恋と死
「私が藤里に惚れたからだ」
はい?どういう事だ?この大きな生き物が私に惚れた?
「そ そんな理由で!!!貴方がそんな理由で人の子供と契約などしては行けません!」
「ん?おい、トカゲ、お前はなにを言っているんだ!愛より大きな物はどこにもないぞ!」
「で ですが!」
「ですがではない!私はやると決めたら絶対にやり遂げるのだ!」
そう言うと見上げる程大きな体がみるみる小さくなって行く。そう丁度人間くらいに、、、
「ひ 人の体になってる、、、」
筋肉質でかなりのイケメンである。右腕は包帯でぐるぐる巻である。
思わず心の声が漏れ出ていた。
「何言ってるんだ?藤里、私は祖龍だぞ!人間の体になるくらい余裕だ。」
ケインスはそう言っているが攻吏さんや黒い竜はキョトンとした顔で見ている。
「まーこれくらい出来なければ、祖龍の名を汚してしまうわ」
「「そんなの普通は出来ないですよ!」」
そう攻吏さんと黒い竜は同時に大きな声を出した。
「うるさいな〜、そんな事よりもやはりこの体で見る藤里も美しいな」
「あ ありがとうございます」
「もっと喜んでも良いのにな、、、まーとにかく契約だ!」
「あの契約って血を注ぎ込むって事ですよね、それは注射器とかでするんですか?」
「いやそんな物は使わない、お互いの動脈を切って傷口を1分間つけておくのよ、その後が地獄なんだけどね」
私の質問に攻吏さんは答えてくれたが少し恐くなる事を言わないでほしい、
「では早速始めるぞ!切るところは手首で良いな」
「ちょちょっと待ってください、そんな事して死なないんですか?私失敗して死ぬとか絶対嫌ですよ!」
「安心しろ、私がたった1人の藤里のパートナーだ!私がエスコートしてやる」
ケインスと喋ってると胸がむず痒い、嫌な気分ではないしやめてほしい訳でもないけど、、、
私はそう思いながら左手をケインスに差し出す。
ケインスは自分の爪で自分の手首と私の手首を切り裂き傷口を合わせる。私が下でケインスが上、傷口を合わせるようにお互いの腕を握る。自分の体の中にはケインスの血が流れ込んで来るのが分かる。その時ケインスが口を開いた
「私の願いを聞いてはくれないか?という思い出してくれ」
「願いですか、、、?できることならなんでも良いですよ。思い出すってどういう事、ですか?」
「では、、、、やはりまだ良い」
「そうですか、、、」
長い沈黙、言葉を待ったがそれはモヤモヤする言葉だった。
「良し1分たったわね、手を離しなさい」
そう言われてケインスと手を離した瞬間体中に激痛が走って体に力が入らなくなる、例えるなら血管を熱してドロドロに溶けた鉛が流れている様だ。熱いのだ、体が焼けていると思うくらいに、声も出せないくらいに。
「この痛がり方は以上ではないか!?」
恐らく誰かが大きな声を出していたのだろうが私はそれをしっかり聞き取る程の余裕がなかった、、、
気が付くとそこは拠点のベッドの上だった。ムキムキだった体は細くなり身長も前より伸びている気がした。
「お、目が覚めたか我が君」
「お おはようございますケインス、あの私ってどうなったんですか?」
だいたい予想が着く気もするが一応聞いてみる。
「気になるのか?では教えてやろう、藤里はあの後気を失ったんだがその後に、言い難いんだが、藤里は死んだんだ、」
目玉がどこかへ飛んで行ってしまうかと思うくらいに驚いて目を見開いた。
「私って死んだんですか!?で でもなんでも私生きてるんですか?」
「それはまた長くなるぞ、、、」
そうしてケインスは結構長い話をしてくれた、私が死んだ後皆は、自分達のせいで死んだんだ、と自分を責め続けていたとの事、でもケインスが「私が心臓を共有する」そう言ったらしい。後から他の人に聞いた話によると何をしているか分からないくらい凄い光景だったらしい。この重要臓器の共有は血の契約なんか比にならないくらい大きな事らしく、片方が死んだら死ぬのは同じだが痛みも病何かも共有するされるのだとか、でも悪いことばかりではなく考えている事がお互い共有出来たりもする。
「ところで私って半分竜になったんですか?あっケインスの場合は半分龍ですね」
「はっきり言って死んだこと以外は大成功だ!」
死んでる時点で成功とは言い難いのでは、、、まー生き返ったし良いかな。
「ただな、藤里の能力が分からないんだ、契約したもの同士なら能力くらいなら分かるはずなんだけど、、、」
自然の能力が使えないって事かな、、、別に欲しかった訳でもないけど何か寂しいな。
「別に欲しかった訳でもないからそんな落ち込まないでいいよ、、、まって、私って龍を倒せないの!?」
「まー今の時点だと殺すことは不可能だな」
「じゃー私死んじゃうんですか?」
「あーそれは大丈夫だ、私は竜じゃないしな、何も食べなくていいし寝なくても良いぞ」
「ならまだいいけど、攻吏さん達の役に立てないって思うと申し訳なくて、」
せっかく私に家を用意してくれたのに攻吏さん達の役に立てない自分に酷く後悔をする。
「藤里には私がついている!そんなに奴らの役に経ちたいのなら私がいるだろう?藤里と私は何よりも強いもので結ばれている、もっと私をたよるんだ」
「ケインス、、、ありがとう」
ポロポロと涙が溢れてくる、こんな気持ちになるのも初めて、ここに来てから初めての事がいっぱいある。攻吏さんと会ってから私の人生は大きく動き始めた。偽りの両親からの暴言や暴力、学校でのいじめ、学校を卒業しても職場でのいじめ、私はこれがずっと続いていくのだろうと思っていた。どうせ私が自主的に酷い現状を変えようと動いてもそれは悪い方へと傾いていくのだ。だが今は違う、攻吏さん達にケインスもいる。自分を大切に思ってくれる仲間達、、、今の生活が壊れるくらいなら私は悪魔とだって契約してそれを止めてやる、
彼女の考えは少し歪んでいた、仲間達のためなら自分を犠牲にする、それを許す攻吏やケインスではない、藤里は暴力やいじめで他の人が聞いたら落胆するような考えしか出来なくなっていた、ただそれを言葉にすることがなかった。




