表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
4/4

ラストメッセージ

 2014年7月31日、12時15分。

 

 お好み焼きのいい香りが雄介の鼻を刺激した。

 

 目の前で圭が、オムそばを焼いている。

 

 それは店の隅でマンガ本を読んでいる奇妙なアメリカ人の常連であるスティーブのものだった。


 その金髪の若者は、圭の話では、今まで一度もお好み焼きを頼んだことはない。いつも『焼きそば』ばかりだという。


 お好み焼きの店なのだから、一度ぐらい頼んでもいいと思うが、まったく変な外人だ。





「圭、実は今日は直人の話をしにきたんだが……」 

 

 圭は何故かためらう雄介の顔を見ながら、クスクスと笑った。

 白いエプロン姿がよく似合っている。


「まったく、いつものことじゃない。あなたは店に来るといつも直人の話ばかりじゃない。」


「そうだったかな……」


 雄介は照れた。




「実は、今日はこれを読んで欲しいんだけど」


 雄介は懐から不思議な光沢を放つ金属板を取り出した。


「これって………まさか、火星でみつかった例の金属板じゃ」


 圭の疑問に、雄介は静かに頷いた。



 雄介が調査に赴いた、火星の古代遺跡から謎の金属板が発掘された。


 文字は絵文字が主でエジプト、マヤ文字に酷似しているために、その線で解読調査が続いている。




「でも、こんなもの持って来てもいいの?」


「いいんだ」


 雄介は優しい視線で圭を見返している。


「……どうして?」  


 圭はモダン焼きをひっくり返した。


 最初の雄介の言葉が引っ掛かった。


「これは日本語で書かれているんだ。それにこの手紙、俺達宛なんだよ」





「ちょっと待って。それってどういうこと?」

 

 さすがの圭も驚いている。      


「読めば解るよ」


 雄介は意味深に云った。


 圭は雄介のモダン焼きを皿に乗せてから、エプロンで手をふいて、金属板に視線を落とした。


 それはちょうど手帳ぐらいの大きさで短い文章が書かれていた。





************************************************************

 

 雄介へ



 僕は今、火星にいる。


 どうやら、死にそこなったようだ。


 最後の時に、クリスの声が聴こえたような気がして、僕はライフポッドで脱出した。


 不時着した先が、火星だった。


 驚くべきことにこの星には人類がいて、高度な文明を誇っている。  


 星の位置から推定すれば、ここは過去の火星の可能性が高い。今の地球から見た星座の位置と微妙にズレているので、おそらく、間違いないだろう。




 だが、僕は孤独ではない。


 隣には、クリスがいる。


 嘘みたいな話だが事実だ。


 この手紙がお前に届くことを祈りながら、これを書いている。    


 圭ちゃんにもよろしく。



                           直人&クリス


***********************************************************




圭は涙を浮かべている。


雄介は優しく微笑んでいた。






1999.8.20→2006.7.7改稿→2008.5.25完成。




評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
このランキングタグは表示できません。
ランキングタグに使用できない文字列が含まれるため、非表示にしています。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ