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今日は時間どおりに

それから半年後。


各国を結ぶ商売の要となるスパイスロードと呼ばれる路に、突然ドラゴンが現れたとのことで、一人の勇者がその討伐の任務へと就いた。


その勇者は、ここ最近、急に現れた新星で、そのポニーテールを結ぶ真っ赤なリボンからリボンの勇者と呼ばれていた。


そのかわいらしい二つ名とはうらはらに、美少年のように整った容姿、男勝りの言動、見るものを黙らせる圧倒的剣技で、王都では、女性によるファンクラブが作られているらしい。


「勇者さま、あそこです。ドラゴンの番が急に現れて荷馬車を襲うようになりまして……」

「番か……あまり殺したくはないな……でも、なんで急にこんなところに?」

「わかりません、本来ドラゴンが住んでいるは、もっと山の奥なんですが……」

「まあ、こまかいことはいっか、もう一週間もワンドックに帰ってないし、ちゃっちゃと終わらせてしまおうか」


……


ワンドック出身の勇者は、街の話題の中でも中心を占めていて、リボンの勇者が街からそう離れてないところでドラゴンを退治するという話はあっという間に町中に広がっていた。


アンは、いまでも街によったら、僕のうちに顔をだしてくれるけど、今では彼女はこの町、いや、この国でのスターになってしまっていて、どこか遠い存在のように感じてしまう。彼女が駆け出しで、僕のうちに住み込んでいたあの頃がたまに懐かしい。

今の彼女には、ドラゴンなんて大して苦戦をする相手でもないだろう。きっと今回はワンドックに帰ってくるだろうから、彼女の好きなリンゴのタルトケーキでも買っておいてあげよう。そんなことを思い、迷宮へいった帰りに、行きつけの喫茶店に向かっていると、不吉なニュースが耳に飛び込んできた。


「ドラゴン退治の現場に、魔王軍四天王が現れて、リボンの勇者が殺されたらしい」


その話を耳にしたとき、僕にはいったい何のことか理解できなかった。彼女はとても強く、僕のあげたアイテムも相まって、彼女を倒せる人物なんて想像することができない。


「ちょっと、その話を聞かせて!!」


僕は、思わず、噂話をしていた若い男女を捕まえた。

あくまでも噂の範疇であったが、ドラゴンを退治した彼女の前に突然魔王四天王を名乗る人物が現れ、戦いになり、彼女が敗れてしまったらしい。いま、冒険者ギルドでは対策を練るためにギルドマスターを中心に会議が開かれているらしい。


僕は、冒険者ギルドへと走った。中は喧噪につつまれていたが、そんなことは気にしてられない。


「ステラさん!アンは?」


見知った受付嬢を見つけて、聞くと彼女は力なく首を横に振った。


「アンが、負けるわけないじゃないですか!」

「アルド君、落ち着いて。まだ彼女の生死は確認されてないわ。あきらめないで……」

「くっ……場所は?」

「二股大岩のふもとだけど、どうする……ちょっと、アルド君」


僕はたまらず駆け出した。建物の陰に入ると、カードホルダーからカードを引き詠唱する。


「飛行」


使ったカードは、

飛行(SR):詠唱後、2時間の間自由に空を飛行できる。

だった。


僕は限界まで、飛行のスピードを高めて、二股大岩のあたりへとたどり着いた。二股大岩のあたりでは、地面のクレーターなど、多くの戦いの後が見て取れる。


二股大岩から少し離れたところに、王国軍の陣地だろう、いくつかの天幕と兵士の姿が見える。僕は、注目を集めるのも意に介さず、天幕の目の前に降りると。


「とまれ、貴様だれた」


僕を止めようとする兵士たちを振り切って天幕の中へと入った。


天幕の中では、複数の僧侶が熱心に回復魔法を唱えているのが見えた。中央に寝かされているのがアンに違いない。


「アン!!!」


中央に寝かされている少女に声をかける。その姿はひどいものだった、体中包帯にまかれ、アンの血で真っ赤に染まっている、その顔にも包帯がまかれており。左脚は失われていた。


「アン!!」


僕がそばによると、彼女がうっすらと目を開けた。


「アルド、きてくれたんだ……私、負けちゃった」

「アンさまは、私たちを逃がそうと、一人で四天王と……」


アンの伸ばしてくる手を握りしめる。


「アン」

「アルドにもらった、ネックレス壊わしちゃった。二人の思い出なのに」


「アン!」

「最後に、アルドにあえて本当に……」

「アン!!生きててくれて本当によかった」

「アルド?」


弱弱しくも不思議そうなアンがこちらを見つめている。


僕は、一枚のカードを取り出すと、それを具現化する。

エリクサー(SSR):ありとあらゆる状態を完璧なものに回復させる


僕は光り輝く小瓶を手にすると、ふたを開けて中の液体を口に含む。ああ、前にもこんなことがあったな、なんて思いながら、アンにそっと口づけをして、中の液体を少しずつ飲ませていく。


効果は劇的だった、薬を飲み終わったアンの身体が光ったと思うと、次の瞬間には失われた左脚を含めて、すべてが元通りになっていた。


「「「おおっ、奇跡だ」」」


周りを囲む僧侶や兵士たちが完成を上げるが、僕たちには聞こえていなかった。アンも自分の体に起きた変化に気が付いて、狐につままれた顔をしながらその上半身を上に起こした。僕は彼女をしっかりと抱きしめて、彼女のぬくもりを確認する。

すると、ぎこちなくアンが僕の身体を抱きしめ返してくれた。


しばらく、そうしていただろうか……


「アルド、鎧が痛い」


そういえば、迷宮からかえってきてそのままやってきたんだった。僕がそっと彼女から離れると、鎧のパーツに包帯が引っ掛かっており、まるでセーターの毛糸がほどけるように彼女の上半身を包んでいた包帯がどんどんほどけていく。


「……」

「……」


思わず黙り込む二人……だんだんと彼女の顔が驚愕の表情に変わっていっているのがわかる。やばいこれは、何かを言わなければ……


「え、えーっと……アン、すこしおっぱい大きくなった?」

「……キャー」


そのあと、盛大な音が、天幕の中に響き渡ったらしい。


らしいというのは、僕がアンにぶたれて意識を失っていたからに他ならない。超人である、勇者の本気の一撃を貰って、命を保っていただけでも大したものだと思う。なお、僕の身代わりのネックレスもアンの一撃で壊れてしまっていた。これなかったら死んでたな……


一日大体200PVくらいしていただいているようです。

読んでくださってありがとうございます。


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