第六章 scene3 光の宣言
王城の別館――
闇会議とは対照的に、灯火が大きく燃えていた。
王弟。
公爵。
侯爵。
軍の要人。
都市代表。
そして――マリアナ。
机の上に置かれた報告書が震える。
手ではない。
空気そのものが震えていた。
扉が勢いよく開く。
「――報告!」
護衛官が駆け込む。
息を切らせ、膝をつき、そして叫んだ。
「イリス・アーベルが……
王妃と側近の“信任”を得ました!」
静寂が走る。
頭の芯に雷が落ちたような感覚。
「さらに――
陛下の“精神回復支援顧問”就任が正式に布告される模様!」
紙が落ちた。
ペンが折れた。
誰かが息を呑んだ。
王弟の瞳が揺らぐ。
「……もう、そこまで――」
公爵が拳で机を叩いた。
「奴は“陛下の精神ごと”囲い込む気か!」
侯爵が低く呟く。
「王を檻に入れ、国を丸ごと奪うつもりだ……!」
会議室の空気が一気に焦げ付く。
だが。
その中で。
1人だけ――
燃えるように“前へ”踏み出した少女がいた。
マリアナ。
「……なら――」
声は震えていない。
「間に合ううちに、“光を掲げるしかない”!」
全員の視線が彼女に向いた。
マリアナは、歩みながら叫ぶ。
「イリスは“王を囲い込む支配”で国を奪う!」
「ならば、私たちは“国民ごと王を取り戻す”!」
王弟が目を見開く。
「マリアナ嬢……!」
マリアナは振り返る。
前世の記憶も。
無力だった過去も。
もう言い訳じゃない。
「――王国再建評議会を、今この瞬間に立ち上げる!」
机に地図が広がる。
旗が刺される。
「象徴は王弟殿下!
軍と現場の柱は公爵!
そして――初めて“国民の席”を置く!」
誰かが息を飲む。
「前例がない……!」
「王に相談する時間は――」
マリアナが叫ぶ。
「ないから、やるの!!」
稲妻のように走った言葉。
室内の空気が、恐怖から――炎に変わった。
王弟の拳が震える。
しかし、その震えは――恐怖ではなく覚悟。
「……分かった」
立ち上がる。
王家の血を引く者として、国に背を向ける兄の代わりに。
「私が、“王家の責任”を負おう!」
公爵も立ち上がる。
「この身が朽ちようとも――
この国の未来までは朽ちさせぬ!!」
侯爵が笑った。
「全く……とんでもない娘だ。
――いいだろう、命を賭けようじゃないか」
軍の将が剣を掲げる。
「王国史上初の、“国民参加の国政機関”だ!」
文官が叫ぶ。
「布告文を!
使者を!
鐘を鳴らせ!」
外――
夜の王都に、鐘が鳴り響く!!
「何が起きた!?」
「夜会か!?」
「いや……違う……これは――王城の鐘!?」
人々が顔を上げる。
——そして。
王弟が広間のバルコニーへ歩き出す。
公爵が隣に立ち。
侯爵が背を預ける。
マリアナは、拳を握る。
(――間に合え)
(闇に飲まれる前に)
(光を――この国に!)
王弟が叫ぶ。
「民よ!」
風が止まる。
月が照らす。
王城が燃えるように輝く。
そして――
王弟は宣言した。
「本日より、“王国再建評議会”を設立する!!」
「王族! 貴族! 軍!」
「そして――」
叫ぶ。
「――この国に生きる、すべての民のために!!」
王都が――揺れた。
息を呑む音。
叫び。
感情が爆ぜる。
同時刻。
遠く離れた場所で――
イリスは、布告書の報せを聞いた。
彼女は笑わなかった。
眉一つ動かさなかった。
ただ。
指先で、テーブルを一度だけ叩いた。
コツ――
闇と光が――
完全に、交差した。




