第3話
揺蕩う夢の中。
一人の老人は目を覚ます。
夢虚ろなままに。
ここはどこなのじゃろう。
儂はクレイ……。
そうじゃ、クレイと言ったはずじゃ。
これは夢なのかの?
まだ眠いの……。
「ん? 今声を出したかの? クランよ。」
大きな手で優しく額を撫でるのは祖父のクレイであった。
今まで孫の様子を見に来なかった分を補う様に付きっきりで看病していたのである。
「熱が引いて来ておるな。 カインとジェリスを呼ぶ事にするかの。」
クレイが部屋の外に居る使用人に二人を呼ぶ様にと伝えると「かしこまりました大旦那様」と足音も出さずに消えた。
「うむうむ、ここのメイドはやりおるわい。」
そこから数刻もしないうちに目を覚ましたクランは喜ばれる事になる。
カインは目線をクラン合わせるとひと筋に涙を流し「良く戻ってきた」と一言だけ言うとジェリスに変わった。
ジェリスはクランを抱きしめもう大丈夫なのかと体を確認している。
「クラン!!? しんどい所はもうないの!!? 動いても大丈夫なの!!?」
「こらこら、ジェリスや。 病み上がりじゃ。 そうされる方が疲れるじゃろうて。 リィ、ジェリスを引き離しなさい。」
「かしこまりました。 失礼します奥様。」
「あう。」
そうやって引き剥がされたジェリスとは別に疲れを見せているのはクレイだった。
ジェリスを引き剥がしてくれたのは幼馴染でもあり付き人であるリィ。
「クラン様、お目覚めになられてリィは嬉しく思います。」
「わしはお前と同い年なのに、何故お前は年上の様な言葉使いなのじゃ?」
その場に居たクラン以外の全員が驚いた顔をした。
それもそうだろう。
病に倒れ目覚めると口調が変わりもすれば驚かれるだろう。
「クラン、お前のその口調はどうしたんだ?」
「父様、何か可笑しいですかの?」
そんなやり取りをしながらも目覚めた事のお祝いが行われたのだった。