「へえ、そうなの?
もし良かったら僕と一緒に行かない?」
「いいんですか?
私達は何も知らないので一緒にお願いしたいな」
「良かった。一人で寂しかったんだ。ありがとう」
「こちらこそ、ありがとうございます。私はキキ、この子はリリ」
「リリです。シロさん、よろしくね」
「そんなに固くならないで、もっと気楽に行こうよ」
「うん、わかったよ。じゃあ、キキ、リリ、シロと呼ぶ事でいいかな?」
「そうだね。そっちの方が僕はいいな。キキ、リリ、よろしくね」
大きな身体のシロがいるのでサメなどの敵は近づいてこないから安心だった。
しばらく北へ泳いで行くとジジの言ってた
大きな赤と白の二本の尖った岩のある場所『トキオ』に着いた。
紅い岩はよく見ると表面にサンゴや海藻が付いてる岩ではなく、
硬い細い真っすぐな物が組み合わさっているのがわかった。
クジラのシロがぶつかってもびくともしないくらい固かった。
海底に潜っていくと四角の穴が開いた四角の大きな岩がいっぱい転がっている。
ここはキキ達が育った島の海底とは全く違っていて不思議がいっぱいだった。
島は大きな岩とサンゴしかない世界だった。
しかし、ここの世界は四角の岩や細長い岩がずっと繋がっている。
その上には四つの丸い物の付いた岩がたくさん転がっている。
その中は透明の壁もあって中が見える。
そこは小魚達の住み家になっているようだった。
「ここって、ヒトが住んでたところって、お父さんから聞いたよ」
「ヒトって、私達のように水の中で生きていけないって」
「そう、だからこの場所にはヒトはいないのね」
「そうみたい。でもヒトってどこに行ったのかしら」
「小さなシマっていうリクで住んでるらしいよ」
「たくさん住んでるのかなあ」
「少ないって聞いてる」
「そうなの?それって寂しいね」
「そうだね。お友達はたくさんいる方はいいよね」
「とても危険って聞いてるけど、本当にそうなのかなあ」
「そうらしいよ。昔から俺たちの仲間は殺されて食べられたらしい」
「ふーん、お魚の方が美味しいのにねえ」
「そうね。でもお魚からしたら私たちに同じ事を言うかもね」
「みんな、仲良くできたらいいのになあ、無理なのかなあ」
その時、
「タスケテ・・・タスケテ」と切羽詰まった声が聞こえてきた。
ヒトの言葉はわからないがとても必死な声だった。
その声の方へ3匹は急いで泳いで行った。
だんだん近づくにつれて高い山のあるリクが見えてきた。
「バシャバシャ」
「タ・・・ス・・・ケテ・・・ウグッ」
そこには溺れているヒトがいた。
キキ達は初めてヒトの顔を見た。
私たちと違って平べったい顔をしていた。
ヒトはもうほとんで意識がないようで目を閉じている。
キキ達は急いでヒトを背に乗せてリクまで運んで行った。
シロの尾びれの力で大きな波を作り、キキとヒトを砂浜へ押し上げた。
そこに他のヒトが走ってきた。
不思議そうにキキ達を見ていたが、すぐに溺れていたヒトを介抱している。
しばらくすると溺れていたヒトは、目を開けてキキ達を見ている。
「ありがとう」と何を言ってるのかはわからないがニコッと笑っている。
キキは溺れていたヒトは助かったようでホッとした。