1.ドリームアイランド「フジ」
動物物を新しく子供用に作成しました。
残酷なシーンはありません。
絶海の孤島。
朝もやに包まれた島の真ん中には大きな丸い海水湖があり、
その外輪部分はそそり立つ崖で外海からは遮断されている。
ここはイルカ達の楽園だった。
普通の大型海棲生物は出入りすることが出来ない場所で、
出入りができるのはイルカ達だけだった。
それも満潮の時間のみだった。
その時に海水面が上がり、
高い崖の一部分にある亀裂で低くなった部分が外海の海水面に近くなる。
そこの亀裂の大きさは大人のイルカの高いジャンプでのみ飛び越える事ができるのだった。
だからホオジロザメなどイルカ達の敵は入って来ることが出来なかった。
この島の湖はサンゴ礁が生い茂り食料となる小魚も多く、
イルカ達は安心して結婚して子供たちを産み育てた。
そんな中、真っ白なイルカの赤ちゃんが生まれた。
初めての鳴き声が「キキッ」だったので
その子は『キキ』と名付けられた。
白いイルカはここ何代も生まれたことはなく非常に珍しがられた。
遥か昔の伝説では
『白いイルカがこの世を救う』と言われていたらしいが
真偽のほどは確かめようがなかった。
そして生まれたばかりのキキは、
他の普通のイルカと何ら変わることはなかった。
キキの母親ココと父親トトはキキを一層可愛がり
キキの頭の良さとその白い身体を誇りに思っていた。
親が外海へ出掛けている時は、
子供達は長老イルカ『ジジ』の色々な話を聞いて育った。
ジジの話では、
この島は昔「フジ」と呼ばれていたそうで、
大昔、ジジも生まれていない昔、
ここは高い山だったそうで、
ある日、火を噴いて爆発して
山の頭部分が吹っ飛んでこの島ができたらしい。
この島の外にはとても大きな海があって、色々な生き物が住んでいる話も聞いた。
『ヒト』という生き物は、
『ヒ』という熱く明るいものを使い、
私たちの様にたくさんの言葉を話し、
昔はたくさん生きていたらしいが今では少ないらしい。
ヒトは二本の足で動いており二本の手で物を使う。
私達と違って早く長く泳ぐ事ができないから、水の無い『リク』で住んでいる。
そこには四つ足で動く生き物、ケモノというらしい、がいてサメのような牙で襲ってくる。
ヒトはそれらケモノから武器を持って自らを守っている。
この島の外には様々な場所があるらしい。
大きな赤と白の二本の尖った岩がある場所『トキオ』
緑色のヒトの像のある場所『ニューヨ』
岩で作られたヒトの像のある場所『イード』
真っ赤な丸い大きな岩がある場所『オース』
細長い高い山がそそり立つ場所『マーヤ』
海底に多くの長い牙が横たわる場所『シーベ』
海底に綺麗な四角錐の石と座ったケモノの像のある場所『ジプー』など
それらの場所の海底には四角の穴の開いた多くの四角い岩が転がっているらしい。
子供たちは大人達からここで泳ぎ方、魚の取り方など色々と習った。
魚の取り方としては、
魚の姿に向かって『お願い食べさせて』と強く願うと
魚が急にフラフラになって食べることができた。
ジジに聞くと
私たちイルカには、頭の中に『オンパ』と言うものを出すところがあって
強くお願いすると額からその『オンパ』が出て魚をフラフラにするらしい。
ある満月の夜、
キキは美しい光景を見た。
それはサンゴの産卵だった。
小さなサンゴの赤ちゃんが発光して子孫を増やすさまはすごく美しかった。
色々な色がそこかしこに溢れてその中を魚たちも乱舞している。
キキの耳にもサンゴ達の喜びの声が聞こえてきた。
その時、キラキラ輝く星がいっぱいの空に異変が現れた。
突然、昼間の様に明るくなり、真っ赤な太陽が現れた。
それはドリームアイランドの上空を横切り、
すごいスピードで見えなくなった。
その時、真っ赤な太陽から小さな光が分かれた。
「ドーン」
「ズズズ・・・」
しばらくすると島を囲む山も支える海底も大きな揺れが始まり、
いつも穏やかな海面は大きな波でいっぱいになった。
怖くなった子供たちは岩陰に必死で身を隠した。
キキは不吉な予感を覚えた。