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可能性を信じたい僕は自動筆記する

「きょうつけい、れぇいっ、おはようございまぁす、…着火!」


 ゴーダ親方はちょこん礼をすると、足元に不自然に伸びる導火線へと火をつけた。

 導火線はシューシューという音とともに、結構な量の煙を室内に吐き出し、僕が避難行動をとる暇もなく爆発した。あまりの展開に呆然自失していると、あたりに充満する煙がいやに早くおさまっていき、薄煙の中からゴーダ親方と見知らぬ浮浪者っぼいおじさんが二人、マジックを成功させたマジシャンとアシスタントみたいなボーズを決めて現れた。


「えー、それでは、新入り用の1時間でわかるセラニア入門教室を開催致します。それでは本日の講師のペンシルさんです、よろしくお願いします。ばちばちばちばち」

「どうもペンシルです。今日は私と同じ自動筆記のレガロを持つノキ君にこの世界のことをいろいろと教えたいと思うよ、ハハ」

 

 浮浪者っぽいおじさんは先生なのかよ、めっちゃいい声してるし、喋りは利発的な感じするのに格好が凄く勾体ないよ。というか、さっきからいろいろなことが僕のリアクションと感情を無視して進行している。この集まりはゴーダ親方には初心者講習と言われてきたのだがに、少し心配になった。ペンシルさんは僕に椅子に座るように合図して、黒板に何やらちずっぽいものを書き出した。


「さあノキ君、授業を始めるよお。我々がいるゴーマニア公国は現在、西にある兄弟国のドルマニア帝国、北にあるヤロイソップ共和国と小規模な戦争状態にあるよ。少し前に南にあったリント王国をゴーマニアが潰して吸収して、ちよっと態度がデカくなったから目を付けられちゃった感じでだよ、ここまではいいかな?」


 意外にも、講義はちゃんと始まっていた。しかもネズミでも分かるほどに丁寧でわかりやすい。僕はぶんぶんと首を縦に振った。


「国の総面積や人口は周辺国と比較すれば、今はゴーマニア公国が頭一つ抜けて大きいかな。ただ国土がかなり増えたせいで戦争をしたり、湧き出てくるモンスターの処理をするのにはかなり戦力が足りなくなったんだね。そんな時、この国の王女の一人がある特別なレガロを持っていることが分かったんだ。ノキ君ももう会ったと思うけど、カテドラル公女殿下と引き寄せのレガロだね」


 昨日は他国から侵略を受けてるみたいなこと言ってたけど、実は自分が調子に乗っちゃった埋め合わせに僕たちを呼んだのか、この国は結構腹黒いな。



「どういう理屈で対象者を絞っているのかは謎だけど、公女殿下は扱いやすそうな人間、戦いに向いてそうな異世界の人間をゴーマニアへとたくさん引き寄せた。それはなぜか、転移者は強力なレガロを持つことが多いことが科学的に実証されてたからだ。もう分かるかもだけど、ゴーマニア公国にとって我々転移者は超お手軽に作れて、いざとなったら捨てられる便利な兵隊ということなのさ」


 ペンシルさんの話し方は最初から変わっていないけど、最後の方はなぜか背筋がぞくっとした。


「ノキ君は地球だよね、トレーディングカードゲームなんてやったことある?  お金を払って、カードを引いて、強いカードを組み合わせてデッキを強くして、デュエルに勝つ、ゴーマニアのやってることはこれとほぼ同じ感覚だね。だが残念なことに、カードには当たりとハズレがあって、ハズレのゴミカードは見向きもされずにゴミ箱へと捨てられる。これがノキ君や私たちの現状というわけだよ」

「……あの、僕はどうしたらいいんですか?」

「ああ、その話はあとですることにしよう。今の話しは、とりあえず目の前の現実を見つめてほしくて話していることなんだ。この事実を普通はなかなか受け入れられない場合ばかりなんだけど、ノキ君はなんだか落ち着いてるね。気づいてた?」

「……なんとなくは」

「いいね、いいね。じゃあ次は、“レガロ”の説明をしよう。まず僕のレガロをみてもらおうかな、ハハ」


 そういうとペンシル先生は黒板に振り返り、右手に持ったチョークで驚く程の速さで文字を書き始めた。その文字はワープロで打ち込んだ字かと思うほど正確で美しいのだが、驚くのはそのスピードだった。10秒もたっていないのに、もうすでに巨大な黒板の8割が美しい文字でびっしりと埋っていた。


「おおおおおお! すげええええ」

「いやいやいや、本当にそれほどでもないことなんだけど、お世辞でもうれしいな。私の自動筆記はLV4、かなりの量をかなりの速さで筆記することが可能なんだけど、とりあえずノキ君もやってみようか」

「お願いしますっ」


 僕はペンシル先生から受け取ったざら紙を目の前に置き、姿勢を正してから鉛筆を握りしめた。


「…………先生、どうしたら発動するんでしようか?」

「頭の中に文字を思い浮かべてみてね、それだけで大丈夫だから」

「はい」


 目をつぶって暗闇に文字を思いうかべると、動かしてないのに右腕が勝手に動き出した。恐る恐る眼を開けると、僕の右腕は超高速で動いて“じゅげむ”をざら紙に書いていた。


「うわきもい、これ自分でやると、誰かに操られてるみたいで気持ちよくはないです」

「っはっはっは、確かに私も最初はそう思ったかも。まあ慣れたら気にもならなくなるよ。自動筆記の能力は、あれば便利だけど戦闘には使えない、じゃあ印刷屋でもやろうかと思えば本気の活版印刷機には遠く及ばない、ちょうどいい塩梅の能力なんだね」

「っく、わかっていたはずなのに、思った以上にしょっばい能力で、逆に楽しくなってきましたよ」

「っはっはっは、実に前向きでよろしい! そして、レガロにはLVがあることも知ってるね? ちなみに私のLVは4で、国民の平均LVが3だから、この国のナチュラルボーンな一般市民と比較して、ほんのちょっーとだけ使えそうという価値だね。あとちなみに、LVが上がる人もいれば、まったく上がらずに人生を終える人もいる。なぜだと思うかい?」

「LVアップ……、はつ、経験値ですか?! 経験値があるんですか?」

「無いよ? さてはノキ君はゲーム好きだね。レガロのLVはね、……モンスターを殺すか、レガロ持ちを殺すと上がるんだよ。研究者の間では、我々の中にある“魂の器”が殺生与奪の当事者間を行き交うと考えられているみたいだけどよくは解ってないね。そして、一般的にはLVがあがると威力や範囲が上がることも解っていて、例えばモノを凍らせるレガロの場合、LV1 の時は掌の中のモノを氷点下で凍らせるといった具合だけど、LVがあがると半径10mのモノを絶対零度で凍らせることが出来るのさ」

「それはすごいですね、僕も半径10mの紙に一瞬で般若心境を書き綴ることができますかね?」

「っはっはっはっは、ノキ君は面白いな。もしかしたらできるかもね。これで一般的な話は終わったが、何か聞いておきたいことはないかな?」

「大丈夫です、ペンシル先生、今日はありがとうございました」


 聴けば聞くほど僕の自動筆記というレガロが微妙なものであることがわかった。はあ、せっかく今日から頑張ろうと思ったのに、ほんとこれからどうしたらいいんだろうか。講義室の出口への足取りがいやにに重たかった。




 僕は昨日約束をした、今日の僕に、明日の僕達に。

「何が何でも這い上がろう、

 アナ・グレンジャーの傍に行くために。

 例えただの友達だってかまわないから、

 僕がアナさんの傍で力にならせてほしいから、

 弱い自分を変えていくんだ」

 窓の外の暗闇に向かって、そう約束したんだ。


 ただ思ったよりもその道が険しいことが分かったわけだけど、まずはそれでもよかったのかもしれない。とりあえず帰ってできそうな仕事でも探そうかな。


『少年よぉぉお、っ大志をぉ、抱けっ!』


 講義室を出ようとする僕の背中に、ペンシル先生の馬鹿でかくて熱のこもった怒声が響いた。慌てて後ろを振り返ると、最初と同じように席につくように合図を出している。あれ、僕なんか怒らせることしただろうか。


「ノキ少年よ、私はさっき、“一般的な話”は終わったと言ったんだ。なぜ出ていく」

「……え、どういうことすか?」

「さあノキ君、ここからの講義が私が今日ここに来た理由だ。私はね、ある秘密を知っているんだ、そしてそれはノキ君と大いに関係していると言える。心して聞き、決して他言してくれるな」

「……はい」

「レガロの中にはLVアップによって少し変わった成長を見せる種類があるんだ。君の自動筆記も、実はそれなんだよ」

「えーーーつと、すみません、ちょっと話がみえません先生」

「私の自動筆記のLVは4。ここゴミ箱には私の他に自動筆記LV3の人間がいるんだが、私にできて、彼らにできないことがあるんだ。彼らは“紙と鉛筆以外で自動筆記できない”んだ」

「はぁ、特段おかしなことは無いんじゃ?」

「先程は黒板だったからそう思うかもしれないね。私のレガロの性能を厳密に表すと“私は大体の場所に、大体のモノで文字を自動筆記することができる”なんだよ」


 ペンシル先生は何が言いたいんだ、んーーーーーー。


「…ん? まさか、剣はペンよりも強し。相手の心臓をキャンパスに鋼の剣で文字を書くことが……」

「あぁぁ、そうくるんだ? ごめん、ちょっと想定外だったもので、ノキ君結構えぐいこと考えるんだね。それはちょっと横に置いておいてもらって、君のレガロは図形を書くことが出来るか試してもらえないかな?」

「図形?? えーっと三角でいいですか? △、△、…えい、あ、出来たみたいです」

「ぇぇえ……。ちょっと今のシーン軽くない? 今私の中では感動のシーンだったのになあぁ。まあいいや、これで確定した! 君のレガロは“好きな場所に好きなモノで文字と図形を超高速で描くことができる能力”だ。おお、すごいじゃないか」

 

 ペンシル先生は小さくガッツポーズして鼻息荒くふんすふんすしていた。何をそんなに嬉しがっているんだろか? それよりさっきの僕の“やっぱり剣はペンよりも強し”案を試してみたいんだけどな。そう思って、僕が全力で帰りたそうな顔をしていると、ペンシル先生がはっとした顔で手をぽんと叩いた。


「あ、もしかして魔法陣の存在知らない? たぶんノキ君は、最強の魔法陣使いになれるよ、おめでとう!」


 えっ? なにそれどういうこと?


この度はこのような話をお読みくださり、本当にありがとうございます。

気晴らしに続けようと思います、またいつか続きを読んで貰えたら嬉しいです。


ここからはよくある修行編の予定です、まっすぐ無双してほしいと思います。

お気に入りや評価、感想なんてもの頂けたら凄く頑張って早めに書きますので、

良かったらよろしくお願いします!!

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