第2話
グラン大国。
それがこの国の名前である。
一見すると平和その物な街並み。
人と人が笑い合い手を取り合いながら生きている。
だが、そう見えているのは表通りと路地裏に続く道だけである。
大人は子供を食い物に。
子供はまた大人を食い物に。
弱ければ死ぬ。
だが、この国に取っては都合が良かった。
大人や子供が食い合えば他の裕福層は食い扶持が増えるのだ。
そして生き残った者が居れば軍に引き込めばいい。
使い潰す。
都合が良い駒が出来る。
それがこの国の実情なのだ。
そんな国にクランは生まれてから9年と少しの歳月が経っていた。
一人の貴族の元に一通の手紙が届いた。
「ぬ? 孫が倒れたとな。 ふーむ、流石に見に行かねばならぬか。 おーい、誰か。 馬車を用意せい!!」
クランの祖父でありこの国唯一の穏健派、名をクレイ・フォン・ゴルガリ。
大国有数の公爵家であった。
クレイがカイン領へと着いたのは10日と言った所だった。
「うむ、ここは何も変わらぬな。」
そう独り言を言っていると街の方から複数の馬が近づいてくる。
「お迎えに上がりました、お義父様。」
「出迎えなぞ要らぬかったんじゃがな。」
「いえ、これは譲れませんので。」
「ふむ。 お主、少し丸くなったのぉ?」
「そうでしょうか、自分では分からないのですが。」
「よいよい。 良い事じゃ。」
唯一の穏健派と言ったがそれは親族になったとは言え変えられぬ行き方ではあった。
だが、カインは義父と分かり合える日が来たのだった。
「積もる話もあろうがまずはお主の息子を見せんか。 会いに来なかったのは儂じゃがな……。」
「仕方ないかと……。 我々が頻繁に合うとなるとどうしても内部の人間が煩くなります。」
「それはそうじゃがな。」
「ですがお義父様は会いに来てくださったではありませんか。」
内部。
この国も一枚岩では無い。
と、大きく話しているが穏健派はクレイのみであるが中立の貴族をある程度は傾けさせているからこそ戦えている。
例え娘婿だと言って過激派の一族であったカインと会ったとなれば他の過激派に突かれる。
ならば会わなければいいと二人ともそれなりに手紙だけでやりとりをしていた。
とは言ってもカインは塩対応ではあったのだが、クランの事でクレイの意見を深く考える様になったのだ。
「今は眠っておりますが高熱が続いているのです。 学院まで後半年程なのですが……。」
「なるほどのぉ。 どれ儂も見てみよう。」
「お願いします。」
そんなやり取りをしながら二人は屋敷へと向かうのだった。