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授才の儀式から、早くも2年がたった。

劇的な変化はなく、僕は少し大人になって、その日の生活を不自由なく過ごすことはできるようになったくらいだ。

相変わらず、世の中から魔物はいなくなるようなことなく、何も変わっていなかった。


今日は、行きつけの雑貨屋で最近手に入れたいくつかの雑貨を鑑定してもらっていたところだ。


「おー、兄ちゃん。今週もきたな。兄ちゃんの持ってくるものは品質もいいからな、今日も期待してるぞ」


「コリンズさん、今日もお世話になります」


「おう」


そう返事をしつつも、コリンズさんは鑑定の作業を止めることはない。


時々、何かをつぶやいて、うなったりしている。


「フライパンが合計8つ、そのうちこの2つはすごいな、1級品だろう。金属もミスリル製か?一流のシェフならのどから手がでる一品だな」

「ポーションとマナポーションが1ダースずつ、お、今日は中級もあるのか、そのほかにもテント、食器……」


コリンズさんが、僕が持ち込んだ雑多な商品を一つ一つ手に取って、手元のメモへ品名と金額を記入していく。


「今日の合計は、金貨3枚、銀貨17枚、銅貨6枚のところ、おまけして、金貨4枚でどうだ」


「はい、大丈夫です」


「ほらよ。世の中は魔王や魔物で大変だが、今代の勇者様たちも情けないよな。うちは、兄ちゃんが贔屓にしてくれるから、繁盛して大助かりだから構わんがね」


「ははは、またお願いしますね」


そんなコリンズさんの話に、笑って相槌を返しながら、思わず冷や汗をかく。


もう魔王はいないんだよな……いや、いないってのは少し違うか……そんなことを考えていると


「アルド、もう終わった?今日は一緒に買い物にいく約束でしょ、はやくー」


小柄な少女が、コリンズさんのお店に入ってきた。


赤っぽいピンクの髪をショートボブにまとめて、小柄な身体と同じく少し幼さを残した顔立ち、胸元は身体に似合わない大きな胸が布を突き上げて主張をしている。

髪の毛が片目を覆っていて少しその表情は見えにくいが、二年前にあった聖女がとても綺麗な女の子とすると、この子はとてもかわいい女の子と表現するのが正しいだろう。

ゴシックロリータというのだろうか、ヒラヒラやフリルの付いた黒い服がよく似合っている。


その彼女が、体型には似合わないすごい力で彼女がぐいぐい僕の手を掴むと店の外へと引っ張っていく。


「ちょっと」


振り返って、コリンズさんの方をみると、その少しいかつい顔に「うまくやれよ」みたいなニヤついた笑顔を浮かべて手を振っている。

リズとは、そんなんじゃないのに……


「はやくー」


僕が何か言うより前に、店の外へと連れ出されていく。


いつもは通り過ぎるだけの、目抜き通りも二人で歩くと少し違って見える。

リズと通り過ぎると、多くの人が振り返り、男たちからは嫉妬の視線を向けられる。


リズがこの街にやってくるのは月に1、2回くらい。

とはいえ、これまでに何回か来たことはあるのに、いつも初めて来たようにあたりをキョロキョロと眺め、表情もころころと変わる。


僕と、リズこと、エリザベスとは、別に恋愛関係にあるわけではなくて、なんだ、一種の契約関係のようなものだ。

少し前に交わした約束により、彼女が街に遊びに来た際には、そのお供をする約束になっているのだ。


とはいっても、かわいい女の子が楽しそうにしている姿は男子としてうれしいものだ。


リズに連れられて、行きつけのお店や、新しいお店に入っては、彼女が欲しがるものを買ってあげるのだ。

もちろん、なんでも買ってあげれるわけではないけども……


そして、僕と、リズは、小洒落たカフェのテラスで、お茶をしているところだ。


「おいしいね、アルド。アルドと一緒にいると、いろんなところに連れてってくれるし、おいしいものを食べれて、わたしアルド好きよ」


僕は、思わず飲んでいた紅茶を口から噴き出した。

リズは、変わらず僕の方をみて微笑んでる。


ナプキンで、テーブルを拭いて、新しくもらったナプキンでリズの口元を拭いてあげる。


「ほら、ケーキが付いてる」


ゴシゴシと口元を吹かれる間、彼女はおとなしく目をつぶっている。こうしてると、彼女はできの悪い妹みたいだ。

リズのいう好きという言葉も、恋愛のような感情ではなく、きっと家族に対するような感情なんだろう。

ただでさえ、僕とリズとの間には大きな隔たりがあるのだ。


目の前で、ケーキの残りを幸せそうに食べているエリザべス。


彼女が現在の魔王である。


明日は、正午あたりに投稿するよていです。


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