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微忘碌  作者: 平田凡太
9/9

異世界はクソゲーでした。

 人生はクソゲーだと言う輩がいた


 私は違う、そうじゃないと思った。


 人生をクソゲーと揶揄するならば、人生はゲームだと比喩しなければならない。


 人生をゲームに例えるならば救済がなくてはならない。飽きたら止めてもいいという、救済がなければならない。


 けれど人生は違う。

 飽きようとも続けることを強制される。

 思考を矯正されていく。


 途中でやめることが悪であるかのように。

 飽くことを否定し、悪と断定する。


 終わりたいのに、終われない。

 終われないのに、追われ続ける。


 使命に追われ、命を繋がれ、終わりが見えない人生を背負い続ける。


 何故人生をクソゲーと声を上げるのか。


 選択を誤ったらやり直せる救済がない故に、クソゲーと声をあげるのかも知れない。


 人生の難易度が高く攻略を諦めた故に、クソゲーと声をあげるのかもしれない。


 自身の生まれつきの能力が低いから、己の意見が通る立場にいないから、自分の思い通りにいかないから、自分自身の価値を肯定したいから、自らの行いを否定したくないから、己自身の失敗を否定したいから────


 人生はクソゲーと叫び続けるのだろう。


 最底辺にいながら、足掻き、苦しみ、踠き、己の努力(じぶん)を肯定し、他者の努力(せかい)を否定する。


 そんな奴らがクソゲーという人生というものは、薄っぺらく価値のない人生を送ってきた者の戯言に過ぎない。




 私は人生をクソゲーとは思わない。


 人生はクソそのものだ。


 言ってしまえば裕福だった。進む人生はレールが敷かれ、道を間違えないように分岐路は予め壊されていた。


 自身に課せられた使命を果たし、他人の期待に応える日々。


 自身の行動は固定され、

 自身の世界はそこにはなく、

 自身の意思は何処にもない。


 管理され、支配され、従う日々。


 他人の期待に応えようと、他人の期待に圧殺されそうになりながら、重圧に耐え生きながらえてきた。



 唐突だが、私も人生をゲームで例えてみようと思う。


 現実であれば止めさせられるゲームだが、人生は周りが電源(いのち)を切らせないようにしている。



 だから私は人生(ゲーム)(電源)消える(落ちる)のを待った。


 充電が切れるのを待つのではなく、


 掃除機が本来に衝撃を与えるような

 コンセントに足を引っ掛けるような

 ネコがリセットボタンを押すような


 唐突で理不尽な結末を望んだ。



 望んだ。望んだが──



 私は何かにもたれかかり目を覚ます。

 視界に広がる草原、雲ひとつない青空。


 人間の処理速度、対応速度にも限界がある。


 神隠し──などと見当はずれな考えだけが思い浮かぶ。


 少し時間を空け、冷静になる。気が動転しては出来ることも出来なくなる。


「……ステータス」


 私はなけなしの知識を絞り、小声で呟く。だが自分にステータスは開かれない。

 それもそうか。ここは現実世界、フィクションではない。

 それに自分の能力値を数値化なんて面白みに欠ける。


 っとまだ冷静になりきれていなかったようだ。


 そもそも私はそこそこ名の知れた名家の一人娘。

 拉致……この何もない草原にか? 金が目的ならこんな場所には置いていかない。

 身体が目的なら既に犯された後だろう。


 ……ダメだ。犯人の意図が全く掴めない。



 私の背中は深くもたれかかると違和感を覚えた。


 私は岩に寄りかかっていたと思っていた……だがそれは間違いだったようだ。

 ファンタジーの定番ドラゴンが私のクッションになっていたらしい。


 ドラゴンはのそりと起き上がり大きな口を開け、咆哮を轟かせる。




 どうやら異世界は元の世界(現実)よりクソゲーらしい。

言葉遊びがしたかった

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