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人里離れた家に

 老人「あ〜、よく来たね。道中、大丈夫だったか? この辺りは、少し人里と離れておるで、バケモノ共に襲われたりせんかと、心配しておったんじゃ。………でも、よー来おった」

 女「お父さん、心配し過ぎよ。ここまで車で来てるし、走っている車には、あの怪物達も危ない事を知っているかのように近付いてこないんだから」

 少し山間を入った所にある、小さな集落のような土地の一軒の家で、老人は、先程深紅の軽自動車から降りてきた。女に話し掛けていた。女の傍で、まだ小さい子供が何かをちぎって遊んでいた。

 老人「しかしなぁ、伴子。いつ何時、どうなるか分からんじゃないか。今やこんな世の中だし……」

 伴子「そうね。ありがとう。これからは、気を付けるわ。でも、あの怪物も、かなり数が減ってきているみたいよ」

 老人「ほぅ。またどうして」

 伴子「うちの周りだけかもしれないけど、近所の子供達が、あれって遊びの一環なのね。モンスター狩りだとか言って、ほとんど毎日飽きもせずに、どんどん殺していっているもの」

 老人は、娘が、少し悲しげな表情をしながら話すのを見て違和感を感じながらも、『ほぅ』『へぇ』と相槌をうちながら、話を聞いていた。

 老人「そうか。では、お前の家の辺りは、安全そうだな。良かった。良かった。……で……、なければ聖史さとしも安心して遊べないからの。のう、聖史」

 と、伴子の傍らでずっと何かを破いている男の子に老人は話し掛けた。

 伴子「ほら、聖史。挨拶しなさい。おじいちゃんだよ」

 伴子が、座り込んで男の子に声を掛けると、男の子は持っていた物をちぎるのを止め、伴子の顔をじっと見ると、伴子の耳元でボソッと何かを言った。そして、伴子の反応を見てから老人の方に振り返り、

 聖史「こんばんは。おじいちゃん。今日は、ごちそうさま」

 と言って、うっすらと不思議な笑みを浮かべると、また手にしていた、何か……なにやらブチブチと音をたててちぎられるモノを、またちぎり始めた。「今日は、お腹いっぱい食べられる」……老人は、聖史がボソッっと何かをちぎりながら言ったような気がした。

 孫の変な対応に、小首を傾げながらも、老人は、遠方より訪問した、娘・孫を家の中に通して行った。



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