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第六章 プロローグ 邂逅

ふと、思い出す。


暖かいカフェの席。

ノートPCの前で悩んでいた、

“ただの大学生だったわたし”。


奨学金の返済。

友達の恋バナ。

バイト先のシフト。

将来どうするかなんて、ぼんやりしてて。


戦争もなければ、毒もなくて。命を賭けることなんて、物語の中だけで。


――だから。


たまに、考えてしまう。


どうして、今の私は“国の未来を決める席”に座ってるんだろう。



剣を抜く手の震えを見た。

泣くことすら忘れた領民を見た。

「効率」の名のもとに、心が壊される世界を見た。


優しい父が、壊れていく姿も。


弱い母が、“毒の檻”から夫を取り戻そうと必死になる姿も。


「救えるはずない」と笑って諦めた大人たちと、それでも諦められない人たちの、震える背中も。


 大学生の私は、ただ映画みたいに眺めていたはずの“世界の悲劇”の外側にいた。


なのに、今の私は。


 


「マリアナ、君の言葉で国が動く」

「君の判断が、人を救う」

「君は、この国の“希望”だ」


そう言われて。


息をするのが、少しだけ怖くなる。


 


――ねぇ。


もしあの頃の私が、今の私を見たらなんて言うんだろう。


「よくやってるね」って笑う?

「無理しないで」って泣く?

それとも――

ただ信じられなくて、黙り込む?


 


それでも。


それでも――私は止まらない。


止まったら、

この国の誰かがもう一度“泣けなくなる”から。


止まったら、

あの温かい手を離してしまうから。


止まったら――

私は“ただ見てるだけの大学生”のままだから。


 


だから今日も、前に出る。


震えてもいい。

迷ってもいい。

ただ、逃げない。


 


王国はまだ終わらない。


そして――

私の物語も、まだ終わらない。

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