私の日常

作者：衣更着　月季

　私と同じように親の行動に苦しむ人たちはどれくらいいるのだろうか。多分、私は本当に苦しんでいる人からすると、しんどい部類には入らないのだろう。親から暴力を受けてるわけでも、育児放棄されたわけでもない。ただ、操り人形や着せ替え人形のような、お気に入りの人形と間違われているだけだ。私の意志は関係ない。ただ、親が思うように生きることを期待されているだけだ。

【私の日常】

　幼いころ、私は母の言いなりだった。母が気に入る服を着て、母が望む習い事を行っていた、その当時、私は何も疑問に持つことはなかった。母の言うことを聞いていれば、違うことはない、母が喜んでくれる。そんなことを思いながら、私は自分の意志を持たずに生きていた。

　小学校に入学し、相変わらず母の言いなりで生きていた。周りはそんな私がおかしく見えたのだろう。いじめを受けるようになった。つらくなった私は、母に相談した。返ってきた答えは、「原因はあなたにあるんでしょう？」だった。今ならこの言葉の意味は分かる。周りにうまく合わせ、目立つことがないよう立ち回れば、いじめを受けることはなかっただろう。いじめられる方にも原因はある、母はそう言いたかったのだと思う。しかし、その当時の私は、味方になってくれると思った母にさえ見捨てられたように感じた。

　そして、私に隠れて母が父に言った言葉で、私は今までの自分がおかしかったことに気が付いた。母は父に「私が大事に育てたのに何でいじめにあうのかしら。私はいじめなんかにあわなかったのに。同じことをしているはずなのに。」と言っていた。私は、その時、自分の意志を母に告げたことがなかったと、思い至った。母の操り人形だったということに気が付いた。母にとって私は、“自分の分身”でしかなかったのだ。

　それから、母にも父にもいじめのことを相談できなくなった。そして、母の言うことに抵抗を感じるようになった。少しずつ、私は母に反抗するようになった。今まで従順だった娘の変化に母は戸惑い、ヒステリックを起こすようになった。私は、そんな母が怖くなり、家でも学校でも安心して過ごせる場所がなくなった。私は、人間不信になっていった。

　中学校に進学した。私をいじめていた人たちと同じ学校に行くのが嫌で、両親にお願いをして私立の中学に行かせてもらった。母も私立の中高大を卒業しているため、すんなりと許可を出してもらった。ただ、成績や志望校などは、母の思い通りにならず、何度も母に嫌味を言われていた。私には一人弟がいて、その子が出来が良かったため、このころから比べられ続ける生活が始まった。

　中学で、母に言われて続けてきた習い事をやめた。もともと才能がなく、続けることに苦痛を感じていた。母のヒステリックがすごく怖かった。

　しかし、中学では良い出会いもあった。人間不信で、周りを警戒し一匹狼だった私に、手を差し伸べてれた先生がいた。その人のおかげで、少しずつ周りに友達ができ、家よりも外が私にとって居心地が良い場所になった。

　中高一貫こうだったため、高校も楽しく過ごせていた。しかし、母が過干渉するようになってきた。私の携帯を勝手に見ていたり、友達がどんな子なのか調べたりするようになった。私の服装にも文句をつけ、周りの子がおしゃれじゃないからと、おしゃれなこと友達になれと、強要するようになった。もちろん、すべて無視をしていた。そして、私の体形が気に入らないと、毎日体重測定をするよう強要してきた。毎朝、起きたらまず体重測定。私の体重を表にし、前日よりも少しでも増えていたら怒鳴ってくる。そんな生活だった。

　大学になり、成人も近づいたとき、初めて父が母を止めた。もう私も大人なのだからと。これでようやく、過干渉からも解き放たれると思っていた。確かに、少しずつ干渉は減っている。しかし、週一で体重を見られ、服装チェックは毎日行われている。就職先についても口を出してきている。いい加減にしてほしい。

　先日、毒親についてのテレビ番組があった。母はそれを見て、「私は毒親じゃなかったでしょ？よかったね。世の中には、親でこんなに苦労する人もいるんだって。」と言われた。

ーーー私の母は、毒親ではなかったのだろうか？