幻愛
失った後にこそ、
どれ程それが大事なものかやっとわかる。
それは、仕方のないことだと、
そう思わざる得ない。
一人の女性が、楽しそうに公園を歩いていた。
とびきり綺麗な笑顔で、町を歩く。
そして周りの人は皆、彼女に見とれるのだ。
一瞬だけ…見とれるのだ。
ほんの、一瞬だけ。
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「むむむ……どのクレープが美味しいかなぁ…」
なんて、クレープ屋の前で話して、買うものを決めたら半分ずつ食べて。
「あははっ!変な顔!!」
って、変顔をして写真を撮ったり。
実に充実したデートを過ごす。
笑いがあって、時には喧嘩もして、楽しい日々を過ごす。
幸せな時間だ。
愛する人と共にいれることが、どんなに嬉しいことか。
とびきりオシャレをしたり、勝負に出るようなメイクをしてみたり。
ただ一緒にいられるだけで、彼女は幸せを感じていた。
一緒に自撮りをしてみたり、のんびりと歩いてみたり。
様々なことをして、本当に、幸せに浸る。
周りからの白い目など関係ない。
だって、こんなにも幸せなのだから。
好きな人といちゃついて何が悪い、楽しんで何が悪い、と、彼女は周りからの目線を気にせずに振る舞う。
手を繋いで、歩幅を合わせて、くっつきながら、歩く。一部から見たら「ウラヤマシイ」というやつだろう、なんて一人でどやり顔をみせながら笑顔で歩き続ける。
彼が優しく微笑めば、耳まで赤くして恥じる。
そのあと、二人で大きな声で笑う。
どんな時間も常に話していて、それなのに話題も尽きることがない。
-幸せ、本当に幸せ。
あなたといれるだけで。
あなたがそこにいるだけで。
ただそれだけのことが本当に幸せなの。
-もう、手に入らない幸せを見ながら、
彼女は今日も一人で町を歩く。
愛する人をなくした女性が
愛する人の幻とデートをしているオハナシ。
これで、すべてが繋がったでしょうか?