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「今日は、帰りたくない」
そんな付き合う前の彼女みたいなことを言っていた彼女ではあったが、迎えに来た部下に説得され、両手いっぱいのお土産を抱えてドラゴンに乗って帰っていった。
そんな彼女を笑顔で送りながら、僕は自分の犯した過ち?のことを思い出していた。
……
『ガチャの天才』
そんな、過去に例を見ない天才を手入れて、心を躍らしていた僕だったが、1週間もすると自分の天才が本当は使い物にならないものではないかと考えるようになっていた。
ポイントと引き換えにガチャを引く能力、それが僕に与えられた能力だった。
与えられるポイントは、一日150ポイント、能力によって作り出したボードを操作すると、
100ポイントで一回ルーレットのようなものを回すことができ、その結果、一枚のカードを入手できる。
実質一日1回、2日で3回しか使えず、喜び勇んで使ってみた僕が最初に手に入れたカードは。
『普通のフライパン』だった。
普通のフライパン(C):何の変哲もない普通のフライパン
ちなみに、Cは、Commonとのことで、一般的なアイテムということらしい。
そう説明が書かれたカードを手にして、その文字を読んだとき、魔法みたいにカードがフライパンに姿を変える様子には驚いたものだったが、1週間して僕が手にしたのは、
普通のフライパン(C)が5つ、
いいフライパン(UC)が1つ、
低級ポーション(UC)が1つ、
ヒノキの棒(C)が1つ、
鉄の剣(UC)が1つ、
低級魔法(1回)(UC)が1つだった。
こんなにフライパンがあっても困るだけで、全くありがたくなかった。
鉄の剣は売ると銀貨5枚くらいにはなり、低級ポーションも、銀貨1枚くらいにはなるだろう。生きていくだけであれば、十分かもしれない、だが、ほとんど低級魔法なんて誰でも使える(僕も使える)もので、役立たずだ。
しかも、このカードはどうやら僕にしか使えないらしい……
ほんとに使えない……
そんな僕に転機が訪れたのは月が変わった時だった。
いつものようにガチャを引こうとボードを取り出したら、その画面に見慣れない表示がされていたのだ。
『限定キャンペーン、魔石ガチャのUR,SSRレア確率大幅アップ』
キャンペーンってなんだ?魔石ガチャ?見慣れぬ文字に疑問が生じる。
これまで、ガチャはポイントだけで引いてきたが、他のガチャもあるというのか?
改めてボードの表示とにらめっこをすることしばらく。よくよくボードの情報を見てみると、画面の右上のところに宝石のようなマークがあり、そのマークを押すと表示が切り替わった。
その画面には、魔石ガチャと書いてあり、説明を読むと、ボードに魔石を取り込ませることにより、ガチャのポイントを得ることができるようだ。
とにもかくにもこれは試してみないといけないだろう。
そう思った僕は、さっそく魔法具屋へと向かった。
魔石は迷宮のモンスターを倒すとまれに入手することができるが、迷宮に潜るすべも持たない一般人が入手するには購入するしかない。
一つ、銀貨4枚と、決して安い買い物ではなかったが、ガチャで出に入れたお金と、これまでため込んできたお金を少し切り崩して魔石を10つ購入した。
途中で気付いたのだが、ガチャは10回一気に引くと、1回おまけしてもらえる仕組みになっており、お得というわけだ。
少しかさばる魔石が入った袋をいそいそと家へと持って帰る。
……
…………
よし、いよいよガチャの時間だ。
「ボードに魔石を取り込ませるんだよな」
そう独り言をいいながら、慎重に魔石をボードに近づけていく。
すると、ボードと魔石が当たるか当たらないかといったところで、スッとボードに魔石が吸い込まれていき。
画面の中央に書かれている数字が0から1へと変化した。
「よし、この調子で」
勝手きた魔石を1つ、また1つボードへと登録していく。数字が一つずつ増えていき、その10となった時
ボードの数字が10となり、準備がすべて整った。
その時、画面に新たな表示が現れた。
『初回ボーナス、SSR確定』
SSRというのが何かわからないが、期待が高まる。
時は来た、僕は、たたずまいをただすと、ボードのガチャボタンをプッシュした。
するといつもは白いクリスタルの画像が表示されるのだが、
今日は、白→黄→赤→銀→金の順で色が変わり、金色からさらに七色へと変化した。これは期待できるかもしれない。
画面のクリスタルが砕けて、カードが配布される。
結果は……
赤色のカードがめくれる、
すごくいいフライパン(R)
……なんでこんなにフライパンばかり出るんだ……
赤いカードがめくれる、これもレアか
鋼の剣(R)
赤いカード
中級ポーション(R)
赤いカード
すごくいいフライパン(R)
赤いカード
中級魔法(1回)(R)
赤いカード
すごくいいフライパン(R)
おい……
銀色のカードがめくれる、これは……
守護の腕輪(SR)
えっ、これって迷宮でごくまれに取れるっていうマジックアイテムじゃないのか……
銀色のカードがめくれる
マジックバック(容量:中)(SR)
これもまた、迷宮でとれる商人垂涎のマジックアイテムだ……少し自分のもつ天才の恐ろしさがわかってきた気がする。
銀色のカードがめくれる
転移魔法(1回)(SR)
だんだん何がでても驚かなくなってきた、転移魔法といえば、世界でも使える人間は数人しかいないと言われている。
金色のカードがめくれる
カラドボルグ(SSR)
僕は絶句した……伝説でしか聞いたことのない武器がでてきたのだが……
また金色のカード
エクスカリバー(SSR)
エクスカリバー出てきちゃったー……
そして、最後の一枚で、七色に輝くカードが現れた、
震える手で、画面をタッチする。
無敵(1日)(UR)
少し拍子抜けをしたが、カードの説明をみると
『神をも殺す最強の能力を身に着ける』
うん、エクスカリバーの時点で少し気付いていたが、これダメな奴だ……
次も正午くらいに投稿する予定です。
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