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彼女は冒険者ギルドからほど遠くないところに宿をとっていた。
事故とはいえ、裸まで見てしまったのだ、なんだかよくわからない責任感を感じて結局最後までついてきてしまった。
彼女が宿の部屋のドアを開けて中に入ろうとするのを見て、
「じゃあ、気を付けて」
「ちょっ、ちょっと、そこでまってて!!」
まだ待っていることになった……
ずいぶん長い間、部屋の中で物音が続いていたかと思うと、しばらくの静寂の後、ドアが一気に開けられた。
「お待たせ!」
急いで用意をしたのだろう、ドアを開いた彼女の顔は少し赤く上気していた。
「その恰好……」
これまでの男のような恰好から、短めのスカートに膝までの身を包んだ彼女がそこには立っていた。
「これは……その、替えの服がなくて……」
「女の子なんだし、よく似合ってていいんじゃない?」
「そうかな……」
そういうと、彼女は両手を身体の前で両手を少しうつむいて黙ってしまった。
「「……」」
二人の間に妙な空気が流れる。その空気に耐えられなくなり。
「そ、それじゃあ」
その場を後にしようとしたが、彼女に手をつかまれる。
「あの、わ……おれとパーティを組んでくれないか!迷宮で見せたあの強さ、只者じゃないだろ、アドルと一緒だと、おれは、大勇者になれるような気がするんだ、頼む!」
彼女が僕を真剣なまなざしで見つめてくる。
僕は……
「ごめんなさい」
……
…………
二人の間に沈黙が訪れた、彼女を見るとどこか泣きそうな顔をしている。
いや、だって勇者のパーティなんかになったら有名になっちゃうし?といっても、彼女が大勇者になれるような感じはあまりしないのだけども……
「じゃ」
再び妙な空気から逃げるように手を振ると……彼女は再び僕の手を……
「じゃ、じゃあ、ぱ、パーティはいいから、あなたの家に連れてって!!」
「……えっ?」
……
結局僕は押し負けて、彼女を連れて自分の家へと向かっていた。
レストランで食い逃げをしていたような彼女に当然持ち合わせはなく、宿の宿泊費ももう数日ため込んでいるらしい。今日の迷宮でいくらか魔石を得ていたらしいが、スライムに飲まれて装備ごと吸収されてしまったようだ……
さすがに、知ってる人が、衛兵のお世話になるのを黙ってみているわけにもいかず、ある程度十分なお金がたまるまでという条件で彼女をうちに泊めてあげるということになった。
後ろをすごくいい笑顔をついてくるアンの顔をみていると、なんだかいいようにされてしまっているような気がしてやまない……そんなことを考えているともう家の目の前まで帰ってきていた。
なんとかなるだろう、そう思いなおすと、アンに声をかけた。
「ついたよ」
短くてすみません……
そろそろストックを稼がないと……
明日は、正午あたりに投稿する予定です。
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