10.ホオジロ将軍との戦い
ここから西の海はサメ隊長の縄張りだった。
奥に行けばいくほど多くのサメやタコやイカの兵隊が待っている。
そこへカメキングとペンギン軍団、
マッコウクジラ族、シロナガスクジラ族、イルカ族が進んでいく。
小島のようなカメキングを先頭にマッコウクジラ族が続き、
最後尾からシロナガスクジラ族とイルカ族が綺麗な海水を送りながら前進していく。
サメ兵やタコ兵が遠巻きに囲もうと攻めてくる。
サメは常に泳いでいないと酸欠で死んでしまうので
タコと違って一カ所にじっとしていることはできない。
そうなると戦うためには常に前面に出てくることになるが、
シロナガスクジラ族とイルカ族が
一斉に綺麗な海水を流しながら攻めてくるので
サメ兵の身体の毒素が抜けて身体が徐々に小さくなってくる。
それでも逆らえば殺されるため、ホオジロ将軍の命令で一斉に攻めてくる。
サメ兵の大軍が我先にと前線を進んでくる。
ペンギン部隊は、ペン隊長の号令で
カメキングの背から飛び込むと、すばやく泳ぎサメ兵を攻撃し始めた。
ペンギン族兵士は水中をまるで鳥の様に自由に飛んでいく。
サメ兵がいかにすばやく泳ごうとしてもペンギン族にはかなわない。
ペンギン部隊はサメ兵1頭につき複数で
各個撃破の考えで上下左右から目だけを攻撃していく。
鋭い嘴にサメ隊長や強いサメ兵も両目を潰され、
光は無く匂いしかわからないサメ兵達は混乱し始める。
そして辺りはサメ兵の血で染まり始める。
そうなるとサメはその習性から血の匂いに酔い、
興奮してしまい敵と味方の区別もわからなくなり、
近くにいる味方のサメ兵やタコ兵にも噛みつき始める。
その結果、またも辺りは血の匂いがより濃くなり、
サメ兵は更にもっと興奮して再び近くに居る仲間を攻撃していく。
こうなってくるとペンギン部隊が攻撃しなくても勝手に敵は自滅していく。
マッコウクジラ族
「お前達、何をしているのだ。役に立たない奴は死ね」
業を煮やしたホオジロ将軍はその大きな身体を振って出撃してきた。
ホオジロ将軍は、シロナガス族の王様と同じくらいの大きさで、
太古に海に生きていたと言われるメガロドンのような巨大な身体だった。
その鋭く大きな牙に味方のサメ兵でさえも真っ二つにしていく。
血に酔って将軍にさえ襲っていくサメ兵が、
その巨大な身体に噛みついてもその硬い皮膚を通さない。
その尾に齧りついても、軽く振られて吹き飛ばされていく。
マッコウクジラ族もその歯で噛みつくが将軍の硬い皮膚は通らなかった。
それがわかると今度は身体ごとぶつかり将軍の肉体に衝撃を与えて行った。
ホオジロ将軍は、その大きな口と鋭い牙で
カメキングへ攻めてくるが、
首や手足を甲羅に入れると齧りつくことができなかった。
ホオジロ将軍はキキの近くまで来たが、
なぜか将軍にはキキの姿が見えていないようだった。
カメキングの甲羅などへぶつかって何とか手足を出させようとしている。
カメキングは、軽く手足をそっと出しては齧られない様に引っ込めたりして
ホオジロ将軍の意識を下側に向けさせなかった。
ホオジロ将軍はこの巨大なカメキングを倒すことが勝利に繋がること、
いつか息を吸うために手足を出して海面へ出て行くだろうと考えて、
カメキングの手足の出るのを待っている。
ホオジロ将軍がカメキングの腹部の下でゆっくりと泳いだ時、
カメキングから合図が出された。
「今じゃ」
ホオジロ将軍は
まさか自分の様な大きな生き物を攻撃してくる生き物がいるとは思っていなかった。
今まで遭った敵はみんな逃げて行ったからだった。
カメキングにしても牙も無く攻撃してくることはなかった。
その時まで、
じっと海底の深い部分へ潜んでいた全てのイッカク族が
真上へ一直線に
ホオジロ将軍の腹部の柔らかい部分に向かって
その鋭い角を真っ直ぐにすごいスピード泳いでいく。
ホオジロ将軍が、
その異変に気がついた時には、
イッカク族の王様の白く輝く鋭く硬い角が突きささっていた。
「うっ、しまった。だがまだ浅い」
「逃がすものか」
その時、カメキングがホオジロ将軍の上から
手足を使い身体を捕まえてその重い体重を掛けていく。
『ズブズブ』
と大きな鋭い角が将軍の灰色の腹部へ潜り込んでいく。
「ギャー」
何とイッカク族の王様の長い角がホオジロ将軍の背中まで突き通った。
どうやら内臓も突き抜けたようだ。
そして他の場所にもイッカク族部隊の角が次々に突き刺さっていく。
ホオジロ将軍はハリセンボンみたいに身体中が串刺しになった。
イッカク族の角が引き抜かれた時、
真っ赤な血で辺りを染めながら海底へ沈んでいく。
小さな身体のボロボロになったホオジロサメに戻っていく。
「こいつに我々の仲間の多くが引き裂かれて殺された。仇はうった」
みんなは喜んだ。
でもキキは、ジジから聞いた話を思い出した。
「ヒトはサメ族も食べていたらしい。
我々もそうされた。
この海に生きる生き物は全てヒトに食べられていたらしい」
そんな怖い話を思い出しながら、
海底へボロ雑巾のようになって
静かに沈んでいくホオジロ将軍のその姿を見て悲しく感じたのだった。




