閑話1
すみません、例によって投稿が遅くなりました。
今日は、人生で一番ともいえるような出会いがあった。
初めて彼を見たのはレストランだった。
お父さんの夢をついで、大勇者となるためにワンドックの街までやってきてから3か月。頑張ってはきたけれど、
現実は厳しかった、私みたいな若い女とは、だれもパーティを組んでくれず一人でクエストをこなしていた。剣の腕には自信があったけれど、クエストの時間のほとんどは移動だ。
一人では、見張りも立てられずキャンプを行うこともできない。
達成可能なクエストは街から日帰りで帰ってこられるエリアに限られ、クエストを達成してもろくな収入を得ることができない。
父親から託されたお金もどんどん減っていき、まずは、定宿を格安の宿に変えた。一日一回のおやつもやめた。食事の回数を減らした。余分な荷物は全部下取りに出した。考えられる限りの節約は全部やってきた。しかしながら、
「はい、銅貨3枚ね」
「はい……」
今支払ったお金ですべての手持ちのお金を支払ってしまった。メンテナンスに出していた剣を受け取ると、両手で抱え込む。
「よし」
ぐずぐずしていてもしかたない、私は決意を新たにして、冒険者ギルドへと向かうことにした……
……
今日でもう二日何も食べれていない。ちょうど成人の儀のシーズンに差し掛かり、新しい天才を得た新成人たちが大量に冒険者になるため、街近郊の薬草や獲物はあらかた刈り取られてしまい、碌にクエストを達成できなかったのだ。
余りの空腹に耐えかねた私は、いい匂いに誘われ、自分の持ち合わせがないにも関わらず目の前にあったレストランに吸い寄せられてしまった。
結果として、食い逃げをするようなことになってしまったのだけど、気付いたらいくつもの皿を開けてしまっていた。
こうなっては仕方がない、店員さんの隙を見てお店を出るしかないだろう。
いまだっ、定員が全員厨房の方にさがった瞬間に、そっと席を立ち、入口へと向かう。
ドアをまさに抜けるか抜けないかというところで
「お客さん」
急に背後から声をかけられた。だれの気配も感じていなかったのに、思わず冷や汗が背中を伝う。
これでも幼いころから勇者の天才を持つ父に鍛えられてきたのだ、冒険者ランクとしてはまだEランクでしかないが、剣の腕はC級の冒険者にも負けることはないと思っている。
その私が全く気配に気づかなかったのだ。
こうなったら何としても押とおるしかない。
……
気が付くと私は地面に寝かされていた。
「……」
自分の名前が呼ばれた気がして、私は目を覚ました目をあけると、誰かかが目の前わずかのところで私の顔を覗き込んでいた。
思わず、私は飛びのいて距離をとってしまった。
知らない顔の少年が私の顔を覗き込んでいた。恰好から冒険者だろうか、珍しい黒髪に優しそうな顔をした男の子だった。聞くとこの少年が私の食事の会計を立て替えてくれたらしい。顔から火がでるくらい恥ずかしい。
私は、何とか彼から名前だけを聞き出すと、その場を後にした。
街まで、勇者になるために出てきたのに、恥ずかしくて仕方ない。
フランクリンの名前にかけて、必ず彼に恩を返す必要がある。私はそう決意すると、迷宮へと向かったのだった。
午前中にちょっと予定が入ってしまいました。
明日こそは、12時に投稿する予定です!




