絶望の底から.. 火が生まれる
第1章:絶望の底から.. 火が生まれる。
深い闇の中、森を叩きつける激しい雨の下で、少年は全力を尽くして走っていた。息は切れ、足は木の根や泥に絡まって もつれる。背後には巨大な怪物… 重い足音と、飢えた悪魔の吐息が迫っていた。正体は分からなかったが、立ち止まれば死ぬことだけは分かっていた。
突然、足元の地面が崩れた。「キリア」は崖の上から転落し、鋭い岩の間を転がり落ちた。何度も地面に叩きつけられ、痛みに叫びながら、たどり着いたのは苔と血の匂いが立ち込める暗く湿った洞窟の中だった。
「あああ…」
全身が傷だらけで、額、肩、そして脚から血が流れている。彼は必死に這いずり、冷たい洞窟の壁に背を預けた。息は絶え絶えで、目は半分閉じかかっている。
「なぜ…僕は…こんなに弱いんだ?」
その時、記憶が少し遡った。燃える村、笑い声を上げる悪魔の手でバラバラにされる母の姿。その悪魔は巨大で、歪んだ体は腰の部分が細く、先がナイフのように鋭い爪になった長い手足を持っていた。光を飲み込むような漆黒の肌、飢えで不気味に輝く紅い瞳。
鋭い牙が並ぶ広い口の端から、長い舌がゆっくりと動く。そのオーラは息苦しく、忌まわしく、重い憎悪に満ちていた。見るだけで心に冷たい虚無が植え付けられる。そして、悪魔の足元にいる妹を見た。下半身を砕かれ、震える手を兄に伸ばしながら、途切れ途切れの声で叫んでいた。
「キ…キリア…お願い…助けて…キリア…痛いよ…キリア…助けて…」
次の瞬間、悪魔の手が彼女の腕を掴み、無慈悲に引き裂いた。妹の最期の叫びが彼の心を切り裂いた。その時、悪魔は邪悪な笑みを浮かべて彼を振り返り、低い声で言った。「次はお前だ」。
キリアは背を向け、逃げ出した。臆病者のように、母と妹が死んでいくのを見捨てて、逃げたのだ。
今、洞窟の中で、彼の涙は壁を伝い落ちる血と混ざり合い、岩の割れ目へと流れていった。ふと、岩の隙間で弱く光るものに気づいた。白く輝く宝石…古のドラゴンの心臓。
痛みのあまり目を閉じると、周囲の世界が崩れ去り、別の次元へと引き込まれた。そこは終わりのない白銀の世界。優しく、そして希望と畏怖を同時に感じさせる女性の声が響いた。
「ついに…純粋な血が。待ちわびましたよ…救世主様。」
キリアは驚愕して目を開けた。「僕は…死んだのか?」
虚空から声が届く。「絶望を感じているのでしょう? 家族も仲間も悪魔に殺された。彼らを守れず、ただ恐怖に震えて見ていただけ。悪魔の視線に、生きる希望さえ失ってしまった。」
キリア:「な…何だこれは?…君は誰だ?…なぜ僕に起きたことを知っている?」
声:「そうね。あなたは今、剣の世界にいます。あなたの血が剣の核である『ドラゴンの心臓』に触れたことで反応し、この次元に入り込んだのです。おかげであなたの記憶も、苦しみも、痛みもすべて私に伝わりました。私は『ソラリア』。魂の剣の中に封印された存在です。」
キリア:「魂の剣? ドラゴンの核? 封印された存在?」
ソラリア:「質問は後です。追々分かってくることでしょう。それに、悪魔が近づいています。無駄話をしている時間はありません。」
(短い沈黙)
ソラリア:「教えて。あなたの家族の温もりを奪ったあの悪魔に、復讐したいですか?」
キリア(絶望に打ちひしがれて首を振り、震える声で):「復讐? 僕が? 僕はただ、あそこで金縛りになったように立っていただけだ。妹の悲鳴を聞きながら、逃げることしかできなかった。僕は臆病者なんだ、ソラリア。僕のような臆病者に、力なんて相応しくない。」
ソラリア(囁くように近づく):「臆病は永遠の烙印ではありません。それは、あまりの痛みに心が凍りついた一瞬に過ぎない。剣は強者だけを選ぶのではなく、生き残る『理由』を持つ者を選ぶのです。あなたの血がドラゴンの心臓と共鳴するのは、それが純粋だから。その純粋さは、今のあなたの痛みの深さにあります。彼女の死を無駄にするのですか? それとも、自分の無力さを火種にして燃え上がるのですか?」
ソラリア(静かだが重みのある声で):「受け入れる前に…代償を知る必要があります。」
キリア:「代償?」
ソラリア:「魂の剣は、ただで力を与えるわけではありません。使うたびに…あなたの肉体を蝕みます。」
(短い沈黙)
「激しい負荷が内側から血管を引き裂き、意識を失うこともある。もし限界を超えれば…あなたの魂はこの剣の世界に引きずり込まれるわ。」
キリア(鋭い口調で):「そうなったらどうなる?」
ソラリア(冷徹に):「二度と戻れない。あるいは、戻ったとしても遅すぎるか、戻るための肉体すら残っていないかもしれない。死は一撃で来るのではない。あなたの体と魂から、ゆっくりと滴り落ちる出血のようなものよ。」
キリア(拳を血が滲むほど握り締め、瞳の光が変わる):「もう二度と逃げない。たとえこの力で魂が焼き尽くされても…あの絶望を消し去りたい。あいつらを全員、殺してやる!」
ソラリアは言った。「あなたは稀少な血、選ばれし血を引いている。私を手に取るなら、比類なき力を与えましょう。復讐し、そして残された人々を救うための力を。」
語り終えると、すべてが漆黒の闇へと変わった。闇の中に、金色に輝く荘厳な二つの瞳が現れ、彼を真っ直ぐに見据えた。深く威厳のある声が胸に響く。
「剣を取れ…少年よ。お前の世界を救え。自分自身を救え。強くなれ…二度と逃げ出さぬほどに。」
その主が言葉を発するたびに威圧感が増し、キリアは魂が砕け散るような衝撃を受けた。
突然、視界が途切れた。洞窟に戻っていた。悪魔がすでに彼に到達し、片手で彼の首を吊り上げ、鋭い牙を見せて笑っている。
「小さな村人め…美味そうだ。」
その時、キリアの体が黄金の光に包まれた! 目を開くと、その瞳は純白に輝いていた。黄金と白のオーラが聖なる炎のように彼を取り巻く。ドラゴンの強大な力に圧され、悪魔は手を離し、キリアは地面に着地した。
「な…何だこれは!?」
キリアはゆっくりと立ち上がった。目の前で傷が完全に再生していく。彼は堂々と立ち、亀裂の入った壁に向かって手を伸ばした。岩が轟音を立てて砕け散り、砂埃が舞う。割れ目の中から、錆と土に覆われた古びた剣が現れた。しかし、キリアの指が触れた瞬間、奇跡が起きた。
錆は瞬時に消え去り、剣はその真の姿を現した。長く優美なカタナ。刃は運命を切り裂くほどに鋭く、純粋な金属の光沢を放ち、周囲には白いオーラが聖なる炎のように揺らめいている。柄の付け根には、生きている心臓の鼓動のように淡く光る白い大きな宝石が埋め込まれていた。鞘は雪のように白く、黄金の線が龍の紋様を描いている。
柄を握った瞬間、凄まじいエネルギーが血管を駆け巡るのを感じた。キリアは超速で踏み込み、瞬時に悪魔の目の前に現れた。
剣を真っ直ぐ胸へと振り抜く。だが、悪魔は腕でその一撃を防いだ。刃が衝突し、悪魔の腕に小さな切り傷がついたが、キリアは後方に弾き飛ばされ、かろうじて体勢を立て直した。
「はぁ…まだ足りないか…」彼は息を切らしながら呟いた。
突然、彼は前屈みになり、血を吐いた。地面に血が滴る。肉体がまだ剣の力に耐えきれていないことを悟り、激痛に目を見開いた。
ソラリア:「はぁ…力の流れを少し間違えましたね、少年。いいでしょう。次はもっと集中しなさい。」
キリアは深く呼吸し、再び立ち上がった。悪魔は自分につけられた傷と不気味なオーラに驚愕している。キリアは刀を鞘に納め、次の一撃に備えた。
ここから、真の戦いが始まる。




