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12時に間に合いました。
魔王城までは転移してきたから、具体的な距離などは全く分からなかったのだが、ドラゴンは非常に速く、いくつもの山を越え、森を越え、およそ二時間たったころだろうか、ドラゴンでの旅にも慣れてきたころ、見たことのある景色のところまで戻ってきた。
大きな地殻変動でもあったのだろう、巨大な一枚岩が、その中腹できれいに斜めにずれており、落ちた上半分の巨石が街道を塞いでいた。
赤青黄の子らに、このあたりで降りたい旨を伝えて、ドラゴンに地面に降りるように促した。
地面におりると、久しぶりに立つ、動かない地面がどこか恋しかった。
「「「これを渡しておくです」」」
そう言ってこちらに放り投げられた、銀色のホイッスルのようなものを僕は受け取った。
「それを吹けば」「自分が好きな時に」「この子を呼び出せるです」
「ありがとう」
「「「べつに、エリザベス様が渡せっていったから、です」」」
そんなことをいうと、彼女たちは、飛び去っていってしまった。
彼女たちを見送りながら、この一日、なんだかいろんなことがあったなー、とりあえず、街まで戻ろう……そう思って街の方へと振り返ると
「アルド!!!!」
誰かに声をかけられて、タックルをかけられるように飛びつかれて、地面に押し倒された。
「アン、痛いよ」
「アルド、急にいなくなってどこにいってたの?あの子たちはだれ??なんでドラゴンに乗ってたの?何をしてたの?」
「これから説明するから、まずは、上から退いてくれるかな?」
「あ、ごめんなさい」
アンは、我に返って、僕に手を差し伸べて、地面から起こしてくれた。
まずは、何から話そうかな?さすがにそのまま伝えるわけにはいかないし……
「話せば長くなるんだけど……」
そして、僕はアンと、街まで歩き始めた。
それから数日たったある日。
世界の王族に、魔王から、手紙が届けられた。
その内容は、この日をもって、魔族が人間の国を脅かすことはないこと。ただし、侵略も一切受け付けないことが書かれていた。
それは、一方的に不可侵を告げるものだった。
これまで、歴史として記録されている人間の国の領土は、大きくなったり、別れたり、時代とともに国境線が書き換わってきていた。しかし、魔族が住んでいる領域、魔王領とでもいおうか、それは、この1000年の間変わっていない。
これまで、万の勇者を魔王領に放ち、その領土を手中に収めようとしてそしてそれはかなわなかった。これまで歴史に名を残してきた大勇者ですら、魔族の領主は倒しても、四天王を倒したものすらいない。
それほどにまで魔族と人の間には差があるのである。
よって、そこには人間側の返答は不要であったのだ、ただ通知すればよかった。
今日この時をもって、人と魔族との間に戦争はなくなったのである。
読んでくださってありがとうございます。
ブックマーク、評価いただいた方、ありがとうございました。
引き続きちょっとした、暇つぶしになればいいなくらいで、頑張っていきたいと思います。




