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パッカパッカ。荷馬車はがたんごとんと揺れながら、舗装されていないガタガタの地面を進んでいきます。運転手はルドガーさんで、私とアートとレオンさんは荷馬車の中に入りました。結構大きな荷馬車なので荷物が全部簡単に入って、お土産とかも積めちゃいそうです。


馬が二頭で重くないかな?と思ったんですが、先生の「よくわかんないけど超スゴいはいてく技術」で軽い力で、重たいものを乗せていてもスイスイ進むように出来ているらしく、馬たちは元気にどんどん進んでいました。地面がどんどん流れていって面白いくらいです。


「結局朝も先生は帰ってませんでしたね」


「多分忙しいんだろうな」


「その割に食事とか手作りしてくれましたよね。知らない料理ばかりでしたが美味しかったです」


「そうだな。調味料類もこの国では貴重だから」


「あ!雪が降ってきましたよ!珍しい、こんな時期に」


「寒かったからな、たしかに少し早いが」


アートはそう言って私と一緒に一枚の毛布を被りました。私が驚いていると、横でレオンさんがむすっとしています。


「お前たちはよく真隣に私がいるのに平然といちゃつけるな」


「いちゃついてないですよ」


「私とロイスは婚約者だ。このくらい当然の権利だ」


「なにっ?!婚約者なのかロイス?!」


「ま、まあそうなんですかね?この場合どういう扱いになるのか分かりませんが、結婚する予定ではありました」


「なんだお前、予定だったってことは、フラれたんじゃないか!残念だったな鳥の巣頭!」


「なんだと!毎朝セットしている髪型を愚弄するか!このデブ!!」


「でぶとはどういう意味だ?!」


「太っているという意味ですよ。でも、レオンさん確かに昨日より太りました?」


あ、こういうのってセクハラに当たるんでしょうか?しかしあまり太ると健康に悪くて長生きできませんし、見る限りレオンさんは身長の割に食べ過ぎでしたし。苦しそうになっても食べ続けるのでどうした?!と困惑したほどです。先生はなんか嬉しそうにどんどん料理を作っていましたが。食べさせるのが好きなんでしょうかね。


「何を言う、男は太っている方が尊敬されて女性にも人気が出るんだ。そこの鳥の巣頭や馬番なんかは痩せすぎだな」


「ええっ太ってるよりは痩せてるほうが良いじゃないですか?」


「なんでだ?!太っているほうがいいに決まってるだろう?!」


レオンさんの謎の発言に私は首を傾げます。大体、痩せすぎって言いますけどお二人とも服を着てても分かるレベルで筋肉でガッシリしてますし、そもそも元軍人ですし、痩せてるとか思ったこともありませんでしたから。しかし、アートは神妙な顔をしてレオンさんを見ました。


「ふむ……少し離れた島国だし、文化が違ってもおかしくはない。国の文化や時代によって、人の姿の好まれる特徴は変わるものなんだ。例えばロイス、美しい女とはどんな女だと思う?見た目で言えば」


そんな本気の解答は期待してなかったのですが、やはりなにかありがたいお話があるようです。私はアートに言われたことについて考えながら頭を悩ませました。


「えーと、そうですね……鼻が高いとか、目が大きいとか、肌が白いとか……あと、えーと、髪が綺麗で長いとか?」


もっとある気もしますけど、この国では女性の髪の毛はかな〜り重視されます。髪が短いとほぼ女とはみなされなくなって見下されますし、使用人でも貧乏人でも髪だけは気にしているほどです。髪は女の命なのです。私は髪が黒いので管理しようがしまいが誰にも気にされませんでしたが、毎日ちゃんと自分で梳かしてましたよ。一応。


私の挙げたいくつかの特徴に、アートは軽く頷きながら聞いていましたがまた話を始めました。


「まあそんなところだな。だが、中にはくちびるが長ければ長いほどとか、首が長ければ長いほど美しい女だとされる国もある。顔が平たくて眉がほんの少ししかないのが美人という国もあったり、眉毛が繋がっているのが美人という国もある。」


「ええ!くちびるが長いってどんな状態ですか!なんか不思議ですね」


他にも突っ込みどころはいくつかありましたが唇が長いの意味が分からなすぎて気になってしまいましたね。長いもなにも無くないですか?唇は大きいとか小さいとかであって、長さでは計れないと思うんですけど?


「口の裏側にグッとこのくらいの器具を埋め込んで無理矢理伸ばすんだ」


「絶対痛い!!なんでやろうと思ったんですかね?!」


「それはなんでだったかな……思い出したら言うよ。ただ、太っているものが美しいという国も結構あって、その理由で多く挙げられるのが、太っているということは裕福であるという証だからなんだ。この国でも貧乏人は痩せているものが多いだろう?油も高いしな」


「まあ、確かに……でも金持ちなのと美しいのは別では?」


「いいや。結婚相手として異性に圧倒的に支持されるということはつまりモテるということで、モテるということは大多数にとって好ましい存在、つまり美にカウントされるのだ。おかしいと思うかも知れないが、世の中とはそういうものだ」


分かるような分からないような。でも確かに、なんでそれを美しいと感じるのか?とかは考えたことがありませんでした。美しいものは美しいのだからそれに理屈や原因をつけるのはおかしい、とかも思うんですが底を探れば私がアートを美しいと思うのにも何か原因があるんでしょうか。筋肉があるのは強い証だから生物的にモテて美しいとか?


「うーん、でも……そういう価値観の環境で生きてきたら太った男性を好きになってたんでしょうかね」


「さてな。私はそれを経験したことがないから、ロイスが一番かわいいよ」


「ロイスとイチャイチャするなと言ってるだろうが貴様!!!ロイス!お前は痩せてる男の方が好きなのか?!!」


「太ってるよりはそうですね。この国の女性は大体そうだと思いますよ」


「……」


なにやらショック受けてますけど、女性は痩せてていいんですかね?私は比較的痩せ型だと思うんですが。


「もうすぐアニスに戻りつきますよ〜寄って行きますか?」


「あ、はい!一応非常食とか一式揃えたいので!」


「今の会話はRPGっぽくてかなりよかったぞ」


「なんですかそれは」


なにやら嬉しそうなアートと、ショックを受けた顔でなにやら考え込んだ様子のレオンさん。別に私はレオンさんといずれにしろ結婚する気ないので気にしなくていいんですが。帰国してから自国の女性とお付き合いすることをおすすめします。


そんなこんなで私たちは、ミサカツキから最初にアニスに来たくらいの地点まで戻ってきたのでした。買い出しをしたらすぐ出発ですが、ええ。


アニスからはとりあえず私の故郷に寄らなきゃなんですよね。心配は募るばかりです。




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