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敏腕記者の追求

モンタの父が溜息をついた。


「情けない。困難に負けない子に育てるために厳しく突き放してきたのに」


「厳しさが足りなかったのね」


「あの子はカンジと違って生まれつきおとなしかったからな。いつも親の顔色を伺うようなところがあった。」


「怖い話をするといつも大げさに怖がっていたもんね。」


「だから恐れを知らない人間にするために厳しくしつけたつもりだったんだけどな」


「カンジにはその分優しくしてきたもんね」


家にマスコミがやってきた。イジメを告発する匿名の手紙が届いたという。


「同級生が書いたものだと思われますが」


「あー、うちにも届きましたよ」


「犯人たちの名前も書いてあります。学校や相手生徒を訴えるおつもりは?」


「訴えようにもお金がかかるし……。弁護士費用だって100万からかかる」


「でも息子さんの命を奪われているのですよ?」


「いや、もう我々家族は過去のこととしてスパッと忘れて、前に進みたいのです」


記者は食い下がった。


「その日の朝、モンタくんがナイフを持っていたとおっしゃいましたよね?」


「ええ、すぐに取り上げました」


「それは護身用ではないのでしょうか?命の危険を感じていたからでは?」


「そうだとしても如何なる理由があっても暴力はいけないし、堂々と話し合えば道は開けるはずです」


「学校でのイジメが問題になっていますが、モンタくんはずいぶん悩んでいたのではないでしょうか?学校に刃物を持っていこうとするまで追い詰められていたのでは?」


「いや~、アイツは泣くばっかりで何も言いませんでしたよ」


記者がモンタの母に言った。


「それはお父さんやお母さんが心配すると思って言えなかったのでは?」


「そんなふうには思えなかったけどなぁ~」


父が声を荒げた。


「モンタが死んだことでイジメは解決したはずです。あなた方は一体何をさせたいのですか?モンタの敵討ちでもさせたいのですか?復讐では争いは終わらないのです。憎しみの連鎖が続くだけです」


「いじめは犯罪だという声もありますが」


「イジメはイジメられる側に問題があるのです。マスコミがそうやってなんでもかんでも犯罪だの人権だの言うからイジメが大きな問題になるのです。モンタは弱い子だった。それだけです」


「幼少時のモンタくんが『怖い話』を大げさに怖がっていたのはお父さんとお母さんを喜ばせるためでは?」


「どうして?」


「『怖い話』をしたとき、大いに怖がられたほうが話し手としては嬉しいものだと思いませんか?」


「そう思うか?」


モンタの母は首を振った。


「あの子は小さい頃から気が弱かったし!!」


「イジメなんて我々の子供の頃からあったことだし、こんなことに負けるようでは厳しい社会を生き抜いていけませんよ」


「叩くのがイジメだったら、あの子が生まれた頃からむずかる度に叩いてきたし、私達こそイジメっ子になってしまうもんね」


「親が子供をイジメるわけはないわな」


モンタの父と母はうなずきあっていた。記者はそれ以上何も言わず帰っていった。


頭のおかしい親から生まれたらおしまいなのだ。


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