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微忘碌  作者: 平田凡太
6/9

るーぷもの

 よくある転生トラックに送迎され、神にチートを貰い、王様に世界を救うよう頼まれ、魔王を倒し世界を救ったのも今は昔。


 さて、今は七週目の同一転生人生。


 今までのことを簡単に振り返ってみると、一週目は信頼していた仲間に裏切られ、一人で魔王と戦い、相討ちに。

 二週目は復讐で人生を使い果たし、三週目はハーレムに走ってみたりしていた。

 四週目は魔族を支配してみたり、五週目は人間と魔族で大戦争を起こしてみたりもした。

 六週目には一切手を貸さず滅びゆく世界を肴に酒を嗜んでいた。


 まぁ色々あったが、どの人生も碌な死に方しなかったし、死んだ次の瞬間には王の目の前にいた。


 転生してからこの世界が滅ぶまでの時間的猶予は長くて三年。神の使命にも従ったし、神の使命に背く行為もやった。

 だが、この生が終わることはなかった。

 この世の(ルール)が許してくれないのかもしれない。


 四週目に記憶を受け継いでいる者が自分以外にもいるのではないかと考え始めた。

 世界中を練り歩き、今までの生きてきた六週の記憶を持っている人物は魔王ただ一人だった。


 二週目、三週目と人生を謳歌する為に使っていたので知らなかったが、四週目に会いに行ってみたらなんと記憶があった。


 魔王曰く、秘書に聞いても覚えてないの一点張り。あまつさえ裏で痴呆呼ばわりされて哀しいとの事だった。


 その後、支配という形で魔界を受け貰い秘書に王を置いて統治していたら、人間様が生意気にも攻め込んできたから相手したら毒矢貰って死んだ。


 五週目にもなると魔王も鬱々としていたので、魔王軍対人間軍で大戦して遊んでいたら、二人ともに手下に叛逆されて死んだ。


 六週目には『我が実際本気出したら何年でこの世界滅びるか知りたい!』なんて言ってたから一切手を貸さないでいたら、意外にも人間様が頑張るから三年かかっていた。


 そして今回の七週目は『最速で魔王に会いに行こう。目指すは三日!』などと思っている。


 実際に走れば一日半で魔界に到着するし、支配した時に裏道は聞いていたから、魔王城自体に乗り込むこと自体は簡単ではあるのだ。


 だが、問題は城内開始であることだ。

 まずは王の話で実質的身柄拘束、身辺調査という名の軟禁、取り調べが終わり宿の提供と謳った監視、仮釈放状態になるまでがワンセット。


 ここまで最速で終わらせても半日かかる。

 二週目では脱走を図ったが、兵士に捕まり三日の牢獄生活で大幅ロスになるため大人しく待った方がいい。


 そして、半日費やした後の最初の難所、玉の輿ハンターヴァニラの存在だ。

 ヴァニラは初日に国から手配された宿にいる。三週目で聞いた話だと国の雇われの諜報であるらしい。


 五週目に宿から抜け出そうとしたら窓の外で待機していたし、なんだこいつという感じだった。


 そんなストーカー紛いのヴァニラだが、ただ隙はある。飯の時間になると仕事を中断してでも飯を食べに行くという。

 五週目の時は振る舞われた料理に舌鼓をうち脱走失敗。六週目は苦渋の決断をし、抜け出すことに成功した。


 第二の難所はこの日偶然来ていたという大賢者ミントである。こいつのせいで初日に城下町から脱走しなければならない。二日目に会うと一日中監視される。


 六週目では、屋根の上をピョンピョン跳んでいたら千里眼で場所を把握されたうえ、昼夜逆転チート魔法を使われ、無事牢獄行きになった。


 ミントに関しては三週目では情報は得られず、隙になる点を知ることは出来なかった。

 だが、五週目の大戦では完璧主義者であるが故に詠唱を一度でも間違えると最初からやり直さなくては気が済まない癖がある。

 大戦ではこの完璧主義のせいで死んだ。


 詠唱を中断する手段さえあれば、魔法の発動を食い止めることができる。


 これなら簡単だ。

 ミントは知的好奇心が強く、自分の理解に及ばない万物に対して執着的な興味を抱く習性がある。好奇心はあるがそれに対する知識はない。


 前と同じように屋根を跳べばいい。ただ前回と異なるのは全裸で跳んで移動するという事だ。

 ミントは魔法一筋で生きてきたからか、男の裸体に対する好奇心と羞恥心が凄まじい。全裸で跳べば千里眼で見た際に動揺するだろう。


星々が煌めく街の夜空を全裸で飛び跳ね、難所を乗り越え無事に街を出る事が出来た。

 それから街を出た後はただひたすらに駆けた。


どんな悪路だろうが、どんな悪天候だろうが、どんな悪条件だろうが地を踏みしめ走り続けた。


 村の生贄で数多の生娘が死のうが、魔女狩りで街が崩壊しようが、国家間の紛争が続いていようが構わず魔界へと走り続けた。


 深い傷を負った村人がいようが、山賊に絡まれている商人がいようが、他国に拉致された皇女がいようが構わず荒野を駆け抜けた。


 光を(もたら)す陽が二度沈み落ち、何もかもが完全な闇に飲まれた三度目の夜、魔王城に到着した。


通常、魔王城は瘴気に覆われ正面からは入れない。

正面から入るには魔王の邪気を払う神器が必要となるが、最速で駆け抜けたのであるはずがない。


なので、魔王城裏口の専用通路を使う。専用通路ではよく魔族とすれ違うが、二日間走り続けた服装と顔色では腐った屍にしか見られないだろう。


専用通路を抜けた先にはすぐ大広間がある。大広間では多種多様な魔族が(ひし)いている。


ここから魔王の広間に行きたいのだが、下位階級の者は魔王の広間へ向かうことはできない。


魔界では旧い階級制度が残っており、産まれた種族によって階級が決められる。階級が覆る方法はただ一つ。

力を以って強さを示すことだ。


────


「魔王さん! 遊びましょ!」


両手で扉を勢いよく開ける。

扉の先には思いもしない光景が広がっていた。


「えっ! 勇者早いな!」


厳つい魔王が部屋の飾り付けをしていた。


「こんな早いなら一報くれれば良かったのに〜」


魔王がお茶を持ってくる。


「今回は何して遊ぶんだ?」


「今回は大戦をやろうと思う」


「大戦? それは前にやっただろう」


「人間対魔族の大戦ごっこだろ? 今回の大戦は人間魔族連合軍対神の本物の大戦だ」


「……それは面白いな。だが我ら魔族は神の存在を信じていないが人間は神を信じている。敵の敵は味方だとはわかるが、神を大いなる敵とするのは難しいのではないか?」


「神撃を各国に撃ち落とし、神への不満を募り反乱軍が出来るのを待つ」


「それにはどのくらいの時間が必要だ?」


「七日……いや三日だ。この城の宝物庫にある魔弓借りるがいいか?」


「あぁ、構わない。こちらでやる事はあるか?」


「人間界への侵攻の停止と各国の魔物の召集だな。魔王様の命に従わない不届き者には神撃が撃ち落とされるかも知れないが」


「うむ。我の命に従わない者は大概把握している。あとで地図に記しておく」


「助かる。神撃を始めるのは夜が明け、陽が人々に祝福を授ける時だ。それまでに間に合うか?」


「余裕だ。それでは我は命を下してくる」


そう言うと魔王は目の前から消える。


何度も繰り返すこの運命から脱する──神への叛逆の第一歩だ。

なろうでハーレムと俺TUEEEが書けないのは致命だと思います。

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