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姥捨て  作者: ぐり
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始まり


 働けなくなった年寄りが山に行く事は、仕方がない事なんだよ


 そんな声が聞えて来たような気がした。昔読んだ本か、テレビの昔話のアニメに出て来たセリフだと思う。

同時に年老いた母を背負って罪の意識にさいなまれながら黙々と山路を登る様子までが見えたような気がした。



「もう、荷物積み終わったよぉ」

「じゃあ、そろそろ出かけましょうか」

 家族の声がする。

『年寄りを施設に入れるのかそんなに嬉しいのか』

正男は心の中で毒づいた。会社を休んで今日は母親を遠くの老人施設に送り届ける。

 母が落ち着いたら、妻の恭子とは離婚するつもりだ。そう正男は思っていた。

「お父さん、そろそろ出ましょう」

恭子に促されて、重い腰を上げる。

「僕、助手席!」

息子の正春がサッサと車に乗り込む。今日は平日の筈だが、春休みだという事に気付く。4月から中三になるんだった。

 そう思うと又気持ちが暗くなる。息子の受験を考えて手間の掛かる年寄りを施設に入れるような気がする。

「おばあちゃん、乗る時気を付けてね」

娘の真由の声。真由も短大を卒業して、来週からは社会人になる。

 恭子が最後の戸締りを確認して車に乗り込んでくる。母を真ん中に挟む形。

『別に護送する訳じゃないんだから』またひそかに毒づく。



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