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バタバタしてて、投稿が遅くなってしまいました、すみません。
その翌日、善は急げということで、僕はさっそく街の冒険者ギルドまでやってきていた。
全身に伝説の装備を身に着けて……いると大変なことになるので、
ショートソードに、革製の鎧という、一般的な駆け出しの冒険者の恰好で。
とはいえ、この装備にも秘密があるんだけども。
冒険者には、主に迷宮を探索する迷宮探索者と、冒険者ギルドのクエストをこなすいわゆる普通のタイプの冒険者に分けられる。
ぼくが目指すのはもちろん迷宮探索者の方だ。
一般の魔物は、ある意味動物と変わらない存在で、倒して得られるのは、爪や牙だったり、毛皮、肉といった素材であるのに対して、
迷宮の魔物は姿かたちは普通の魔物と同じ姿をしているのだが、迷宮の魔力の塊であり、倒すと稀に魔石を落とすのだ。
冒険者への登録は簡単だった。
ギルドの受付嬢に渡された用紙に、名前と性別、出身、自己申告の職業を記入するだけでいいらしい。
それらの情報が記載された、金属製のカードに血を一滴たらしたら登録が完了するらしい。
「はい、アルドくん、これであなたも冒険者よ」
もらったカードには、銅色のもので、
アルド・ノワルド
男
ワンドック
剣士
Fランク
という記載がされている。
詳しい仕組みはわからないが、血を媒介に、魔法で本人を認識する仕組みなっているらしく、登録した本人以外が持つと表示がされず、悪用ができない仕組みになっているらしい。
また、職業については自己申告制だが、本人が魔法の適正がないのに魔法使いを職業として登録できないようになっているらしい。
剣士は、ほとんど剣さえ持てれば誰でも名乗ることができるので、きわめて一般的な職業ということになる。
「アルドくんは、迷宮探索者志望ということだけど、このカードで、入場の許可も行いますので、なくさないようにしてくださいね。
再発行も可能だけど、銀貨5枚を再発行料としてもらうことになるから気を付けてね」
ステラさんから、やけに丁寧にいろんなことを教えてもらい、僕は冒険者ギルドを後にした。
晴れて、冒険者になった僕はさっそく迷宮へ……
は向かわず、行きつけの定食屋へと向かってきた。
朝一で、冒険者ギルドにやってきたのだが、登録や説明などで、もうお昼時になってしまっていたのだ。
腹が減っては戦はできぬってね。
そうして、街の正門近くにあるビックゲートレストランにやって来た。
このレストランは、いろんな定食がリーズナブルに食べれるので、冒険者のみならず、いろんな人に人気があるのだ。
お店のトレードマークである大きな戸を開けて中に入ると、いつもの賑やかな店内の様子……
ではなく、激しく言い争う赤い髪の少年と店主が目に入ってきた。
その様子を囲んで眺めている客たちの間を抜けて、空いている席に腰を掛けると、店員の女の子を呼んで注文をする。
「本日の日替わりって何ですか?」「だから金が入ったら払うっていってるだろー!」
「ホロホロ鳥のから揚げですね」「そんなんが信じられるわけがないだろ」
「うーん、じゃあ、それでお願いします」「おれは勇者になるから、いくらでも出世払いしてやるてのがわからないのか」
「はい、かしこまりました。他に何か頼まれますか?」「はー、勇者さまね、すごいすごい。こちとら慈善でやってるんじゃないんだよ」
「じゃ、お水をお願いします。で、あれどうしたんですか?」
言い争いが、ようやく少し収まったので、聞いてみた。僕だって気になってなかったわけではない、ただ見慣れた光景だっただけなのだ。
お金が使い果たした冒険者が食べるのに困って、無銭飲食を行うのはこの町では日常茶飯事なのだ。
あの子ももう少ししたら、やってきた衛兵に連れられて行くことになるだろう。
「おれは、勇者の天才を持っているんだ、あとで後悔してもしらないからな」
「へー、じゃあ、冒険者カードでも見せてもらおうか?勇者なら、職業も勇者なんだろ?」
「えっ、それはちょっと」
「ははーん、やっぱりか、口だけ野郎め」
「なっ」
激高した少年が店主に殴りかかろうとするが、秒速で腕をつかまれて、抑え込まれている。
あの人、元々B級の冒険者なんだよなー……
騒動に収集が付いたのを見て、観客たちが解散して自分たちの席に戻っていく。
「お、いい剣持ってるじゃねーか、金がないならこれを買い取ってやる」
「返せ、それは親父のっ」
少年が、店主から武器を取り返そうとしてるが、実力の差が歴然で身動き一つできないようだ。
「くそ、かえっ……」
「おとなしくしてろ」
うーん、さすがに食い逃げ犯がかわいそうになってきた。
「オートヤーさん、それくらいにしてあげたらどうです?」「やめろっ」
「お、アルドの坊やか」「くそっ」
「坊やはやめてください」「はなせっ」
「はっはっは、いつの間にか立派になっちまって、成人の儀式は終わったのか?」「てめぇっ」
「はい、おかけ様で」「何おれを無視してしゃべってやがるんだ」
「うるせぇっ!「きゅう」ぐずっ、親父さんが生きてればなんていったかな」「……」
「仕方ないですよ、あれは事故だったんですし……なんか変な声がしませんでしたか?」
「気のせいだろ、今日は、サービスだ、無料にしてやるよ」
「ありがとうございます。お言葉に甘えるのもなんなので、その子の分は僕が払いますよ」
「その子?」
「オートヤーさんの足元で伸びてるその子です」
「ん?おおっ、そんなのもいたな。仕方ねぇ、ほかならぬアルドの坊やの頼みだ、今日はなかったことにしてやろう
。二度とないぞ!」
「だから、坊やは……」
「はーっ、はっ、はっ」
オートヤーさんは笑いながら、厨房へと帰っていった。
とりあえず、この子をどうするか……
そう、こころの中でつぶやくと、目の前でつぶれたカエルのようになっている少年を起こしにかかった。
明日は、正午あたりに投稿する予定です。今度は予約投稿で……
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