モンタの自殺
冷たくなったモンタが霊安室で横たわっていた。
「背中と腹を自分で刺して自殺したようです」
警察官から説明された父は吐き捨てるように言った。
「情けない」
「遺書はこちらです」
ヨレヨレの字だ。まるで誰かに手を持たれて書かされたようにも見える。
『お父さん、お母さん、勉強がつらいので自殺します。さようなら。気にしないでください。誰のせいでもありません。全部僕の責任です。』
次の日、学校では校長がモンタの両親を迎えた。モンタの父は謝った。
「うちのモンタが迷惑かけて申し訳ありません」
「まったく当校としても生徒に自殺されて迷惑しています。マスコミは来るし、まったく!」
「すべてうちの子の責任です。申し訳ありませんでした。」
「ではここにサインをしてください」
モンタの父は出された書類にサインをした。
『甲(モンタの遺族)は乙(学校)に対して一切の損害賠償請求をいたしません。イジメは存在しなかったことを認めます』
判をつくと校長の頬が緩んだ。
「いやはやモンタくんには前々から迷惑していましてね。彼がいるせいで生徒たちが苛立っていつも殴ったり蹴ったりと、非常に問題が多かった。モンタくんが死んでくれたお蔭で当校も平和になります」
「そうだったのですか。学校や他の生徒さんにそんな迷惑を……」
モンタの父と母は深々と頭を下げた。校長は満足げに頷いた。
「最近は自殺したのは学校の責任だと文句を言ってくるモンスターペアレントもいますからね。そうやって素直に謝っていただけると当校としても助かります」
全校集会が開かれた。モンタの父と母は全校生徒に謝った。教師たちが命の大切さを説いた。
「ふぅー、全くしょうがないやつだったな」
「でも、モンタがいなくなると少し寂しいわ」
「なーに行ってるんだ。さっと切り替えて前に進まなきゃ」
「そうね。忘れるのが一番!」
モンタの弟、カンジが言った。
「お兄ちゃん、死んじゃったの?」
「ああ、自殺だ。まったくだらしがないやつだ」
「お兄ちゃんはエロ本見ながら☓☓☓してたんだよ」
「まぁ、汚らしい」
「そんなことばかりしてるから自殺するんだ」
「これから僕が長男だね」
「そうだ。カンジが一人息子だからな」
「僕、お兄ちゃんの分まで幸せになるよ!」
家族3人は笑いあった。
数日後、家に匿名の手紙が届いた。
『モンタくんのお父さんお母さんへ。私はモンタくんの同級生です。モンタくんは自殺ではありません。殺されたのです。毎日のようにお金をせびられ、殴られたり、蹴られたり、愛のあるイジリだと命令されて☓☓☓を皆の前でさせられていたのです』
『あの日、もんたくんはいつものようにイジメらて謝り続けていました。そしていつものように愛のあるイジリだとしてズボンを脱がされそうになったのですが、抵抗したのです。すると奴らは逆らうのか!とモンタくんに乱暴し、そしてナイフで脅したのです。モンタくんにお金をもってこいと言いましたがモンタくんは泣きながら謝るばかりでした。そしてモンタくんは手を持たれて遺書を書かされ、お腹と背中を刺されて教室で殺されたのです。いじめた生徒たちモンタ君の苦しむ顔をみながら☓☓☓をしていました。この変態殺人鬼どもの名前は……』